書評:『新訳 経営者の条件 』(P・Fドラッカー)

名著です。感動しました。

新訳の本なのですが(上のリンクをたどって頂ければ分かると思います)、やはり、原題の方が私は好きで、"The Effective Executive"です。直訳すると、「効果的なエクゼクティブ」、あとがきで翻訳された上田さんは、

「The Effective Executive"の真訳は『出来る人』です」

と書いておられますが、言い得て妙だと思います
(そして、私はドラッガーの論文の原題が好きです。"Managing oneself"でしかり、"The Effective Executive"しかり。勇気が出るタイトルです)。

結局、労働の質が肉体労働から、知的労働に変わった瞬間に「仕事は頑張れば良い」と言う価値観は崩壊していて、残念ながら「知的労働は、頑張っても成果が出るとは限らない」「長時間労働は成果につながる訳ではない」。

成果を出そうと思ったら、良い意思決定をする必要がある。良い意思決定をするための習慣のようなものを書いてある本だと思います。それは、生まれつきの才能ではなく、訓練で身につけられるものだそうです。

また、"Executive"の単語の本来の意味も、「重役」でも「幹部」でもなく、「仕事を進める人」に近い定義を置いており、「部下が何人いるかによって計るものではない」とドラッガーは、言っています。一人でもエクゼクティブはエクゼクティブだし、駄目なやつは100人部下がいてもエクゼクティブではないと書いています。確かに、市場調査の仕事は一人で100人分の仕事の価値をだしちゃう時もあるわけで、100人使う人より一人でやる人が優秀だから「そらそうだよな」と納得してしまいました(1つクローラー書くと、100人の業務委託が無くなる場合も実際ありましたし・・・)。

この本には、良い意思決定をするための話がいろいろと書いてあるのですが、面白かったのは、「良い意思決定をするにはまとまった時間を作る事が必須」という事です。細々した15分がたくさんあっても、良い意思決定は出来ないのだそうです(私は感覚的に、これが良く分かります。15分で報告書のストーリーは作れないし、戦略を書きまとめるには集中力が必要)。ドラッガーが言うには、「成果を出すエクゼクティブは、まとめた時間を作るのが上手い」ということでした。

この本を読んでいて思ったのは、私は前職までは確実に、エクゼクティブをやっていたんだなと言う事です。また、細々した時間を取られながらも、水曜日に暇な時間をまとめていて(「空けて」と言ったら、優秀な秘書さんが空けてくれただけですが・・・)、水曜日に何か重要な事をすることにしていました。ドラッガーを読んでいた訳ではないのですが、「行動としては結構良い線まで行っていたんだな」と少し自信を持ちました。

最近はコンピュータも出てきたので、ますます、肉体労働の手法は通じなくなってきていると思います。最近、新聞記事見たのが、「日本は過去xx年間(肉体労働の集積である)製造業の生産性は3倍になったのに、(知的労働の集積である)サービス業の生産性は20%しか上がっていない」というものでした。私は、特に日本のホワイトカラーの仕事の生産性が低いと思っているのですが、1909年生まれの人、こういう研究をしているのが米国なので、「そりゃ、日本も米国経済に負けるわな」と納得してしまいました。

もう少し、日本の経済経営のアカデミアは真面目に実学の研究をしないとまずし、本当に日本の経営学は役に立たないと思うし、米国の経営学のレベルは高いし実用的だと思う訳です。せっかく、日本語訳があるので、読んで行こうと思いました。

また、

「ドラッガーは論語のようなものである」

と私は思いました。「論語読みの論語知らず」と同じく、自分が「出来る人」になりたいのであれば、ドラッガーを読むと言うよりは、ちゃんと書いてある事を実践して身につけないと意味が無いと思ったので、私も襟を正して、今後の行動を変えていこうと思います。


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