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文学トリマー #毎週ショートショートnote

 文学サークル野音では、新入会員の作品合評会を開催した。はじめに「文学トリマー」と名乗った新人が自作朗読を行った。

『文学トリマーの文学トリミング! その1、森鴎外「舞姫」。留学したエリートが調子こいて現地のねえちゃんを孕ませた末に日本に逃げ帰る話って、やり逃げじゃん!
文学トリマーの文学トリミング!その2、芥川龍之介「羅生門」。死体の髪を抜く老婆と、その老婆の服を剥ぐ男の話って怖っ。自分も盗人の癖に屁理屈こいてんじゃん!』

「ふざけてんの?」部長のTが問いかけると、上級生からも批判が相次いだ。
「流行りのフリップ芸か」
「お笑いなら他所でやれよ」

 「文学トリマー」は淡々と答えた。「不要な部分を切って本質を突いてるだけっすよ」
そのセリフに部長は憤然とした。「それなら僕の書いたこのショートショート、トリミングしてみろよ!」
「…そんなの簡単すよ。5文字でOKです」
「文学トリマー」は、ニヤッと笑うとこう言った。
「410文字」

(410文字)
たらはかに様の企画に参加させていただきます。



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