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派遣業と手配師

昔、山谷と言う地域があって、ドヤ街と言う簡易宿泊施設が軒を連ね、大勢の日雇い労働者が暮らしていたと聞く。今は、かつてより規模も人数もずっと少なくなって、しかもそのほとんどが高齢者とのこと。

昔、と書いて、はて、いつのこと?と、気になる。山谷のドヤ街は、東京オリンピックに始まる日本の高度成長期を支えた、とある。東京オリンピックの時、小学校が半ドンで帰宅したことを覚えている。みみずの子供時代は50年以上前だ。昔に括っていいだろう。

その後、かなりいい歳になるまで、山谷の存在はなんとなく心に引っ掛かりながらもこれと言って接点もなく、ちょっと近寄りがたい場所のように感じていた。

1954年のアメリカ映画(みみずの生まれる前だ)に「波止場」と言う作品がある。マーロンブランド演じる冲仲士が主人公の、社会派熱血青春ドラマ。労働者が日雇いの荷役作業に駆り出されていく様子がリアルだった。港を牛耳る手配師は勿論ギャングで、金と暴力、殺人がまかり通る。映画では、主人公がリンチを受けた後、立ち上がり、正義が勝つ、みたいな感じだったが、そんな御伽話、誰も信じない。何かに遠慮してたのかな。

学生時代の友人の父親は警察官だったが、若いときは沖仲士をやっていたと聞いた。今、この「沖仲士」と言う言葉さえ標準辞書に出ておらず、いちいちコピペして文章をつないでいる。「昔」の向こう側に追いやられた言葉なのね、と思う。

山谷では、朝早く手配師を載せたトラックが寄せ場に停まり、人集めをする。頭数が揃えば労働者を載せて現場へ向かう。

現代の派遣会社は職を求める人をネット登録させ、スマホに情報を流して人を集める。賃金は上前をはねられ、運営者は汗一つかかずにお金を得る。昔も今も同じだ。

小泉又次郎(逓信大臣、衆議院副議長などを務めた小泉元総理の祖父)は手配師だったし、竹中平蔵は、人材派遣のパソナグループ取締役会長である。

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