株、はじめましたの罠

日経新聞に面白い記事が出ていた。

「今年3月上旬に株式投資を始めたばかりの東京都内の20代の会社員、青島悠人さん」がツッコミどころ満載なので、色々、この人の間違いを見ていこうと思う。

ちなみに、私は、投資家であって投機家ではない。投資家の定義は、ウォーレン・バフェットやベン・グレアムの定義に従っている。

相場が急落した2月以降、毎日欠かさずマーケットの値動きを追ってきた日経平均株価が1000円近く上下する相場を見て、投資を始めるチャンスと踏んだ。

1:毎日欠かさずマーケットの値動きを追っている人は、損をする

それは投資ではなくて、投機なのである。投資家は、買うときにしか価格を気にしない。気にするのは、企業の業績の方である。


2:日経平均株価が1000円近く上下する相場は、投資を始めるチャンスではない

日経平均の話は、ボラティリティの高い相場をさしている。株式投資を始めるのに、株価が下がっていることは大きなチャンスであるが、上がっていることはチャンスでもなんでもない。高値掴みのリスクでしかない。

株価の変動を見るのではなくて、株価の絶対値を見て、安いければ買うし、高ければ売る、というのが株式投資である。値幅を見ているのは、投機であって、投資ではない。それなら、FXでもやった方が良いし、ビットコインでも一緒である。

と、簡潔な2文にこれほどのツッコミどころ。まさしく、名文である。


ところがいざ始めてみると、期待とは裏腹に損ばかりが膨らんだ。「株を買うと値下がりし、売った途端に戻すこともあった。しばらくは株取引をしたくない

投機に走った挙句、株価の上下に一喜一憂する。この精神の弱さはトレーダーとして決定的に、ダメである。

しばらく株取引をしたくない。
この短い一文にツッコミどころが二つもあるのである。すごい。

まず、株取引をしないのであれば、ずーとしなければいいのに、「しばらく」である。いつまでだよ。株価というのは安ければ上がり、高ければ下がるのであるが、それがいつかは誰も予測できないということが数学的に証明されているらしい。なので、しばらくしたら、良いタイミングがやってくると思っている時点で終わっている。しばらくなどないのである。やるならちゃんとずっとやる。やらないならやらない。きちっと決めないと、株式売買で利益は得られない。

次に、「株取引をしたくない」である。この人は投資をしたのではなくて、取引をしたのである。Investmentではなくて、Tradeで儲けようとした。つまりは、株式トレーダーである。

さて、トレーダーの世界は厳しい。ゴールドマンサックスでも大量にトレーダーは首になり、今のトレーダー主力は、機械取引である。大規模なコンピューターを取引所のシステムのすぐ隣に置いて、ミリ秒の勝負で戦っているのが、この分野のトレーダーである。すごく賢い一部の人がその指揮をとっている。そういうゴールドマンサックスと君は戦っている。そりゃ勝てんわ。

個人トレーダーはあまりにも無力である。


まずは買うタイミング。個別株選びで目立つのは株価の上昇局面に買い注文を入れる例だ。「初心者は値上がりしている銘柄を選びがちだが、既に割高かもしれない」と大江氏は指摘する。値下がりして本来の価値と比べて割安になったと考えるタイミングを狙うのが王道だが、下落局面では損をしてしまうと思い敬遠しがちになる。

まず、株式投資には、タイミングというものはない。あるのは、高いのか、安いのかだけである。タイミングは誰にも測れないのである。タイミングという単語がある時点で、終わっているのである。

初心者は値上がりしている銘柄を選びがちだが、既に割高かもしれない」という大江氏のアドバイスは正しい。上がれば、割高になる。割高のものを買えば、損をする可能性が高くなる。というのが投資である。値下がりしているときに買えないのであれば、買わない方が良い。


売るタイミングも難しい。相場が急落する局面では「今売らないと損失が大きくなる」と焦って、慌てて損失を確定する売り注文を出してしまう。一方、株価の緩やかな下落が続く場面では、売るタイミングが見つからずに逃してしまうことがある。「すぐに損を確定させず、株価が戻るのを待とう」と考えるためだ。結果として塩漬けになってしまう。

こちらもタイミングの話。タイミングなどないのである。

今売らないと損失が大きくなるというのは株価を気にしている時点でそれは投資ではなくて投機である。「あ、バリュエーション間違ったかも」が、投資家のやることである。

損失が大きくなる=割安になる なのだから、投資家であれば、それは買いのサインである。投資家としては、選択した銘柄とバリュエーションを間違っていないかのみがチェック項目であって、株価が下がったからといって、企業の評価を変えることはない。企業の評価額と時価総額とのギャップのみを追求するのが、投資家の仕事である。

「企業分析をしっかりして、成長性があると考える銘柄に投資しておけばうろたえずにすむ」と大江氏は言う。リーマン・ショックなどのような危機の後も、相場は中長期でみれば回復した。目先の値動きに一喜一憂しすぎるのではなく、自信を持って保有できる銘柄や商品を選んでおくことが肝要といえそうだ。

大江さんは、株式投資の話をしている。冒頭の株始めましたの青島悠人さん(仮名)は株価の分析をして、初心者株トレーダーをして失敗した。

ここに、大きなギャップがあることを理解しないと、株式投資にはいつまでたってもたどり着かない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?