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投資の学び方

株式市場が高騰する度に、株式投資ブームというのはやってくる。

そこで株式投資という名の投機活動に熱をあげる人は、結果として迂闊な投資家になってしまうことが多い。よく似て見えるのは、競馬で勝てると思ってのめり込み、せっかく労働で稼いだお金をギャンブルで失ってしまう部類の人たちである。競馬であれば避ける行動も、株式投資となるとなぜか避けられない人が多い。

投資の成功・不成功は、学歴とはおそらく関係ない。

古くはアイザック・ニュートンも投資に失敗しているように、数学的な能力が高ければ勝てるほど株式投資は単純ではない。気質というものが投資に合うのか、合わないのか、というのが大きいと私は思う。

また、何もせずにセンスだけで勝てる世界でもない。長期的に投資で負けていない人は、皆自らのスタイルを持っているし、人がしない努力を積み重ねているものである。どんな分野でも地道な活動、地道な努力の積み重ねは必要なのである。ただ、投資が好きな人には、その努力は辛いものでもなんでもない。楽しくて、当然その努力を積み重ねているのである。

実は、ウォーレン・バフェットが言っている通り、投資について大事なことは全て本に書かれている。それを理解し、ちゃんと実践することをやり切れる人が、投資において成功し、やりきれない人が負けているのだと私は思う。多くの投資で成功した人も、色々なスタイルがあるにせよ、自分のスタイルを確立し、やりきっていることは間違いがないだろう。

また、継続は力なりの世界でもある。極端な投機に走ると、資産運用は継続できない。うまくいくときはうまくいくのだが、途中で全財産を失い、投資の種銭を失ってしまうのだ。だから、継続するのは難しい。

実は、この依頼を受けてから、何から書こうか、考えていたのだが、どうも何を書くかがまとまらない。なぜかというと、投資について大事なことは全て書籍になっているからだ。それを買うのはさほどお金もかからない。しかも、多くの金融関係者は読んでいると思われる。読んでいるのだけれども、ちゃんと実践している人は極めて少ない。

そう、投資とは、読むのは容易いが、実践し続けるのが難しい。ここに気質と精神力が必要になってくるのである。

投資の理論は本で学べるが、株式投資ができるようになるのは、ちょうど自転車に乗れるようになるようなものや、スキー、スノーボード、スケートが滑れるようになる、一輪車に乗れるようになるようなものであり、理論を学ぶよりも実践が難しい。これらのスポーツと違うのは、がむしゃらに練習すればできるようになものでもないところにある。

とはいえ、一番最初は、基礎の理論を本を読んで知ることから始めるのが良いと思う。その上で、根気よく実践してこそ、投資の力を得ることができると私は思う。

なので、私は、まずは書籍を上げていき、その書籍についての解説を加える形で、この主題に取り組もうと思う。

基礎の書籍

まずは、何と言っても、こちらの一冊である。

ウォーレン・バフェットの師匠は、ベンジャミン・グレアムである。ベングレアムは、おそらく世界で初めて投資がなんたるかを定義し、その基本的な方法について研究をし、書籍を出した。その基礎は、上巻に書いてある。

ただ、これは誰でもわかるという代物ではなくて、財務の知識が必要である。ベングレアムが本を書いたのは、随分の昔なので、財務の知識が今と違って貧弱だったので、この下巻でその解説をしている。

下巻は、財務や会計が現在とこの時代に書かれたものが違うので、わかりにくいところがある。わかりにくいところがあるけれども、わからないところは無視して、一応我慢して、下巻も全部読んでほしい。

一番の要点をつまみ出せば、「本気じゃないやつはインデックス投資をしろ」である。インデックス投資というのは、ダウ平均や日経平均やTOPIX と言った特定の株式を抽出した株価の指数に対する投資である。機械が機械的に取引をしてくれるので、手数料も安い(ものが最近は色々出てきた)。基本的には、これらを機械的に毎月買えば良い。それが、「ドルコスト平均法」と言われる手法である。

他、投資がなんたるか、なども書いてあると思うので、まずは、この1冊を読んで、インデックス投資をidecoででも始めれば良いのではないかと私は思っている。

財務知識に自信があり、「財務三表ぐらいはちゃんと読めるよ」という人は、証券とは何なのか、株式とはなんなのかを理解するために、次の本がおすすめである。

この辞書のような重さの本は、証券の全てが書いてある。株式・債権のみならず、優先株とはなんなのか、よく聞くストック・オプションを理解するためには、オプションを理解する必要があるが、そのオプションについても書いてある。

企業がIR(Investor Relation)で公表している書類に、決算短信や有価証券報告書がある。これらを一字一句理解するためには、この証券分析に書いてあることが全て理解できている必要が基本的にはある。私は、財務会計の訓練を受けた後、この1冊を読んで、株式投資が何かがわかったし、有価証券報告書に書いてあることで、わからないことはほぼなくなった。

簡単ではないが、これも、基本と言えるだろう。

バフェットを信奉するものであれば、やはり『バフェットからの手紙』は欠かせない。バフェットというのは、この50年ぐらいで一番成功した投資家で、米国の金持ちランキングの上位に必ず出てくる人である。マイクロソフトのビルゲイツともお友達で、1代で膨大な資産を築いた。しかも、それは、株式投資でだけである。株式投資で資産を作りたい人であれば、まず、この人の手法を知っておくことは損にはならないだろう。

