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書評:『世界を変えた10冊の本』(池上 彰)

私は池上さんが大好きであるが、この人の発想は少し、左寄りなんだろうなあと思った一冊でした。

世界を変えた10冊の本というタイトルの通り、世界を変えた本があるという話。聖書とかコーランと言ったものは確かに世界を変えた事がよくわかるし、その要旨がまとまっていて、大変ためになりました。

最初は『アンネの日記』。これはイスラエル建国の元になった本なんですね。アンネさんは普通の中学生で、その思春期ぶりが発揮されているのがアンネの日記。昔の本は、お父さんが編集抜粋しているから綺麗なところだけが残っているけど、本当のアンネが書いた原稿全部版は、友達の文句だったり、母親への文句だったりとちゃんと中学生の日記らしい。この後に、kindleで買っちゃいました。

次が聖書、コーランと来ます。ユダヤ教が『旧約聖書』、キリスト教がその上に『新約聖書』を被せてキリスト教として、さらに『コーラン』を被せたのがのちのイスラム教という関係なんだそうだ。『旧約聖書』は全知全能の神様が全ての生物をの時点で、神様が全ての生物作るっていう時点で、恐竜がいる以上、嘘確定なよもやま話であるのに、ユダヤ教徒も、キリスト教徒も、イスラム教徒も宗教を信じちゃっているんだよなあ。不思議だよなあと思いました。「同じ神を信じている」というのは知っていたけど、昔話まで一緒だったとは知らなかった。日本書紀もインチキだけど、レベルは変わらないのね。

次が、『プロテスタントイズムの倫理と資本主義の精神』(マックス・ウェーバー)。プロテスタントがなんで金持ちなのかを解明した本なのだが、面白い。人は、一生で必要なお金を稼げばいいはずで、それ以上稼いでも意味ないので、働かなくなってたそうだ。カソリックのイタリア人の話で、「うちの子供の学費だけ稼げればいいから、この価格でいいんだよ」という話をきいた事があるが、まさにこの話。必要な額以上に、プロテスタントはお金を稼ぎ続けるのだが、これは、ミッション(=神に与えられた使命)であるからやり続けるのだそうだ。米国という国は、金を稼ぐのが正義なんだけど、それがミッションなんだから、やり続けるのね。天国に行けなくなっちゃう、という発想から、大金持ちが出て来たという話。面白い。

お次が、『資本論』。カール・マルクスさん。まあ、この文章読んでいて思ったけど、素人経済学者の斬新な学説だったけど、いろんな人に利用されて、数々の独裁者を作っちゃった元になる本。資本は集積して貧富の差が大きくなるから、金持ちと貧乏人に別れて、大勢の貧乏人が反乱起こしてしまうわな、という話らしい。最近は、漫画もあるのね。

お次が、『イスラーム原理主義の道しるべ』。イスラム教徒いうのは平和な宗教なんだけど、過激派が一部で出てくるのは、この人のせいなんだってね。小さい頃外国行っていじめられると、その恨みってすごく大きくなるよね、という話かと思いました。

イスラム教にも色々宗派があるんだけど、「違う宗派は邪教だから、戦って聖戦を起こさねばならない」という、いかにも戦争を起こしそうな学説がこの本だそうです。まさに、世界を暗くした書ですね。

しっかし、「この本をkindle unlimitedなら0円です」ってやっちゃう、amazonって会社は、戦争が好きなんですかね。


続いて、『沈黙の春』。農薬ダメだよ、というのを訴えた本だって。

消費者の権利などもこっから来ているらしく、供給者ロジックから、消費者ロジックに変えたという意味で偉大だそうです。そうですね。


次が『種の起源』。ダーウィンの言葉だって言って、引用する人は多いけど、読んだことのある人は少ない不思議な本(私も読んでないから読んでみようかな)

最初のユダヤ教、聖書、コーランの元になっている話をことごとく否定したのがこの本。常識が、旧約聖書(ユダヤ教としてはユダヤ教の本)となっていた暗い時代にこれを書いたのがすごいなあと。「聖書って嘘ばっかり書いてあるよね」ってことを暗に言っていた人なんだけど、ダーウィンはイギリスの教会に偉人として眠っているんだそうですね。いや、本と、ダーウィンさんはすごいですね。現代だったらノーベル賞もらってるよね。


『雇用、利子およびかへの一般理論』。ケイジアンを産んだ偉大な本です。これも、読む気にならないから漫画はっとく。

ケインズさんで、今までは「経済なんかほっとけばいいのよ」という感じだったのを、「いやいや、不況はどこまでも不況になるから、政府が支出しなきゃダメでしょ」という不況に対する対処をまとめた本。いわゆる、マクロ経済の基本となった本ですね。

それまでは、不況に対する対処がなかったというのだから、恐ろしい。これを知らなかった菅直人という日本を不幸にした元総理大臣がいますが、漫画でいいから読んでおけばよかったのにね。


『資本主義と自由』。フリードマンという人の名前はよく聞くが、本は読んだ事がない。amazonで探したら、kindleなくて、中古の本しかなかったよ。日本での地位が低いんでしょうか、この人は。

ちょっと乱暴かなという感じですが、小泉純一郎が総理大臣だった頃の政策がだいたいこれですね。サッチャーの民営化政策などの元になったのが、この本です。本の中身はちょっと極端もあるけど、フリードマンの功績は大きい。大きすぎる。例えば、変動相場制って、フリードマンがいなかったら、誰も考えつかなかったらしい。為替が固定など、今では信じられないけど、フリードマンがいなかったら、そういう世界になっていなかった。極端ではあるけれど、世の中を変えた素晴らしい経済学者何だろうなと思う。


と、ネタバレしすぎていたら、池上さんごめんなさい、なのだが、池上さんは心が広いから多分、怒らないだろうと思う。そして、私の解説などより、池上さんの解説がこの本にしっかり載っている訳で、そっちの本を買って読んだ方が数倍に面白いことを私が保証する訳です。

教養ってすごく大切だなと思う訳ですが、池上さんって本当に教養の塊ですよね、というのをものすごく思う本でした。正しいジャーナリズムって奴は、これくらいの教養がないと出来ないはずで、ジャーナリストが持っているべきが教養なんだけど、いないよなあ、そういうニュース読む人。

池上さんが、東工大の教養(リベラルアーツ)を教えているのは、実に正しい選択だと思いました。江藤淳さんを雇っていたのも東工大だし、東工大って人を見る目があるんですね、ほんとに。


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