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書評:『ウォール街の大罪―投資家を欺く者は許せない!』(Arthur Levitt, 小川 敏子)

ウォーレン・バフェットが繰り返しIRの中で勧めているのが、この本です。元SECのリーダー、アーサーレビットさんです。

amazonの中古で買ったのですが、今見たら激安ですね。分厚い本ではありますが、投資家であれば、読む価値のある本だと思います。

これを読むと、2000年ごろの株式市場って本当に酷かったんだなあと思うわけです。今は、レビットさんのSECのおかげで随分とマシになったもんだなと思うわけです。

しっかし、証券業を含めた金融業というのはヤクザそのもので、個人投資家のことなど何も考えていなかったと言うことが、この本を読むとよくわかります。ゴールドマンサックスなどの金融会社のCEOだけでなく、大企業の経営者であっても、西海岸の大成功した経営者であっても、株主にとっては敵でしかないことがよくわかります。

そういった大物たちと、ただただ、レビットさんは、個人投資家のために戦い続けてくれた人で、その戦いの成果が、米国から一部日本にも来ているわけで、この人こそ、本当の勇者であり、聖がつく人ですね。もう、聖レビットと呼びたくなるような人であります。

まあ、少なくとも証券業界と言う業界は、インターネットとSECによってかなり浄化されたと思います。今でも、綺麗ではありませんが。

本の内容を簡単に振り返っていきましょう。

証券会社はインチキだった

ブローカーの話が出ています。特別な人たちがオークションで手でやっていたので、適当です。投資家は、良い価格で、スプレッドを抜かれずに株式を株式を売買することが難しかったのです。営業も適当だし、個人投資家のことなど、何にも考えていません。

対面の証券会社の営業マンを選ぶときにどうすればいいのか、などがこの本には書いてあるので、まあ、読んだ方がいいでしょうね。

投資信託もインチキだった

今でも私は、ETFは買うけれども、投資信託などあまり買う気になりませんが、やっぱり買っても意味がないという話ですね。バンガードさんのところみたいに、手数料の安いのをドルコスト平均法で買いましょうと言う話です。手数料が高すぎるし、その情報開示もめちゃくちゃだった。レビットさんが随分と、綺麗にしてくれて助かりました。

証券アナリストもインチキだった

2000年ぐらいに、インターネットバブルっつーもんがありましたが、まあ、インチキでした。証券アナリストは、IPO部門の犬であって、独立して、分析などしておらず、ただ、企業から情報をリークしてもらうために、わんわん吠えていた犬でしかないことが赤裸々に描かれております。

昔など、アナリストが、インサイダー取引しまくりです。

今でも怪しいもんですが、まあ、こういう裏側の知識を持って、アナリストレポートというものは読みましょうね。

会計基準など当てにならない。利益もいじりまくり

バフェットはよくIRに、「ストックオプションを経費にしないのはおかしい」と書き続けていました。この会計基準というのを守るやつが誰もいないという話が描かれておりますね。

メジャーな監査法人などインチキの塊で、金のために魂を売るから、独立して会計なんか監査してませんということが描かれております。政治家使ったり、ロビイストを使ったりして、会計基準をねじ曲げようとするのが、監査法人の人たちなんですね。

会計操作についても描かれています。ここら辺は、ベンジャミングレアムの時代から描かれておりますし、バフェットもよく指摘しておりますが、この辺りのインチキを、PL, BS, CFを見て理解できないと、やっぱり投資家としては辛いですよね。

レビットさんは、それを正しく書かせようと努力していて、えらいです。

コーポレートガバナンスについて

まあ、アップルの取締役会の話が書かれておりますね。今はまた違うのかもしれませんが、レビットさん、一瞬アップルの取締役になりかけましたが、ちゃんとした取締役のガバナンスをお手紙にして私たら、ご指名が取り消しになったそうです。ジョブスのアップルでもそんな感じです。

まあ、バフェットさんが持っているような会社しか、取締役会は機能していないでしょうし、ああいう経営者が投資家の視点から監査をしていないと、取締役会の監査機能というものは、機能しないと思うわけです。

そして、最後に投資の話までも書いてある

ちょっと古い米国の話なんですけど、広く投資家を広げるために、401kなどの話まで書いてあります。レビットさん、自分のお金には全然ならないのに、どこまでも小規模が個人投資家の味方なんですよ。本当に正義の人であるし、いい意味でおせっかいな人だと思いました。

おまけとしてのパワーゲーム

レビットさん、SECをやる前に、ワシントンの経験があって、ロビイストや政治家との喧嘩の仕方をご存知でいらっしゃる。で、実名だらけで、SECの規制にまつわるパワーゲーム、生々しい政治の世界を最後に書いていらっしゃるわけです。まあ、政治って大変だなあと。神経も使うよね。

結論、ほんとにレビットさんは偉い

義を以ってせざるは勇無きなり、と言いますが、まさにレビットさんは勇気の塊で尊敬です。誰に言われるわけでもなく、個人投資家のために、環境をSECのリーダーとして作ってきたわけです。

先進国の今の社会で一番大きな投資家というと、年金基金です。こういう長期の投資家にとって、レビットさんがやった仕事は偉大です。

そして、年金基金が正しい情報を用いて、株式投資で運用益を得て、得をするのは一般大衆です。貯金しても大した額にはなりませんが、うまく投資すれば、お金は増えます。

インチキ情報ばかりだった投資の世界を、信頼できるものに変えて、年金が機能するようにしてきたレビットさんはやっぱり偉い。

私は、この本は投資の本としてもそうですが、偉人伝として読むべきであると思います。ちょっと読みにくいですが、おすすめです。






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