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ドローンとキルウェッブの話

サウジへの無人攻撃機での攻撃が騒がれているが・・・

こんな感じで、無人攻撃機が爆撃に使われたことが結構騒がれている。

「誰でもドローンを使って安く大量破壊ができてしまって怖い」「米軍としては全くの予想外で、守る手段がない」「今までの戦闘機とか空母とか意味ないんじゃないの」という単純な反応があって、結論、ドローンすげー、ドローンが世界の軍事情勢を変える、中国のドローンに米軍が破れる的な間違った発想がSNS界隈で殺到しているのだが、ことはそう簡単ではない。もう少し、全体を理解した方が良い。


基本としてのキルウェッブの話

キルウェッブの話を以前書いたが、結構アクセスがあるので、興味がある人が多いのだろうと思う(過去記事「大型空母不要論とF-35B」)。要するに、戦争の武器のパラダイムシフトである。

(1)巨艦巨砲時代は、艦船の艦砲
(2)空母時代は、飛行機が爆弾運んで、爆撃
(3)今の時代は、巡航ミサイル

という全体像があって、巡航ミサイル時代の戦い方は、

(1)前線にF-35Bを上げる
(2)上空から敵機や敵の攻撃目標をF-35Bが把握する
(3)情報システムで、その情報は自動的に全軍隊にリンク
(4)後方のイージス艦 or 潜水艦から巡航ミサイルで攻撃
(5)F-35Bのレーダーの結果を通じてミサイルを誘導

というものである(この概念がキルウェッブだと思う)。


サウジの件は、F35Bが無人機に変わっただけ

今回、サウジアラビアの石油精製プラントが攻撃を受けたわけだ。その方法が、ドローンと巡航ミサイルだったことに注目した方が良い。

この上のF-35Bの部分が、無人攻撃機に変わっただけというのが実情で、その対象が動く巡洋艦、駆逐艦、空母などではなく、動かないプラントであったというのが、今回の話である。随分と簡単だなあと。

センサーが前線に飛んで、情報システムで連携し、ピンポイントに長射程の巡航ミサイルをぶち込む、というのが新たなキルウェッブである。そのシステムの全体像を理解しないで、ドローンだけ注目するから変なことになる。


UAVへの対抗策を米国が考えていないわけがない

F-35Bが最後の有人戦闘機と言われるぐらいなのだから、無人機については米国もよく研究していて、ということは、その対抗策も十分に検討されていると思われる。

その一番の候補は、レーザー兵器だろう。これとかこれに詳しい。戦闘機にレーザー兵器をつけるのはちょっと先かもしれないが、米軍は、駆逐艦にはレーザー兵器をつけ始めている。

レーザー兵器は、弾丸コストが安いので、安いミサイルや、安いドローンや無人機が来た時の迎撃に最適である。

ドローンの軍隊であろうが、無人攻撃機であろうが、たくさん来た場合、小さいものまで見えるレーダーで捉えて(もしくは、上空に飛ばした気球や衛星やドローンで敵機を捉えて)、場所を捕捉し、レーザー兵器で順次片付けていく、という方法が取られるだろう。

このように、ハエにレーザーを当てる製品があるようだが(完成品かは知らないが、技術的にはできるのだろう)、ハエの代わりに、無人機や巡航ミサイルを捉えて、レーザー兵器で焼き切るということが、キルウェッブ時代の常識となるだろう。


新たな時代の戦い方

大事なのは、次の三つである。

(1)レーダー
(2)武器管制システム
(3)巡航ミサイル

(1)レーダー

小さいものをたくさん捉えることができる物理的なレーダーが必要である。地球は丸いので、高いところにあった方が有利で、最近、googleさんとかが飛ばしている気球とか、太陽電池で飛び続ける無人機なんか、レーダー源としていいんでしょうね。低軌道の軍事衛星などでもある程度は見えるのかもしれない。あと、レーダーで捉えたものの識別の世界も重要だと思われ、これは鳥の動き、これはハエの動き、これはきっとミサイルだからやばいよね、これはドローンだね、あれ戦闘機だよね、みたいな物体識別が重要になるだろう。

この辺りは、まさに、AIというか、Deep Learningの物体識別でやっている技術も応用できるのだろうので、機械学習、強化学習の世界で出来上がってしまうだろうと思う(その点、日本の防衛技術が心配だなあ・・・)。


