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「今宵雪を待つ」

この大海原で
溺れかけている
手を思い切り伸ばして
救いの船を掬う
色とりどりのボール
水面を流れる流れる
波紋は端まで広がり
辺り一面を漂うばかり

船首から見える光景は冬
舞い散る白粒を指でつまむ
頼りなく崩れるカタチ
触れただけで消えるツブテ
粉々に砕けたあとは
空を飛ぶことさえ
難しくなってしまった

はるか斜めから差し込む
光の筋を数えあげるうち
誰かの年齢を偶然言い当てた
それが幸せなのか不幸なのか
わかるはずもない苛立ち
明日が近いから焦り怯え
昨日が尊いから立ち尽くす
美しい晴れ空は
いつまでも続きはしないのだと
鼠色の空が鼻をならしながらつぶやいた

春を愛する人は夏を愛し、秋を愛し、冬を愛す
四季を愛する人、その人は
その変わり目の名もなき季節の中にすら永遠を見る
目の前の一束の空気がいつかこの季節の代名詞となって
誰かの手のひらの上にそっと舞い降りるだろう

今宵雪を待つ

しんしん
しんしん

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