書評:『住宅・不動産業激動の50年』(不動産経済研究所)

この本は、私家本である。アマゾンなどでは売っていない。

不動産経済研究所の成り立ちは面白い。創業者の柴田さんは文学の人で、そのお友達たちは、名だたる文学賞をとっている。日刊の不動産関連の新聞を出しているのが不動産経済研究所。マンションという言葉がないうちから、この新聞はあり、「マンションが誤訳」という指摘も柴田さんはしている。一方、集合住宅という日本語も発明であることもわかる。不動産と言いつつ、当時のスーパー成長産業、マンションを中心に書かれているものが多い。そこの裏には、東京の「平面過密、空間過疎」(by森稔さん)という状況があったからであるが。

そこに週評がある。社説のようなものだが、これも50年続いていると、不動産業界のモーメンタムの変化が手に取るようにわかる。名著である。

都市開発や、不動産ほど、日本人に知られていない分野は数少ない。一般の人にとっては、一生に一度か二度、土地と家を買って終わりだからである。集積された学問のような体系は、日本では、おそらく森ビルの森さんぐらいしか成し得なかったのではないか。一方、不動産の政策は国策であるから政治家と官僚が主導して決める。不動産専門家からするとおかしい政策が多いし、作る側からすると政策の意図と方法がズレていることも多々あるようである。そういった様子が、よくわかる。

列島改造論、オイルショック、昭和のバブル、インターネットバブル、リーマンショックと時代の移り変わりと不動産業のモーメンタムがこの本からはよくわかる。都市政策を考える人であれば、是非一読をオススメする。

※読み応えのある本であるが、秘蔵本なのか、amazonなどでは売っていない。冒頭の写真にリンクを興味がある方は、参照されたし。

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