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葬儀会社、ヤバ過ぎ(その2)

食品仕分けのバイト先に同期で入った若い男の子がいる。「大学生?」と尋ねたら、「いや、‥‥」と言葉を濁した。「何とかしなくちゃとは思ってるんですけどね」「同じく」「正社員って、ちょっと懲りちゃって」「サラリーマンやってたんだ。どんな会社?」「葬儀屋」

「う~~~ん、わかるっ!」思わず力が入ったみみずである。

「モロ、ブラックで」「わかる、わかる。私も半年前、葬儀会社やめたもん」意気投合した我々に、先輩社員が「おい、新入り、セクハラかけんなよ」と笑って去った。

社員バッジと会員カードが会社に届いた。普通なら新入社員は本部でセレモニーに出るんだけど、今はこんな状態だから、と言われた。

結婚式は全て延期、葬儀も本当に身内だけのひっそりしたものになっている。売り上げの柱である互助会員の契約にしても、新規客獲得の戸別訪問はできないし、継続顧客へのあいさつ回りも不可能。当然、売り上げは激減している。

政府はコロナ禍により困っている事業者に助成金を支給するなどの支援策を打ち出している。胸を張って申請すべきだ。

しかし、置物のタヌキのような社長は、なぜか煮え切らない。訳が分からない。

そうこうする内、以前から決まっていた副所長の独立、引っ越し作業が行われ、事務所の中も若干の配置換えをすることになった。いろいろな経緯や事情を知らないみみずは、傍観者でいるしかなく、机をあっちへ、と言われればあっちへ運び、こっちへと言われればこっちへ運んだ。

が、疑問がむくむく。これは、さっき、あっちと言われた机だ。今度はこっちと言われて運んできたが、舌の根が乾かぬうちに、またあっちへ戻して、ときたもんだ。社長の指示で、臨時経理・事務のNさんが采配しているのだが、プランなどなきがごとし。

家電の買い替えだって、予めメジャーで大きさを測り、よくよく考えて置き場所を決めるものでしょうが。電気屋はもう来ているんだぞ、パソコンどこに置くんだ?

傍観者を決め込んでいたはずのみみずだったが、思わず口に出した。

「書棚をここに置いてしまったら、社長が席から出られません」

Nさんの顔が恐ろしいことになっていた。

「じゃあ、勝手にすれば。私は何も手を貸さないから」

勝手にさせてもらった。今まで7つの店を出し、そのすべてを潰してきたみみずだ。こういうの、結構慣れてます。スタッフの皆さまの協力も得て、1時間ほどでいい感じに収まった。

その後、Nさんの講義がなくなったので、帳簿資料に片っ端から目を通す。金庫の中も確認しておこう。賃貸借契約書、本部との業務委託契約書、これはなんだ?マル秘資料?!

2年前の裁判記録だった。原告は元社員、訴えられたのは社長。そのに記されたのは壮絶なパワハラ。

元々、その若手社員は社長のお気に入りだったそう。夜の接待にも必ずお供をし、飲んだりはしゃいだり、いろんな芸をさせられたり。どこかでそれがこじれ、契約が取れないと言って川に飛び込まされたり、宴会でろうそくを○○に入れて火をつけられたり、それも衆人環視の下で。おまけに葬儀用の蝋燭。因みにその場にいたのは本部のお歴々。

元社員は精神を病み、事情を知った知人が見かねて裁判に訴え、マスコミに出さないことを条件に示談となった。もちろん本部がお金を出した。

結局社長は助成金の申請をすることもなく、本部から、倒産しない程度のお金が振り込まれ(売り上げが捏造され)た。

社長の机上の変態写真にも合点がゆき、しっかり者のNさんがいるのでみみずなんぞの出る幕はないですから、と辞職した次第。

昨日届いた年金の定期便に、1回こっきりの厚生年金納付が記されていた。





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