(2)武器管制システム

イージス艦のイージスシステムのようなものだろう。昨今は、イージス艦以外が搭載するセンサーの情報も連結して、武器管制をする能力がある。

センサーの情報を持って、半自動的に敵を迎撃するのがこのシステムで、これがないと、センサーもミサイルもただのゴミである。


(3)巡航ミサイル

これは、他の二つに比べると実は簡単な方な技術なのかもしれない。

地球は丸いので、低空で飛ぶミサイルが良い。レーダーに発見されにくいからである。

射程が長い方が良い。これは燃費や燃料の問題だろう。

あと、最後に操縦が自由にできた方が良い。例の武器管制システムから命令が来ても、弾道ミサイルや機関銃のように発射後のコントロールが効かないと目標に当てようがないので、ちゃんと曲がって、コントロールが良いシステムが良いだろう。まあ、性能は良くても、(2)の武器管制システムがおんぼろだとおみがないのであるが。


野球でいうなら良いピッチャーと良いキャッチャーが必要?

私はあまり野球を見ないのでなんとも言えないのだが、(2)(3)の話は野球の話に例えられると思う。(3)はピッチャーで、投球のコントロールの話。狙ったところにちゃんと投げられるのか、というのはミサイルの問題になるので、(3)の問題になる。一方、バッターに合わせて、効果的なところにボールを投げる必要がある。この場所を決めるのは、野球の場合はキャッチャーであると思うのだ。キャッチャーがアホだと、ピッチャーのコントロールが良くても相手に打たれてしまう。

この論法でいうと、(1)はバッターの選球眼だろうか?球が飛んで来たのをいち早く見つけて、そのコースをみて、ストライクゾーンなら、バットで迎撃する。選球眼が良くないといけない。選球眼は、動体視力もあるが、そのあとの球の流れを予測することも含まれる。

まあ、そんな理解で良いのかなと思っている。


サウジ情勢に対する予測

トランプは中東に興味を失っているらしいので、積極的には戦争にならないだろうと思うのだが、何かのきっかけで、この攻撃が続くのであれば、米国は数年内に対抗策をとるだろう。

守備面の動き
・迎撃用のセンサーネットワークの設置
・武器管制システムへのつなぎこみ
・レーザー兵器によるドローンと巡航ミサイルの迎撃

攻撃面の動き
・巡航ミサイルをあえて撃たせる
・軍事衛星で、巡航ミサイルの発射もとを特定
・それを大々的に発表
・無人機を飛ばす
・上空に戦略爆撃機を飛ばす
・潜水艦や駆逐艦から巡航ミサイルを発射して、ミサイル基地を破壊

まあ、サウジの金で、サウジの重要施設に防衛設備を作らせるんじゃないですかね。米国儲かるなあ。


日本の軍備について

キルウェッブの構築に積極的に関わるべきだ。

具体的には、高性能のセンサーを通じて、小さいものを遠くで補足する技術を磨く。AIの研究も防衛省でやるべきで、民間技術も使って、識別能力を高めるべき。ここは高度なIT技術が必要である。大学を巻き込んでやるしかないだろうと思われる。大手SIerは競争力がないから、厳しいだろう。

武器管制システムは、米国のイージスシステムだろうか。現状あるものにつなぐ。

あとはレーザーの研究である。ここも得意だったはずなのだが、とにかく効率の良いレーザーを作って、大出力のレーザーを作ることである。あと、これのコントロールを素早くやる制御技術も鍛えるべき。一つ目のセンサーはこっちでも使えるはずだ。また、この大出力レーザーのコスト競争力もつけた方が良い。大量のドローンや大量の巡航ミサイルが飛んで来ても、大量のレーザーで対抗するしかなくなる。インターネットのDoS攻撃を受けきるgoogle様の基盤のようなことをやる必要がある。

また、元気玉じゃないが、大量のレーザーを一点に焦点を合わせることができれば、宇宙の兵器を壊すこともできるだろう。

他、地味に発電能力は欲しいので、原子力発電所が止まっているが、安定した燃料で、安定した発電ができる仕組みも整える必要があるだろう。

きっと、日本の自衛隊や防衛省は米軍と一緒にちゃんと日本の国防を考えてくれていると私は信じているが、側から見た意見として、上記のものを上げておこうと思う。

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