パーティーはすぐそこ

 ふたご座の最終日が私の誕生日である。
ただ、誕生日であるだけで、特別な予定はない。大学に行き、つつましく家に帰る。学食のモブおばちゃんが急に踊りだす、なんてことはない。ろうそく吹き消したあとくらい暗く見えてしまうかもしれないが、このくらいが性に合っている気もする。

 それでも、急にパーティーに呼ばれたら、喜んで行くと思う。今年一年の抱負を聞かれた際の大喜利くらいは用意していくつもりだ。


 結局イレギュラーな予定はなかったが、言葉上で祝ってくれる人がいた。いくつか書き記すことにする。

 小・中学校の頃の友人に、なんだか毎年連絡をくれる男がいる。今年は『大満足21歳』とだけ送られてきた。
 ”大満足”とはなにか。それは、中3の時にお泊り会をしたあの日に食べてから、我々の間で神格化されている最強みかんゼリーこと「大満足みかん」のことである。ほぼ会わなくなっても、変わらない関係は有難い。まさに大満足だ。良い友人を持っていることを再認識できる。再認識みかん。

 出会ってすぐにカレンダーに誕生日を入力してくれたサークルの子が、同期のLINEグループでメッセージをくれた。その後、堰を切ったように他の友人も続く。ちょっと事務的な気もするが、全員にやっているとしたらめちゃくちゃ素敵な人だ。
 ただ、そんな一斉に送らなくてもいいじゃない、と思ってしまった。開店直後のコストコじゃないんだから。もちろん嬉しい気持ちしかない。

 持ち前の記憶力で人の誕生日を悉く暗記し、まるで早押しクイズのように「誕生日だよね」と確認してくる人もいる。
 こちとら出題者じゃないのよ。盛り上がらないスラムドッグ・ミリオネアか。別に構わないけれど、私の誕生日をあなたの知識欲を満たす道具にしないでよ。当てるだけじゃなくて、東急ハンズでなんか買ってきて欲しい。ちっちゃい盆栽育てるキットとかオススメだよ。本当に一切構わないけれど。

 他の要件で、ここ数日LINEで会話をしていた人からもメッセージが来た。あぁそうか、LINEは誕生日を周りに伝える機能を持っている。私の誕生日に、LINEを返さなければならないターンが重なってしまったせいだ。見逃す訳にもいかなかったのだろう。申し訳なさを感じつつ、優しさに感謝した。


 あれこれ書いてみて思うのは、誕生日は少し気を遣う日だということだ。

 同じ「ありがとう」でも、添えるエクスクラメーションや伸ばし棒の数が違う。
煩わしい。全員に向けた感謝を幼少期の画像とともに投稿する気持ちもわかる。
 ただ、煩わしさを超えて、それぞれへの愛を表現して伝えたい気持ちであふれている。

昨日より1歳増えたことを実感した。

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