神田伯山「畔倉重四郎」を全部YouTubeで見た / 20200601

初めてちゃんと講談というものを聴いた。いまや大流行、ご存知の方は当然ご存知の、本日発表の第57回ギャラクシー賞で「フロンティア賞」も受賞した「神田伯山ティービィー」である。

※本noteは「講談分かんないなりに聞き始めた」という内容なので、講談を知らなくてもそれなりに読めると思います、多分。

記事タイトルは神田伯山って書いたけど、ギリ神田松之丞時代の映像。
題目は「畔倉重四郎」の通し読み。「連続物」と言われる複数の演目からなる大長編で、全19席。1つ20~30分ぐらいあるから、全部でそれなりに長い時間かかった!少しずつみていたから1週間ぐらい。


神田伯山(松之丞)を知ったきっかけ

元々「神田松之丞」の名前ですでに異様な人気を博しているのは知っていて、認識したのは3~4年ぐらい前だっただろうか。伊集院光や爆笑問題のラジオにゲスト出演した回とかはめちゃくちゃ面白く聴いていて、自分と趣味が合う(と思っている)Twitterでフォローしている方々もどうやら愛好されていて、「あー、これはいつかはちゃんと聞かなきゃな」とぼんやりと思っているうちに、2018年末に真打昇進・神田伯山襲名ということになっていた。

ほんとはTBSラジオも聴けばよかったんだけど、なんとんなく「講談ちゃんと聴いてから、ラジオも聴こう」と謎の遠慮を見せていた。

マジで聞かなきゃなと思ったきっかけ

2020年初頭から突然降って訪れた「立川談志」ブーム。本当に思い立って「立川談志を聴きたい」と思うようになり、手元にあった少しの音源では飽き足らず、エグい量の音源と映像を図書館という図書館、TSUTAYAというTSUTAYAから借りまくって膨れ上がったマイライブラリ(今検索したら全部で「14日以上」って出た。ノンストップで聴いても半月掛かる。)の音源を耳に流し込むようにして聴いたことがはじまり。

そんな中で、ジャルジャルのYouTubeのオススメ欄で目にしたのが、爆笑問題・太田光と神田松之丞の番組「太田松之丞」(現在は「太田伯山」に改題)。ここでどうやら、再三立川談志の話をしていることを認識。何本か見てみるうちに、神田松之丞はかなりの談志ファンで、強く影響を受けていることが分かった。調べてみると、談志の得意だった講談を取り入れた落語「鮫講釈」なんかは自らの手で講談に移植したりしているとかなんとか。
(以下、特に刺さった動画を貼っておきます)

そうこうしている間に、2020年2月には真打昇進、伯山襲名となり、「襲名披露公演」の映像がYouTubeに上がっていることに気づく。爆笑問題が出てるやつとか、笑点の落語家が出てるやつ(雑だな)とかを恐る恐る見てみようとしましたが、「いや、ちゃんと講談をしっかり見てから見よう」と思い、あんまりまだちゃんと見ていない。そういう感じで、「神田伯山ティービー」の存在を知ったのだった。

実際に講談を見る前の心構え

講談を聴いてみようかなと思ってから実際に手を伸ばすまでに時間が掛かった理由は主に二つ。

①立川談志の音源や映像の摂取に忙殺されていた。だって14日以上分ある。
②立川談志がやる「講談ネタ」があんまり分からない…

特にこの②は不安でした。「慶安太平記」とか「白井権八」とか「青龍刀権次」とか「源平盛衰記」とか、談志の得意とする講談系のネタも、何を言っていて、どういう話なのか、マジでわからなかった(いまはちょっとわかってきたみたい、大人じゃないよな子供じゃないよな)。「鮫講釈」のクライマックス、講釈師が色々な講談をいいとこどりで乱発するチャンチャカチャンな見せ場も、「お、おおぅ…な、なんかすごいけど、わからん」という感じ。

私は基本的に、落語の演目聴くときも、「話のあらすじ」と「面白いところ」を初聴きで理解することは無理と諦めて、初めての演目のときはネットであらすじを調べてから聴くのですが、それやってもわからなかった。敗因は多分、「落語と勝手が違った」ことと「私が日本史にとても弱いから」だと思うww

それでも、なんとなくそういうのも何度も聴くうちに理解できるようになったぐらいのタイミングで、たまたまディスクユニオンでこのDVDが安かったので、買ってしまった。運命の出会いですね。

2015年に出たDVDで、当時29歳だか30歳だか。神田松之丞初のDVDという触れ込み。

内容は、講談3つと、合間に本人のインタビュー映像等。どうやら「講談と落語の違い」とかも語っているらしい。これで人となりや、講談についてやらわかるのではないかと思い視聴。演目は「違袖の音吉」「天保水滸伝『鹿島の棒祭り』」「グレーゾーン」。初めの二つは古典(って言うのか?)で、最後のが新作(オリジナル作)。

インタビューも面白く、「落語と講談の違い」についての部分などは、自分が思っていたより両者は隔たってはいないということも分かった。ざっくりいうと、「へえ、講談も落語みたいな人物同士の語りも分量結構あるんだ」みたいな。もっと地の部分(っていうの?)の「訥々と物語を語る」みたいな部分が大半だと思い込んでいた部分もある。

