#毎週VALIS感想 - 013 ◆ 激情インプロビゼーション

作詞作曲ポリスピカデリーさん。最初のギターのカッティングやその後のリードメロディーのシンセサウンド、キャッチーなメロディーはポリピさんの代名詞ともいえ、VALISにしては珍しくチルな感じの楽曲がうまい具合にマッチし、頭から離れない楽曲になっている。

背景のイラストにはそれまでのカバー歌唱のイラストが使われていたり、描かれているストーリーはボイスドラマのものが多かったり、VALISの「合間」のストーリーが描かれている。

歌詞はハグレモノである自分自身の素直な本音が陰鬱さや内面の葛藤、抱えた「激情」をいろいろ交えて描かれており、現実世界との折り合いがつけられず挫折したVALISのストーリーにうまく絡んでいる。「来た道そのまま戻れば良かった?」というフレーズはリアリティを持ち、その様が非常によく浮かび上がる。

インプロビゼーションとは即興(即興曲)のことを指す。「その場に合わせるように」生きてきた過去(特にNEFFYさんやNINAさんがそういう意味では非常に、歌声も含めてこの楽曲では印象深い)と、そのしがらみから解放されたいまVALISとして好きなように「気の向くままに」というダブルミーニングなのではないかと思う。

ぼく自身、典型的なENTPの人間で、どちらかというと社会との違和や偏見に苦しみながら生きてきたり、抱いている気持ちと「そうは言っても」と内側に押し込めたきもちがあったりしたので、この楽曲の歌詞は非常に非常に非常によく刺さった。劈く激情、それを絡めとる社会のバイアスーー自分の好きなように生きたいのになぜか理解してもらえない、ぼくらマイノリティはいつだってそういう思いで生きてきた。

結局は「社会」に打ち解けることなどできなくても、なんとかうまくやっていくしか無いんだと、少し厭世的になる感情も、「激情」のひとつの「インプロビゼーション」の結果なのだろう。

なんとなく、心のガソリンが切れそうなとき、なんとなく元気が出ない夜、少し寄り添うような温かさがほしいとき、ぼくはこの曲を聞く。「ここにいるよ」という温かさが社会との疎外感を、埋まりはしないがそれでもいいんだと、なんとなく肯定してくれている気持ちになれる。


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