見出し画像

和田彩花「ホットラテ」を聴いて / 20200608

ホットラテ Hot Latte


和田彩花さんの新曲「ホットラテ」をふときいてゴリゴリにハマった。

聴いてすぐツイートしたのがこれ。日曜の夜はTLに人も居ないはずなのに、わりと反応が来てびっくりした。さてはみんな好きだな。

1回聴いてもうめっちゃハマった。

まずトラックがオシャレ。Ryuichi Kawasakiさん、、、アプガに曲書かれてる方なのですね。不勉強でしたが覚えました。
語彙が出てこないんだけど、エレクトロでチルな感じ(雑!)がめっちゃツボ。浮遊系のシンセは今っぽい(雑!)し、ベースの感じとかはレトロ(っぽい今の音)で面白い。東京女子流「predawn」とか好きなのでこういうの大好物です。

ハロで言うとモーニング娘。'17「若いんだし!」系。

そして歌詞が良い。歌いだしから

「人と比べることではない」
秘めた深い愛
当たり前に言い放った
あなたを疑う

これ構造としてはアンジュルム「46億年LOVE」の出だし

「一生守る」とすぐに誓うけど
あなたの一生って何度目?

と近いですよね。
身近な人が、不意に考えもせずに、良かれと言い放った一言でその人(の考え)に疑いを持ってしまうという。

心地よく流れるの
近いようで近くない島
そんな未来が見えても
これが対立軸の間の世界

「対立軸の間の世界」です。この歌の中で一番好きなフレーズかも。ツイートでは小沢健二「フクロウの声が聞こえるを引用して、対立する概念が「一緒にある世界へ」なんて書きましたけど、この「二項対立からの脱却」と共鳴する部分があるんじゃないかと思ったりしました。
今は何でも「ハッキリさせないとだめ」で、曖昧な立場はお金にならなかったりするし、「どっち側」に付くかが大事なことのように言われたりすることもありますよね。でも「対立軸の間」の間の世界が現実(=悲観するべき悲しい「現実(↔理想・夢)」ではなく、数多の過去を経ていまここにある奇跡としての「現実」)という事実は見失ってはいけないのだな、なんて思いました。

あと!!!このパートの前半部分も凄くて。時間のことを「流れる」なんてよくいいますけど、自分を「海の上をたゆたう」存在として描き、未来のことを「近いようで近くない島」って書くの、すごい。
たどり着く未来は時に自分の意志で(操船で)変えられることもあれば、自分ではどうにもならない(風や天候、潮など)ことで決まってしまうこともある、ということをたった2行で示してしまえる和田彩花さん。作詞家というより文学やでこれは。

アンジュルムの最新ツアー(全公演中止…)のビジュアルが帆船であることともシンクロするようなしないような。これは「どうにもならなかった未来」ですね…ううう。

「人と比べることではない」
秘めた深い愛
女らしさの有無を問われ
わたしを疑う

1行目と「秘めた深い愛」の意味が違って聴こえたのが面白かった。それは「女らしさ」という単語が出てきたからかもしれない。1行目の「秘めた愛」はどちらかというと「片思い」に近く、2回目のこれは「性愛(しかも異性愛・同性愛の両方を想起させる)」のニュアンスも感じられる。

この心臓と鳥の羽、どっちが軽いかしら?だなんて

これはガリレオの「空気の抵抗が無ければ鉄球と羽は同時に落下する」という思考実験が元ネタでしょうか。
ガリレオの場合は「空気が落下速度を左右する因子」ということが肝でしたが、自分の心臓(=気持ち)を左右する因子は何でしょうか?みたいな?深読みしすぎ?

要らないかもの概念、私の立場、
示してみたときに
みな気配一致の正体は私
「口にするんじゃなかった」の後悔
すっと涙が、
貫いた愛を後悔しなくていいはずよ

「口にするんじゃなかった」の後悔。苦いですよね。苦い。コーヒーのよう。よく考えると「人に意志を伝えるために音を発する器官」と、「物を食べるときに味を感じる器官」が同じような場所(お口です)にあるのってなんか変な感じしますね。しないですか?
自分が良かれと思ってハッキリさせたがゆえに、分離してしまった白と茶色。でも「後悔しなくていいはず」と自信があるのは良い。自分だったら2か月ぐらいうじうじすると思う。

「人と比べることない」そう当たり前に
口にするあなた
母となり家庭もちたいと語る
その未来ゆらゆら
あなたの幸せすてきよ、私のそれは
ちょっと違っても
そっと前を向いて
貫く愛は今日もここに

「母となり家庭もちたいと語る」あなたに対して、「あなたの幸せすてきよ、私のそれはちょっと違っても」は結構びっくりするフレーズかもしれませんね。
「女は結婚し、子を産み、育てよ」の偏見(=「当たり前」)に抗っているという見方もできますし、先の解釈を引きずって同性愛的解釈もできるんじゃないかと思ったりします。「貫く愛」がまた出てきましたね。「貫く愛」。

母となり~の部分では、椎名林檎「意識」という曲の中の

幾つに成れば淋しさや恐怖は消へ得る
子供を持てばやがて苦痛も失せるのか

という歌詞と見比べると、似ているようなことを言っているが、その方向は真逆で面白い、なんて思ったりしました。

そしてこの曲のタイトル「ホットラテ Hot Latte」。いわゆる「カフェラテ」。コーヒーとミルク。コーヒーミルククレイジー。ツイートでも言った通り、様々な(感情や行動などの)「甘い白いミルク」と「苦い茶色(黒?)のコーヒー」が自分の中だったり、自分と他者の間で混ざり合うさまを描いている曲。このコンセプトも素晴らしいし、映像のビジュアルも耽美的。

なんてことを考えているうちに想起したのは椎名林檎がともさかりえに提供した「カプチーノ」。これも茶色と白、甘さと苦さの混ざった「曖昧さ」を、好きな人への憧れや渇望歌詞にしていて。和田さんの曲よりもジュブナイルですね。聴き比べると面白いかも。

これは椎名林檎セルフカバーバージョン(short)。ともさかりえ版は椎名林檎が頑張ってピチカートファイヴやってみました!みたいでかわいい。

さらに脇道にそれるけど、この曲2番のサビで「梅の散る午後」という歌詞が出てくるんだけど。それまでは「茶色↔白」、「苦い↔甘い」の対比を描いてきたのに、急に「赤(緑?)で酸っぱい」という色と味覚に第3の勢力をぶっこんできて、急にこっちを混乱させてやっぱすげえなと思った。

何も考えずに「ホットラテ」聴いてたらこんなに書いてたwwすごい曲だ。
ほんとに好きなので。是非Bandcampで配信してください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?