書評:『髙田明と読む世阿弥』(髙田 明, 増田 正造)

言わずと知れた、ジャパネットたかたの高田社長。その語り口の巧妙さの秘密が今、明かされる。

私は、プレゼンのお手本を全て高田社長に真似てきた。私は、平戸弁が喋れないし、人間性も高田社長と違うのでもちろん同じようにはできない。ただ、高田社長の表現方法、間の取り方など、一つ一つを観察していて気付くたびに、その技術の高さに感激していた。仕事の部下にもジャパネット高田を見ることを勧めていた。

そう、あれは、私が朝早く起きて会社にいけない頃。ブラックな働き方が許された時代に、深夜まで働いて、ジャパネット高田のテレビ東京の放送をみてから、タクシーで出勤していた時代のことである。

高田社長は数字をうまく使うし、余計なことを語らないし、間をうまく使う。いつも通販番組ばかりみていたので、こういう喋り方の人で、声が高いのかと思っていたが、実は、地声は低く、いつもとは全然違う喋り方なのだそうだ。そして、高田社長のあの通販での喋り方は、ウェブサイトのカイゼンや、トヨタのカイゼンのごとく、プレゼンしては通販の売り上げの数値を見て、その表現や手法を工夫してきた、結果に裏付けらた試行錯誤の上での、成功の蓄積なのである。

その極意は、知っていたわけでもない能の極意に通ずるものがあるのだそうだ。能の極意の面から、高田社長のプレゼンの秘密に繋がるのが、この書である。

相手に価値を伝えたいビジネスパーソンにはぜひ、オススメの一冊だ。高田社長は、ものを安く売らない。ものの価値を発見し、正しくお客さんに伝えようとして、それを実践してきた人である。価値の発見というのはまさに定義上イノベーションなのであって、イノベーションを繰り返してきた経営者なのである。

まあ、正直、能と比べなくても、高田社長オリジナルの言葉でいうプレゼンの技術や心得も、十分面白い。しかし、達人だけに、能の世界と通じるところを見出してしまう。けど、正直、凡人には繋がらないようなものもあるが、それは高田社長が天才肌だからしょうがない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?