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2018年12月の記事一覧

嘘で曇った眼鏡のレンズ

口元を覆ったマフラーから上昇する呼気が 嘘を並べて二枚のレンズを曇らせる 銀のフレームが視界を切り取る 白濁したぬるま湯の世界 吐息でみるみる凍る長い前髪が 嘘を隠すように揺れている 心地良い加減に浸かり 真実を知ったビニールのアヒルが ぷかぷかと泳いでいる 「あ」と発した唇は後に続かず 雑踏に紛れるコートの裾が揺れるのを 控えめに追うだけだった コートの隣には 踵を小気味よく鳴らした長い丈のブーツが くるくると踊るようにステップを踏んでいた 芯を巡る血流の温度が低下するのを

赤と白

スクランブル交差点を斜めに渡る 赤いティントリップ達が会話をしている 赤がこちらを見下ろしている 見下ろした赤はそのままファッションビルに吸われていった 私は小さい 私は小さい呼吸をする もこもことした白のスヌードの隙間から酸素を探す 風が乾かした唇を赤に染めようかと コスメショップへ進む嘘に足並みが崩れた ビルはセピア加工で広告だけが青白いピンクで笑っている 自動ドアの開閉のなめらかなリズムに そうだハンドクリームを塗らなくちゃと 感想を書きました 赤いティントリップの試供