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台にアニバーサリー #毎週ショートショートnote

 駅前商店街振興組合の理事長である俺は、地域を盛り上げる策に悩んでいた。
 そして考えついたアイディアが、昨年我が駅前で襲われ非業の死を遂げた政治家・伊武の知名度を利用する事だった。
 俺は、手近なビールケースに「伊武先生遭難の演説台」という銘板を取りつけ、駅前に設置し記念碑を立てた。しばらくすると、そこそこ見物人がやってくるようになった。
 見物人の中には演説台がニセ物だと怒り、騒ぐ者もいた。そういう連中を適当にあしらうのも俺の役目だ。
 その日も数人の男が、記念碑の前で騒いでいるという知らせがあり、俺は急いで現場に向かった。
「伊部先生を侮辱するな!」男の一人はそう叫んで俺に襲いかかってきた。胸ぐらを摘まれ、激しく殴打され、気が遠くなりながら俺はニセ物の演説台であるビールケースの上に立ち続けた。「今度こそ台に本物のアニバーサリーを刻めるぞ…」
 次の日、ビールケースには「商店街理事長受難の台」という銘板が加えられた。

(410文字)

たらはかに様の企画に参加させていただきます。今回も難しいお題。みなさんはどんなアニバーサリーを刻んでくれましたか?



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