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【室伏謙一】「金融緩和悪玉論」を信じると自分達の首を絞めることになります

 いつも購入している輸入品の価格が上がった、これは円安のせいだ。この手の話はよく聞いたことがあるのではないでしょうか。そして、為替レートが円安になっている原因は金融緩和であり、輸入品価格上昇という問題の解決のためには金融緩和をやめればいい、日銀が金利を上げればいい。これも連日、大手メディアのみならず、主要なネットメディアでもまるで模範解答かのように流されてきていますね。

 しかし、結論から言えば、これらは間違いです。

 では、なぜ輸入品の価格が上がっているのでしょうか?それは、まず、その品物を輸出する国で、日本以上の物価の上昇が起きているからです。なぜ物価の上昇が起きているのかと言えば、新型コロナ明けの需要の増大、いわゆるリベンジ消費とかリベンジ需要と呼ばれるものですが、これに始まった物価の上昇が、最近はひと頃よりは落ち着いてきていますが、これが続いていることがあります。要するに元々の値段が上がったということです。需要が増えているから当然と言えば当然なのですが、需要の増大は人件費等の経費の増大もまねきますから、そうしたものも値段、価格の上昇に寄与することになります。

 もう一つ忘れてならないのが、ウクライナ紛争によるエネルギー価格の高騰。これはあらゆる部門に影響しますから、当然その品物の製造コストも上昇し、それが完成品価格に転嫁されることになります。

 農業はこうした影響をモロに受けているのに対して、無用の悪影響を及ぼすような政策をEUが進めようとしているため、欧州の農民たちはこれに怒り、抗議活動をしているのです。(詳細はオンラインサロン「月刊霞が関リークス」にて。)

 また、一般市民たちも生活費の高騰、 ‘Cost of living crisis’と呼ばれていますが、それに苦しまざるをえないことになっているのです。

 さて、その品物、今度は海を渡って日本にやってきます。どうやってやって来るのかと言えば、船なり飛行機なりで運んできます。船も飛行機も燃料がなければ動きませんが、その燃料価格も上昇しましたから、ものを運ぶ物流のコストも上昇、それも日本での販売か買うに転嫁されます。そして日本に来たら関税、日本の輸入会社の手数料、国内輸送費、保管費、小売店の販売手数料・・・そして為替レートによる変動分、こうしたものが乗っけられたのが最終的な小売価格です。

 要するに為替レートは全く関係がないとは言いませんが、その一部に過ぎず、為替レートだけで輸入品の価格が上昇しているわけではないということです。だから為替レートのせいで物価が上がったというのが間違いだというわけです。

 ではなぜこんな間違いが流布されているかというと、金融緩和を悪者にするために、一般国民に浸透しやすい作り話としてそうされているのではないでしょうか。

 そしてそれが見事に「成功」しつつあるようです。日銀がマイナス金利の解除を決めた、との報道が先週ありました。以前のメルマガでも日銀官僚たちが決まってもいない金利引上げを金融事業者にふれ回っているとお伝えしましたが、国民には間違いを、金融事業者には決まってもいないことを、それぞれ流して、空気作り、雰囲気作りをしてきて、「マイナス金利解除は当然だ!」とあまり反発が出ずにシラーっとことが進むように着々と準備をしてきて、最後に観測気球を上げて反応を確かめたか、「もう決めたからね。反発しても意味ないからね。」と金融緩和推進派を厭戦ムードに追い込もうとしてのことか、いずれかでしょう。

 してやられた、などと思ってはいけません。これは地獄への入口にすぎず、これから先に、脱却してもいないデフレから脱却したことにする「デフレ脱却宣言」なる奇妙奇天烈なことをやり、金融緩和をやめて利上げを行い、そして6月の骨太の方針でPB黒字化目標を強化、そのためと称して緊縮・そして増税へと、地獄への道を着々と進むシナリオがもう財務省・日銀にはできています。

 今、声を大にして挙げていかないと、確実に後悔することになりますし、取り返しがつかないことになりますよ。

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