さあ、早速、いざ「講談」の世界へ…「違袖の音吉」を…。

「わ、わかんねえ!」

分かりませんでしたー。読みに入る前のフリートークのマクラ(?)の部分はめちゃくちゃ面白かったけど、本題わかんなかった…。会話ごとにやり取りとかのパーツはそれなりにわかるんだけど、全体で何が起きているのか、完全に置いて行かれたーーーー。

…とはいえ絶望するにはまだ早い。初めてでわからないのは当たり前、というのは落語を聞き始めて分かっている。まだ慌てるタイミングではない…2つめの演目…「天保水滸伝『鹿島の棒祭り』」…

「わ、わかんねえ!」

これはマズイ。定価に比べたら安かったとはいえ、これで講談にハマらなかったらDVD分のお金だけじゃなくて、実はTSUTAYAで「いつか神田松之丞にハマった時のために」と借りていたCD3枚分のお金も空振りに…。

そう思った3本目「グレーゾーン」は前2本とは変わって、現代を舞台にした新作の演目。プロレスやお笑いに対する熱い情熱を持つ若者が…という話。

「お、おもろしろい!!!」

いや、面白かったこと以上に、分かったことが嬉しかったのかもしれない。前2本聴いていたおかげで、講談の構造自体に対しても、大分耳も頭も慣れてきたタイミングだったことも功を奏したのかもしれない。とにかく自分としては「講談の面白さの一片に触れたぞ」という気持ちになって嬉しかった。

講談についてもっと知りたいぞ

とはいえまだ、伝統的な演目についてはうまくつかめていない。これはどうしたものか、と考えるよりも動くがやすしきよし。

この本に手を出しました。

2018年に出版された単行本。もうピッタリでしょ?今から「神田松之丞」の「講談」でもって「入門」したいわけですから。早速検索して中古本を入手したところ、サイン本でラッキー。

しかしサイン本って実際に「サインしてもらった時の記憶」とセットな部分ありません?その時の「うわあ、自分のためだけに!この人の人生の素晴らしい創作に充てられたかもしれない貴重な時間を、私めに、私めのために使っていただいている。ああ、僭越ながら時間を共有させていただいてる」みたいな。突然サインだけ入っててもいまいちピンとこないですよね。

話を戻しますと、この本、神田松之丞が「講談」の基本や歴史をインタビューや対談などを通じて語るコーナーと、「神田松之丞 全持ちネタ解説」がありまして、この解説を目当てに買ったわけです。当面神田松之丞/神田伯山の講談をメインに聴いていく所存(実際落語でも立川談志以外の落語はちょっとしか聴いてない)なので、まずはここを攻めるべきであろうという冴えた戦略。

早速読み始める。初めの「松之丞に聞く、講談の基本」。
講談の初歩の初歩、何をするのか、どういうスタイルなのか、どこを楽しめばいいのかなどを分かりやすく教えてくれる。読んでいるうちに勇気が湧いてくる。これなら、これなら僕にもわかるかもしれない!
気分はそう、進研●ミを始めたい小学生だ。あとは「ママ、僕進研ゼミやりたい!絶対に毎日やるから!お願い!」と頼みにいくだけである。

そうして次の章「松之丞 全持ちネタ解説」である。複数の話から構成される連続物(一話だけ抜き出して読んだり、全部連続で読んだり)、単独の一席物(その中でもジャンル別:軍談、怪談、任侠物、放浪物、新作など)について、簡単なあらすじと解説(成り立ちや楽しむ勘所)が載っている。これを読めばいざ講談を聴くときに「あっ、これ進●ゼミでやったところだ!」となるはず!これで勝つる!!!

が、しかし●研ゼミ同様、そんなに甘くない。なんせ一席20分~30分もある話を100~200文字程度(適当)に纏めた上に、途中のクスグリ(っていうのか?いわゆる笑わせどころ)とかクライマックスの盛り上がりも文字では伝わらなく淡々と書いてあるだけなので、全然頭に入ってこない。しかもその何十分×何席もある色々な話のあらすじと解説だけを一度に頭に叩き込まれても、もう思考回路はショート寸前、今すぐ会いたいよ状態。わ、分からない!!!やばい!!!また置いて行かれる!!!!

そんなときに、ハロプロの動画か何かを見ていた時にYouTubeのオススメ欄に出てきたのがこれ。

講談師神田松之丞 新春連続読み『畔倉重四郎』完全通し公演 2020

「あっ!!!これさっき『全持ちネタ解説』で読んだ奴だ!!!!」

完全に進研ゼ●状態である。

そして、更にそこで気づいてしまった。

「あっ、これ全19席だけど、1席ずつこの『あらすじと解説』を読みながら見れば、めっちゃ理解しながら見れるんじゃね???」

はい、出ました。これがメンタリズムです。違います。人生に無駄なことなんて何一つないんだと、これでわかりましたね。

さあ、この午前3時の初回生産限定盤SP、これから「畦倉重四郎」全19席を見ていくことになるのですが…
その話は、一度下がって再び申し上げたいと思います。

多分。

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