シェルブールの雨傘

京本大我さん主演、ミュージカル『シェルブールの雨傘』の感想を残したくて、note始めました。
殴り書きです。

今回、私は2回観劇の機会があったので、1回目の観劇まではできるだけ情報を入れないように、映画も観ないように、初めて会場で感じるものを大事にしようと思い、XのTLも薄目で眺めてやり過ごして。
初日から1ヶ月、新橋演舞場での全公演が終わり、待ちに待った12月8日、大阪松竹座にて自身1回目の観劇。
胸がいっぱいになりました。余韻もすごかった。
けど、正直なところすべてを味わい尽くせたとはとても思えなくて。
あれもこれも欲張って全部を堪能するのは難しいのはわかってたんですが、どうしても細かい表情が見たい、となると双眼鏡が手放せない。
でも双眼鏡でずっと表情を追いかけてると全体の動きがみられないどころか、歌や音楽も存分に味わえていなくって。
全体をしっかり観る上で、やはり時代背景を多少なりとも知りたいと思ったし、映画も観なければわからないなと思いました。

映画を観てみて、フランス映画ってそういうものなのかな、普段観ないのでわからないんですが、あまりの色っぽさにびっくり。
ずっと画面の中に色気がむわっと漂ってるような、ギイとジュヌヴィエーヴはとても10代と20歳のカップルに思えず。
大我くんと朝月希和さんが演じるふたりが、いかにさわやかで若々しかったかわかりました(どちらがよいとか悪いとかそういうことではなく)。
そして映画のジュヌヴィエーヴはなんだか身勝手な印象が勝ってしまうような、そんな描かれ方をしているように感じたので、その後に観た2回目の公演、大我くんと朝月希和さんが丁寧に演じるギイとジュヌヴィエーヴは、みずみずしくて、表情や歌声からその感情がありありと伝わって、それぞれが抱えた苦しさや葛藤がより繊細に表現されているようで、ぐっと胸に迫りました。

国のために死ぬ名誉を持つ男性が初めて国民と認められる。
ギイは怪我で兵役を全うできず、国民の義務を果たせなかった。待っていると約束した恋人は自分とは階級の違う裕福な男性と結婚した。
恋人に裏切られただけではない、自尊心を傷つけられ自分自身を見失うほどのことが何重にも重なったのだなと。
そんなギイを演じる大我くんの絶望や悲しみ、怒り、虚しさの表現。
ダンスは泣きそうなほど美しく、ジュヌヴィエーヴへの愛情表現はとびきり甘いし、弱ったときにマドレーヌに縋るずるさもあって、そのマドレーヌを愛して家庭を持って仕事の夢も叶えて幸せに暮らせていると思っているのに、再会した途端せっかく心の奥にしまいこんで蓋してた想いが溢れたようなラストシーンの涙。もうたまらないね…
そして私は大我くんの怒りの演技がたまらなく好きだと自覚しました。
絶望も狂気も大好きなんだけど、怒り、たまらないなあ。
目の色も表情ももっと見たいし、舞台上で全身で爆発させる怒りの表現はぐさぐさ刺さりました。

そして、2回目の観劇で、私は朝月希和さんが演じるジュヌヴィエーヴの素晴らしさに魅了されました。
希和さんの丁寧で繊細な演技が、映画では感情の動きがわかりにくく身勝手なようにも見えたジュヌヴィエーヴがなぜその道を選んだかをぐっと鮮明に見せてくれたように思います。
まだ母親に守ってもらう立場でもある17歳の女の子が、女性は男性に従属するもの、中絶は認められない、未婚の母は非難される、そんな価値観の時代に、出征前の恋人に求められて関係を持って妊娠して、母子家庭で店は経営難、母は誠実で経済的にも頼ることのできるカサールとの結婚を勧めてくる、学がなく自立して働くすべを持たない自分、ギイを待ちたいのに手紙は途絶え生死もわからない、帰ってくる保証もない。子供が生まれたら未婚の母となってしまい、子供を守れるかわからない。
自分を受け入れ、意思を尊重しようとしてくれる誠実なカサール。
出産まで時間がない中で選択を迫られる10代の彼女の辛さ、苦しさ、葛藤が痛いほど伝わって、ギイを思いながら涙を流してカサールとの結婚を選んだジュヌヴィエーヴを責められないなと思う。そう思わせてくれたのは朝月希和さんの素晴らしい演技力、表現力があるからこそだな、と強く思いました。

キャストの皆さん、本当に素晴らしかったなあと思うんですが、ギイとジュヌヴィエーヴの二人がそれぞれ人生を共にすることになったカサールとマドレーヌ。
この二人の誠実さ、清らかさに救われました。
最初このお話のあらすじを知ったとき、何にも知らなかった私は、純愛が叶わなかった主人公カップルに関わってくる二人はきっと嫌な人なんだろうっていう変な先入観、思い込みがありました。
けれど、カサールはお金で彼女を買った悪い人ではなく誠実に彼女をまるごと受け入れてくれた人、マドレーヌはずっと好きだった人が恋人を失い弱っているところにつけこんで奪ったのではなく健気に幼馴染やその伯母を支えギイから望まれて結婚した人。
この二人が美しくて、本当に救われたし、二人が幸せであってほしいと強く思いました。

今回の『シェルブールの雨傘』、何よりも好きで好きでたまらなかったのは、ギイが一人で踊るシーンです。
1回目はただただ見惚れて、2回目は双眼鏡なしで目に焼き付けて帰る!と心に決めていたので必死で見ました。
美しくて繊細で力強くていつまででも見ていたいと思うギイのダンス…
好きなシーンひとつだけ観させてあげると言われたら迷いなくダンスのシーンを選ぶけど、作業着で踊るとこか軍服で踊るとこか…
あんなにも心に響くダンスを見たのは生まれて初めて。人が踊る姿で泣きそうになるほど心が震えることなんてあるんだなって。
大我くんのダンスはいつもどんなのでも大好きだけど、ギイのダンス、格別だったな…

最後に。
大千穐楽公演、素晴らしかったです。
私自身、1回目よりも知識を入れていたおかげでお話に入りやすく登場人物の心情の理解も深まりましたし、かなり前の方で観られたことも大きかったかな(10列以内という近さで大我くんを見た瞬間、いやほんとに生きてる人間だったんだ…!実在してる…!動いてる!とベタなこと思いました)。
カンパニーの熱量を感じ、ホールに響く美しいオーケストラの音、皆さんの歌声をたっぷり浴びて、とてもとても幸せな、忘れられない時間になりました。

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