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数学教員免許は無駄だった

塾講師の募集広告はわんさか来る。「スカウトメールが届きました」「あなたの経験、生かしてください」「緊急募集、ぜひご連絡下さい」

羽虫がうようよ集まってそこら辺を飛び交っているくらいのものだ。刺されるわけでもないが、顔に当たったりすると不愉快。通行の邪魔。

みみずは教員免許を持っている。公立の教育機関で10年弱の教職経験も有り。教科は「数学」。持ち札としてはかなり強力だろうと思っていた。就活を舐めていた原因の一つである。

初めの内は、メールが来るままにホイホイ応募していた。ところが一向に面接に至らない。書類の段階でことごとく落とされる。あまり条件の良くない(駅から遠いとか)ところでさえ、「ご期待に沿えずに申し訳ありません」のお返事ばかり。

メールのごみ箱がいっぱいになった。返却された履歴書で、リアルゴミ箱もいっぱいだ。

塾講師の募集広告を見ると、みんな若い、若い。大学生歓迎とか、予備校生もOK、な感じ。経験は問わず、教科の知識も重要なことではない模様。無論、難関校狙いの塾は別ですが。

要するに、子供たちの「やる気スイッチ」をONにするような、お姉さん、お兄さんが求められているのですね。昔は家族の中にそうした存在があったのだろうけれど、今は少子化ですから。

しかし、幾多の門前払いを食らっても、ただで起きるみみずではない。腰をさすりながらよろよろ立ち上がり、塾の受付職を狙った。が、これもオールアウト。

塾の経営者からしたら、なまじっか経験者を雇うと口うるさくて面倒。ママたち(30代、40代)も、亭主の親、自分の親でさえ持て余しているのだ。自分と同年代か、年若いスタッフの方が何でも言うことを聞いてくれそう。

子供の塾の先生との不倫は、あっちでもこっちでも、ママ友の会話のメインテーマだ。情熱溢れるピチピチしたイケメンの先生は、存在そのもので子供たちの学習意欲を高め、ママたちの教育熱を燃え上がらせる。

完全に、別の世界だな、と感じたみみずである。

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