マザコン風のおじさん
わたしすごく道を尋ねられるんですよね。
教えた道はだいたい間違っています。
車だと大丈夫なのになぜか徒歩だと恐ろしく方向音痴なので嘘を言うつもりなく嘘を言ってしまっていて、その後あさっての方向で尋ねてきた人と再会して謝ったことがあります。
「わたしに道を尋ねないでください」と今日の主役みたいに掛けておきたいです。
中2の学校帰り、ひとりで裏道を歩いていたら上下ジャージのおじさんに声をかけられた。
そんなにおじさんではなかったので当時30歳くらいだったんじゃないかと思う。
とてもおとなしい口調で痩せてて自信なさげなスキンヘッドの人だった。
『この辺でナガイさんのお宅知ってますか?』と聞かれ、
その場から我が家まで徒歩5分でその手前にナガイさん宅があったので知ってると答えた。
案内して欲しいと言うので歩き始めたら、神妙な面持ちで
『ぼくは精神的な病気で不安になるので手を繋いでもらえませんか?手を繋いでもらうと安心するんです。いつもはお母さんに手を繋いでもらってるんだけど今日はお母さんがいなくて』
と言いながら勝手に右手を繋がれた。
その人の左手が上(前)で、わたしの右手が下という一般的な男女の繋ぎ方。
あぁ、来たな。。。
でもわたしは優しいので本当にそうかもしれないと思ってしまった。
小3で亡くなってしまったけど同級生にそんな男の子がいてよくお家にお邪魔させてもらっていたせいかもしれない。
普通ではない雰囲気だった。
そりゃそうだ、この人は変質者だもの。
人がほとんど通らない裏道なので真昼間でも危険だなと思い、刺激しないようそのまま歩いた。
刺されたら嫌じゃないですか。
(同級生は思うようにならないとひどく暴れていたから)
偶然触れてしまったのでぼくは気付いてないよ、みたいな感じでわたしの手の甲を自分の股間にサラッとこすった。
わたしは無視をした。
もう一度こすった。
あぁ、ほんまもん来たな。。。
『大人になって手を繋いでるの人に見られたら恥ずかしいから、お母さんはぼくのポケットの中で手を繋いでくれるんです』
と言いながらわたしの手を自分のジャージのポケットに入れようとしたけど、さすがに嫌がったらあっさり引き下がった。
手は繋がれたままだけど。
あと1分というところで『もうそこです』と言って指差しながら手を離そうとすると、
『危ない!!』っと叫んでわたしの手を股間にグイっと押し付けた。
突然の大声に驚いて手を離し損ねてしまった。
蜂が飛んでたと言われた。
なんだそれ。
と思っていると後ろから自転車の知らないおばさんが追い越して行ったので『あ!お母さん!』と言ったらおじさんは走って消えてしまった。
ちょうどそこがナガイさんちに繋がる小道だったので、
意図せず任務を遂行してしまった。
意外と5分は長かった。
ポケットの中でまさぐってほしかっただろうねぇ。
心の底から布越しにまさぐってほしかったんだろうねぇ。
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