アクリル絵具でミニチュアペインティング③マチエール系メディウムいろいろ! たのしい質感研究 #Warhammer
導入(省略可)
マチエール(matière…素材、材質の意)とは、絵画方面で「絵肌」を指して用いられる美術用語です。
特に油彩絵画において、筆使いによる絵具の盛り上げや掠れなどから半立体的に描かれる作品が多く見られます。次第に、絵具そのものに質感の材料となるような液体・粉体等を混ぜ、さらに多様なタッチを得る手法が考案されてきました。それらを、油彩より易しく再現する選択肢の一つとして、アクリル絵具&メディウムが普及したのではないか、と私は考えたりします。
この記事は、ミニチュアモデルの筆塗りを目的とした「アクリル絵具のマチエール(質感)系統に用いられるメディウム」について、水性塗料の類を模索する諸姉諸兄に向けて簡便にまとめ、ご紹介するものです。
通りすがりの方々にも、何らかの助けとなりますように。
作例説明(省略可)
画像は、ターナーのアクリルガッシュを基調とし、瞳と宝石の光沢表現をホルベインのアクリルカラー&リキテックスのジェルメディウムの組み合わせによって仕上げた作例です(ただしメタリックカラーは除きます)。
求める質感を考える(省略可)
まずは「基調とする質感」で全体をまとめます。
作例では、全体にガッシュを選択、マットな質感にまとめました。
次に「強調部分の質感」を定めます。
作例では、装備品、宝石、ユニット全員の瞳の「輝き」を強調させることにしました。
………具体的なイメージ目標が定まったら、制作に入りましょう。
工程ガイド※使用色明示なし(省略可)
装備品の宝石部分の1層目にはメタリックカラー、それぞれの瞳には、混色して作ったくすみ系の茶褐色を仕込み、室内乾燥30分。
その上にジェルメディウムで溶いたアクリル・カラーの透明ブルーを2~3層乗せます。気泡が入ると光り方が変わってくるので、物足りない気がする程度に薄く塗ります。
1層ごとに30分程度乾燥させ、同色を重ねます。都度、特定の色を作るのは大変です。ウェットパレット上に色を用意しておくと良いですね。
最終的に「わざとらしくない」輝きと、つぶらな瞳を授けることに成功しました。私は満足です。
ジェルメディウムで溶いた透明色は、表面には光沢を持ち、下層に仕込んだ色や光をよく通します。マチエール系のメディウムは、総じて乾燥時間が長いです。薄く塗った場合、1層ごとに30分~1時間程度、2mm以上の厚みに盛った場合は半日~一晩程度、少なくとも「手で触っても崩れない程度」には定着を待ちましょう。
ゆるふわメディウム探訪カタログ
つやつや系: ジェル/グロス メディウム(ソフト/ハード, ソリッド, ヘヴィ)
色ガラス調の透明感を持った、厚い塗膜を形成するメディウムです。コラージュ画に於いて、異素材同士を接着させる糊代わりに用いられることもあります。希釈系メディウムで粘度を調節し、平らな板などの上に広げて乾燥させ、シート状の造形素材を作ることもできるそうです。いつか試してみたいです。
「ソフト」と銘打たれるジェルメディウムの多くは、乾燥前の段階ではテリヤキソースのような質感。乾燥後は軟質な塗膜に仕上がります。「動きの少ない静かな水面」「カボション・カットの宝石(Wikipedia参照)」のような、丸みのあるモチーフの光沢表現に向くでしょう。ソフトと表現されるジェルメディウムの強みは、扱いやすく芸の幅が広いことです。弱点は、盛り上げの効果がやや弱いこと、狙った範囲外に流れやすいこと、乾くと痩せやすいことです。
一方、「ハード」「ソリッド」「ヘヴィ」は筆の跡が立ちやすく、乾燥前の段階では室温下で緩めたマーガリンのような質感を持ちます。乾燥後は樹脂らしい硬さのある塗膜になります。「波打つ水面」「鉱物」などの硬質な光沢表現に向くでしょう。盛り上げのエッジを活かす用法には、パテ用の道具や粘土へらなどがあると便利です。ハード、ソリッド、ヘヴィと表現されるジェルメディウムの強みは、厚みを稼ぎやすいこと、角(ツノ)を立てるなどユニークな造形効果が得られることです。弱点は、絵具と混ぜ合わせる際に気泡が入りやすいこと、入った気泡が抜けにくいことです。それはそれで、味なのかも知れません。
ざらざら系: サンド,スタッコ等々…
溶媒(水などの液体)・溶質(樹脂成分)の他に、物性を特徴づける粉体、粒体が配合されたメディウムです。ミニチュアペイントに於いては、べデコ(Base-decoration)に使えそうな部類だと思います。
サンド: 全体的にはジェル状、砂が入っていてざらざらした質感が得られます。砂の材質は、鉱物由来であったり樹脂製であったりと様々です。粒体の大きさにはランダム性があり、画材店でサンプルの展示を見ておきたい代表格。リキテックスのナチュラル・サンド(700円台/50cc)を常人体格ミニチュア(1/30スケール)の視点で観察すると、砂利か砕石のようなサイズ感の粒体です。表情づけのコントロールはしづらいですが、「大体いつも同じような感じに仕上がる」とも言えます。
スタッコ: 化粧漆喰。サンドよりきめが細かく軽量、やや硬さのあるセメント状の質感です。アクリル絵具方面では、中空のセラミック粒体を配合した「セラミック・スタッコ」が主流の様子。常人体格ミニチュアの視点で観察すると、泥、土、砂のようなサイズ感の粒体です。ぺたぺたと均したり、荒らし気味に盛り立てたりと、表情をつけやすい印象です。
他にもたくさんありますが………(省略可)
ミニチュアペイント用塗料との互換と言えるところは、ざっとこんなものだと思います。
画材店を見渡すと「これは一体何に使うの?」といった変わり種にも出会うのですが、記事の趣旨から大きく離れてしまうため割愛します。
私見(省略可)
べデコに関しては、市販のメディウム縛りで考える必要性はないかも知れません。身近で手軽な100均グッズから採取していくのが、費用対効果も高くオススメです。これまたホットなトピックになりそうですね。
〆(省略可)
お疲れ様でした! 今回も、長々とした記事にお付き合い頂き、ありがとうございました。
恐らく、光沢(つやつや)と非光沢(つや消し)の塗り分けだけでも、彩色の表情づけには充分です。基本はいつだって一貫して同じ!
「色ムラ気にせず、重ねましょう」!
手間はかかりますが、スキルの成長と節約できた費用は財産になるはず………なっててほしいな!!
次回は、閑話休題的などうでもい~い感じの記事を挟んだ後「④防御力UP! アクリル系特有の弱点と対策」と題して、塗装完了ミニチュアの保管とトップコートについてのお話を書こうと思っています。
今年も黄金色の連休をお過ごしの皆さん、そうでもなかった頑張り屋の皆さんも、どうかお身体を大切に。ではまた!!
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