バフェットは名言も多いのだが、そのIRも有名である。毎年、無料で出している投資家へのIR資料があり、それを編纂したのがこの本である。私が読んだのは初版だが、いつの間にか第5版になっている。

ちなみに、「バフェットのなんちゃら」という本が世の中に溢れているが、バフェット自ら本を書いたことはないので、基本的にインチキである。この『バフェットからの手紙』はバフェットの書いたことを再編集しているのでそれらのインチキ本とは違う珍しい本である。後、公認したものがいくつかあるから、あとで上げていく。

バフェットは自分がどのように株式投資を行なっているのかを詳細にIRで書いている。簡単にいうと、グレアムがほとんどで、成長株のフィッシャーが一部混じっている手法である。グレアムの理論については、上記の『賢明なる投資家』と『証券分析』を読めば全てがわかる。

もう一つのフィッシャーの方は、こちら。

簡単にいうと、「優良企業を見つけて、長くもちづづければ儲かるでしょ」というのがフィッシャーの主張である。その理論についてが、こちらに書かれている。

バフェット自身は、ベングレアムの投資手法から始まり、フィッシャーの投資手法を後から取り入れていく。双方の理論を融合したのが、バフェットの投資スタイルである。

雑魚の投資理論を読むと、成長株投資がフィッシャー、バリュー投資がグレアムと書いてあることが多いが、大嘘である。成長株の業績が着実に読めるのであれば、グレアムの手法を用いても投資対象になる。違うのは時間軸で、基本、過去の数値を参考に数年後までしか予測しない(企業はあまり大きく変わらない前提の)グレアムと、ある程度業績を長期に見ていくフィッシャーの違いである。グレアムの時代に、GAFAはなかったからね。

実は、バフェットが、フィッシャーの理論を積極的に取り入れていく過程には、相棒であるチャーリー・マンガーの影響が強いと言われている。マンガーに関する伝記がでていて、これは本人が公認したものである。

序文にバフェットが寄稿していることから、この本はインチキではないことがよくわかる。

チャーリーマンガーは、バフェット共にバークシャーハザウェイ社の株主総会で質疑応答をすることで有名な投資家であり、弁護士である。かつては、弁護士をしつつ、西海岸で不動産デベロッパーをしていたが、バフェットと出会い、株式投資だけに集中していく。そして、ブルーチップ社を通じて、バフェットの相棒となっていく。

倫理観が高く、妬みを嫌うその人柄とキャラクターは多くの人に愛されており、参謀としての能力は、バフェットのそれを大きく超えている。基本的にバークシャーの戦略はマンガーがたてており、バフェットはそれを実施しているだけと、バフェットが時々言っている。という意味でも、バフェットの歴史をこの本で学ぶことは大事であると私は思っている。

マンガーの伝記があれば、バフェットのそれも欲しい。マンガーの後にでた本がこれである。

Kindleになっているので、Kindleで読む人はそちらを読んでいただければと思うが、バフェットの伝記である。やんちゃな少年時代から(万引きの常習犯だからね、この人!)、妹の資産を預かったり、ベングレアムに弟子入りした入りと、色々と投資のことが書いてあって面白い。

バフェットのことを知りたいなら、この本を読んでおいた方が良い。

人への対処が穏やかなバフェットであるが、昔は、すごくこれが苦手であったらしい。そんなバフェットが人に対する意思疎通を克服したのが、カーネギーのセミナーであるとは本人の談である。本でいうなら、これだろう。

名著すぎて、色々な人が知っているけれども、コミュニケーションを学ぼうとしたら、この本であろうと思う。

と、ここまでバフェットの株式投資を学ぶ本をあげつらってきたが、投資とはなんなのか、日本人が学ぶなら、この一冊である。

p134の「フエール銀行」が投資とは何かを明確に語っている。

投資の偉大さを理解する上で、もっとも大切なことは「複利」を理解することである。アインシュタインが次のように言ったらしい。

「複利は人類による最大の発明だ。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う(“Compound interest is man’s greatest invention. He who understands it, earns it. He who doesn’t pays it.”)」。

しかし、『ドラえもん』は、その複利の効果を聖人の一人であるのび太くんを使ってわかりやすく説明してくれている。投資はなぜ必要なのか、投資が何をもたらすのか、については、このドラえもんのフエール銀行を読むと実にわかりやすいと私は思っている。

ちなみに、私は『ドラえもん』こそ、科学を信じる日本人の宗教であると考えているのであるが、日本人の宗教「ドラえもん」の旧約聖書にあたるバイブルは、こちらであると思う。

多少値が張るのだが、小学生3年生の息子に買い与えたところ、あっという間に読破して、言ったことが、「クリスマスプレゼントにサンタさんにフエール銀行を頼むんだ。これがあれば、欲しいものはなんでも買える」である。

小学3年生に、投資や複利の意味を一瞬で理解させてしまう、藤子不二雄さんは、まさに神の使徒である。

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