#毎週VALIS感想 - 007 ◆ 猫好的トリックスター by NEFFY

廉さんによる、ピアノが印象的な綺麗系ロックナンバー。個人的に廉さんの楽曲が好きでよく聞いていたので、NEFFYさんの担当が廉さんで非常に嬉しかった。コール部分もあり、元気いっぱいのショーを見せてくれるであろうNEFFYさんに相応しい楽曲だといえると思う。

ピアノやその他キラキラとした音源で構成され、中〜高音域が聞いていて気持ち良いように作られたサウンド、そしてNEFFYさんの少し儚げで芯のある歌声の印象とマッチした歌詞は、NEFFYさんの内面にフィーチャーした、衝撃という意味で少しドキッとさせられるような内容になっている。

それはまるで、日頃の人柄(猫柄?)やストーリーから垣間見える、「誰にとってもできるだけ印象がよく見えるよう振る舞う」NEFFYさんの過去や実際の心情をよく表していると思う。

人々に振り向いてもらえなかった過去を持ち、どう振る舞ったら相手に興味を持ってもらえるかを模索してきて、且つ分身の能力を持つNEFFYさんが唱える「ハロー Myself」「『あたし』は『あたし』」というフレーズには、楽曲が持つ何倍以上もの深みがある。NEFFYさんにとってはきっと、「あたし」ですら向き合わなければいけない(且つ見張られているような感覚を抱く)対象だったのだろう。NEFFYさんの出てくる話には、この曲の歌詞も含め、鏡がとても象徴的だ。鏡が持つメッセージは奥深い。映し身ではあるけれども反対に映る。まさしくNEFFYさんを象徴しているものと言えよう。

今まで見向きされなかった分、今度は世界の全部、自分自身すら自分に興味を持たせてみせる、そんな決意を感じる歌だなと思った。

コール部分の歌い方も、それまで内心を吐露していたような綺麗な歌い方ではなく、「いつもの」元気いっぱいのNEFFYさんだという印象を感じさせる(可愛くてめちゃくちゃ好き)。それがまた自己の内面としての歌い方と、「外向きのNEFFY」という人格とのギャップを感じる。

「I steal NEW『ハロー!!』」というのも、新たなファンを獲得してみせるという宣言なのだろう。

トリックスターというのは変革者とか主人公とかという意味がある。『周りの目』というのを気にして生きてきたNEFFYさんにとって、自分が主人公、すべてを手に入れてみせるというメッセージは考えさせられるものがある。

トリックスターはタロットのアルカナ「愚者」が象徴している。愚者は各地を旅しており、ほかの各種アルカナに見られる共通点がなく、いわゆるタロットカードでの主人公なのではないかと言われている。「愚者」は時おりピエロの姿でも描かれることがある。サーカス団であるVALISにまさしく当てはまっており、震えた。ちなみに、「愚者」の正位置には「自分のためだけの一度きりの人生」という解釈があるらしい。

これは半分以上こじつけだけれど、「愚者」は何かを求めて旅をするという放浪者である。意味は少し異なるけれど、放浪する者という捉え方をすればそれはすなわち Wanderer であり、ドイツ語にすればヴァンデラーでもある。

「あたしが決めたんだよ?」のところ、自省的なものでもあり矜持でもあるのだろう。いろんな感情が込み上げてきて涙が出そうになる。それくらい、この歌に込められているメッセージというのは深く、重い。我儘という単語も、NEFFYさんからは程遠い印象だったから最初は気付けなかったけれど、もしかするとこれは自分の中にいるいろんな「あたし」に対する我儘なのかもしれないなと思った。でもNEFFYさんの場合は、「良いから黙ってついてきて」というよりも、いたずらに笑いながら「こっちに行こうよ」と手を引くタイプだろうから、きっといろんな気持ちや考えが渦巻いている「あたし」たちでも、進まなきゃいけない道はひとつ、みんな同じなんだと強い気持ちを抱いているのかもしれない。

ここからは配信などでの個人的な印象の話。NEFFYさんはイタズラ好きだという印象はあるが、ストーリーとのリンクもあり、ぼく自身はそれが盛り上げとかそういう狙いもあるんだろうな感じ、とても良いなと思った(エンターティナーとかムードメーカー的な性格が実は内心では狙ってやっていたっていう感じのキャラが大好きなので)。

普段の配信のコメントさばきや共演者への話題の振り方などから、とてもよく周りを観察しているんだなと思うし、時おりメンバーから耳にするエピソードを加味しても、それは間違っていないのだろうなと思う。普段我々ヴァンデラーに見せているエンターティナーである「自分」ですら、(ひどく端的な言い方をしてしまえば)ひとりの「NEFFY」なんだろうなと思う。少なくともぼくが観測した限りでは、弱音とかも見かけたことはない気がする。どれほどの精神的負担なのかはわからないけれど、その精神力は並大抵ではないなと思い、改めてそのメンタルに脱帽する。

ぼくはそんなNEFFYさんが大好きだ。


追記

先日、生放送にてNEFFYさんと廉さんによる深堀りがあり、廉さんからの解説・コメントがあったので、それに関しても踏まえて書いていこうと思う。

タイトルの猫好的の部分はNEFFYさんによる提案・造語表記らしい。そのセンスと、唯一無二性に深い溜め息が出た。たしかに公式的にはひらがなで「にゃんはお」と表記されていたので、なるほどと思った。「にゃんはお」という音を知っていたら読めるし、かと言ってありふれている表記ではない。良い単語だなと思った。

廉さんは歌詞の意味を解説したものをNEFFYさんに送っていたという。一行一行すべてに意味を見出し、VALISやNEFFYさんへの解像度が高く、さすがの廉さんだと思った。愛が深い。周囲に気を配り、「自分」と向き合い続けたNEFFYさんの楽曲にぴったりだと思った。

ぼくはその愛の行をどれだけ理解できているんだろうか……改めてクリエイター陣のクオリティの高さを思い知った。




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