【読書録】優れたUXは優れていることを気づかせない

UI/UXとの出会い

数年前、ゲーム会社で働いていた。初めてのゲーム会社だった。

任された仕事は、開発中のゲームのUI改修。

担当のプランナーさんが指摘した点に関して、資料をまとめたり、プログラマーさんやデザイナーさんと交渉したりして、指摘を実現していく。

チームに配属されて初めて触った開発中のゲームは、ぼくにとっては既に(UIとしては)完成されていたように感じた。

でも、挙げられた指摘は、些細なものまで含むと最終的に全部で200件を超えていたように思う。

そもそも「UI」というものをその時初めて知ったぼくは、既に完成されたと思っていたUIにそれほどの指摘が挙げられると衝撃を受けた。

着眼点がわからなかった。

良いUIとは? 悪いUIとは?
担当のプランナーさんに尋ねた。

その時の答えが、この記事のタイトルの言葉だった。

UXとは?

結論からいってしまうと、UXは、User Experienceの略。
ユーザが(そのサービス、アプリを通して)経験するものという意味。

UIは User Interface の略。プログラムとユーザの接点。
ユーザが見る、触れるものすべて。
ボタンや画面、メッセージなどがこれにあたる。

UXとUIは字面で似ているからか混同されがちだけれど、本来は別物。
また、優れたUIはUX的に優れているわけでもない。

おそらくこれを読んでいる人は少なからずTwitterを使ったことがあると思う。
Twitterのスマホアプリでは、タイムラインを下に引っ張るとタイムラインが更新される。

「タイムラインを下に引っ張るとタイムラインが更新されるという経験」これがUX。

対して、右下の羽根に「+」が書かれたツイットボタンなどがUI。ユーザが触れるもの。

優れたUIというのは、この場合、デザイン的に魅力的なものを指す。
ゲームなどでは、世界観を出すために、世界観にあったデザインを施す。
これがゲームにマッチしていればしているほど、優れたものとなる。

優れたUXは?
簡単に言えば、ユーザがサービスや機能を使うときにストレスを感じないようなもの、もしくは気分が良くなるもの。

無料のアプリを利用したことがある人が多いと思う。
アプリを利用しようとして起動したとき。
または、ひとつのアプリの機能を使い終わって、アプリのホーム画面が表示されたとき。
そのとき、アプリのレビューを促されることはよくある。
または、広告が画面いっぱいに表示され、5秒の後に隅っこのとても小さい「×」を押させるというもの。

これに不快感を覚えたことがある人は多いはず。
これがユーザがサービスや機能を使うときにストレスを感じるもの、つまり悪いUXの最たる例だと思う。

本の紹介

閑話休題。
ようやく本の紹介に移れる。

今回読み終わった本はこちら。

インタフェースデザインのお約束 ―優れたUXを実現するための101のルール

UI改修を担当していた当時、叫びたくなるほど思っていた、
「優れたUXの例を教えてくれ」
「自分じゃ悪いUXがわからない」
という気持ちを汲み取ってくれたかのような本で、

結論からいうと、良い例と悪い例を、理由をつけて非常にシンプルにまとめてくれている本。

ひとつひとつの項目もほどよい長さで、各項目の最後にポイントがまとめてある。
非常に読みやすくて分かりやすい。

最近よく見られるUIも、著者からすればUX的にはひどいものとのこと。
「オシャレだなあ」と思って利用していたものも、たしかに言われるとそう思えてくる。
UXというものを、UIというものを、今一度「ユーザ目線で」考え直す機会になった。

また、日本語版には、訳者によるさらなるルールの追記までしてある。

間違いなく、これ一冊で生涯UXを考える際のガイドラインに使えるものだろう。

デザインを重視したがるUIデザイナーには特に、また、直接デザインに関わらずとも、UIやUXを開発したり考えたりするすべてのひとに、一読を薦めたい。

知らないことは吸収し、すでに知っていたことは、自分の設計が間違いではないことの確認になる。

読んで損はない。
間違いなくこれは言い切れる。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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