ほんのりと爪に魔法をかけたくなるのだ

　ほんのりと水色の爪がきれい。私が最初にマニキュアを見たのは小学生の頃、三年生になって初めて同じクラスになった子と身体測定のために廊下に並んでいた時だった。小学生がマニキュアなんて、今となってはもしかしてまぼろしだったのではないかと思ってしまうし、のちに仲良くなったその子にマニキュアのことを確認しても、そんなのしてたっけ？と言っていた。でも、初めてマニキュアを意識したのは、その時だったと私は勝手に記憶している。
　私自身は真面目な子どもだったので、マニキュアを初めてしたのは大学生になってからだ。きっかけはとても情けない。爪を噛む癖をやめたかったのだ。私の場合は爪を噛み、噛み切ったかけらを床に落とすというなんとも嫌なもので、さすがに恥ずかしかった。マニキュアをすれば噛まなくなるのでは？という考えは命中して、すっかり癖が直ってしまった。癖が直ればマニキュアは面倒だからとしなくなってしまった。
　どれぐらいやめていただろう。かなり長い間だ。なぜか爪磨きにはまって、爪に貼るシールを買ってみたりしたときに、もう一度ハマったが、妊娠と出産、子育てでそれどころではなくなり、またマニキュアから離れた。三度目のブームは自身が思いついた小説のネタがきっかけだった。指のきれいな女の子とマニキュアのことを描こうと調べているうちに、やってみたくなってハマったものの、仕事がマニキュアＮＧなので、やはり長く続かなかった。
　そして今回、四度目のブームがやってきた。
　あるとき、突然インスタに流れてきた投稿。胡粉ネイルの限定商品についてだった。胡粉ネイルは三度目のブームの時に購入して使っていた。気に入ってもいた。そのときから色が格段に増えている。限定色というのが季節ごとに発売されていることを知った。公式サイトで限定色を中心に探していくと、理想の色が見つかった。ほんのりうすい水色。それにちょっとラメ。海のさざ波のようなきらめき。サイトでしか購入できない限定色。なくならないうちに買うしかない。
　昨年の十二月に購入して、使いはじめたのは今年になってからだ。新年初ネイルは胡粉ネイルの瑠璃色だった。夏の限定色として販売されていたけど、季節感はそんなに感じない。それほどほんのり色づいている。
　週末、マニキュアを塗って、楽しむ。週明けの朝には落とさないといけないけど、それでも、ちょっとだけ、自分の指先が好きになれる魔法をかけたくなるのだ。