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ポンペオの演説で思い出すこと:トランプ政権の対中国戦略は4年間一貫している

さて、ポンペオの演説である。

私からすると、あまり驚くところはない。その要旨の要旨を語るとすれば、

・今まで中国と話してきたが嘘ばっかりで「もうたくさんだ」
・よって中国と話しても時間の無駄だ。話にならない
・で、中国共産党を潰すしかない
・同盟を結んで中国をぶっ潰そう
・中国市場へのアクセスを恐れて中国との経済をシャットダウンしない国があるけど、なんだかなあ。NATOなのに香港を批判しないドイツとかどうなのよ(筆者注:但し、ドイツの名指しは避けた)
・「中国が変わらなければ、世界は安全にはならない」

まあ、トランプ政権の政策立案の中枢に入っているナヴァロさんの著作がこれであるので、まず、これを思い出した。

もう全くこの本の通りと言わざるを得ない。ポンペオの主張の大事なことは、この本に全て書いてあるのだ。中国は悪徳の限りを尽くして、チベットや香港などの平和を乱している。もちろん、世界の平和を乱している。経済も盗みと不正そのものであり、ぶっ潰すしかない。

中国経済を豊かにしたら民主主義の国になると思っていたが大間違いで、全部軍事費に突っ込んで世界を支配しようとしている。その辺りは、この本にも書いてあるとナヴァロは言っている。米国の中国政策は間違っていたんだ、とナヴァロは言っている。

トランプ政権ができた時には異端に思われいたこの考え方は、もはや米国共和党のみならず、米国民主党でも中心的になってきており、既定路線である。当の本人が中国に毒されているズブズブ・バイデン氏がなぜか大統領になってしまったらわからないが(痴呆症の気があるのにさ)、そうでもならない限り、この路線なのである。

もはや、冷戦を超えた冷戦構造であるし、Cold Warではなく、Hot Warにならないか、心配である部類である。

実際に、南シナ海においては、米国が空母2隻を導入して訓練という名の中国への武力による威嚇を初めている。

中国海南海事局は6月28日、7月1~5日に南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島の海域で軍事演習を行うと発表した。

こういう中国軍事演習の隣で米国の空母が2隻である。

ちなみに、中国の方は、できたての国産空母を南に配置している。

その背景の記事は、こちらに明るい。

後ろの方を引用させてもらうと、

第一列島線を越えなければSLBMが届かない
 その中国の戦略原潜は海南島に配備されており、バシー海峡等を抜けて太平洋で戦略パトロールを行う。現在、中国海軍の戦略原潜が搭載しているSLBMは、巨浪2(JL-2)およびその改良型であるJL-2Aである。これらの射程は6000キロメートルおよび8000キロメートルであるとされ、それぞれ094型潜水艦および094A型潜水艦に搭載される。南シナ海から撃ったのでは、米国本土をカバーできないのだ。それゆえ、中国の戦略原潜は、第一列島線を越えなければならないのである。
 米国にとって、自由に米国本土に対して核攻撃できる中国の戦略原潜の存在は許容できない。(中略)中国は、戦略原潜が米海軍の探知を回避して太平洋に出られるよう、南シナ海から米海軍の活動を排除したいと考える。
南シナ海は、米中の核抑止攻防の最前線
 南シナ海は、米国と中国が核抑止を巡って攻防を繰り広げる海域なのである。米中両国はともにエスカレーション・ラダーを降りる訳にはいかない

ということで、もはや米中海戦の始まりである。

簡単にまとめておくと、以下になろう。

中国は核抑止力の観点から、戦略原子力潜水艦から発射されるSLBMで米国を射程に捉えたい。そのために第一列島線を越える必要がある
・それを防ぐために米国は、海南島の中国基地からでた原子力潜水艦を全部追尾する体制を整えたい
・ゆえに、米国は海南島に近い南シナ海の制海権を譲るわけにはいかない
・南シナ海を巡って、米中が空母合戦を行なっている

水中の戦いという意味では、地上の火薬的なイメージや赤道近くの熱帯の高い気温のイメージとも異なり、気温ではなく水温なので、Cold Warなのかもしれないが、冷戦よりも熱い戦いになってしまいそうだ。

実際に不測の事態も起きかねない状態のようで、米国の国防長官が連絡網の整備を作りに行っているんのだから、現場海域は極めて緊張している。

偶発的な衝突があった場合、連絡網がないと戦線が拡大してしまい、米中戦争に突入してしまう。トランプ大統領などは、選挙に負けてしまうぐらいなら、米中戦争にして戦時の大統領として再選を狙うぐらいのことをしかねない。南シナ海ぐらいでちょいと海戦を起こして、中国の2隻の空母と中国が臨時でこさえた臨時の基地たちを見事に血祭りに上げるぐらいのことをすれば、大統領選挙にも有利であろうわけで、こう行った進言をする青臭い軍事士官が米国にいてもおかしくない。

さらに、コロナで拡大する米国の財政支出に関しても、米国が中国と戦争して降伏させ、その賠償金という形で中国の持つ米国債をチャラにさせ、ドルを没収するというのがありうる。この強硬策は、中国貨幣と中国経済とぶっ潰す決定打になりうるわけで、ナヴァロの戦略とは一致してしまうだろう。

それくらいの軍事的な緊張感を持ってしてこそ、米中の交渉は成り立つのかもしれないという危うさを含めて、南シナ海を最前線とする米中関係は先鋭化しており、緊張の度合いは極めて高い。

米中が開戦した場合、戦場が東シナ海ではなくて南シナ海がになるとしても、米軍基地をたくさん抱える日本としては、負担が大きそうだ。米中が南シナ海で開戦したとして、早急に米国が中国海軍を制圧できない場合(あっという間に中国の潜水艦と主要海上艦隊を全滅に近い形で壊滅させるぐらいして、明確に軍事的な抵抗力を喪失させ、国家としての戦意損失まで持っていく必要がある)、日本にある米軍基地に中国のミサイル飽和攻撃がされることは容易に想像される。下手すると核ミサイルである。核ミサイルを打ち込まれるのは、米国のロサンゼルスではなくて、横須賀や横田や沖縄であろう。

という軍事的な緊張感、安全保障上の綱渡りを続けている中、中国という市場を重視して、中国との外交を結ぼうとする日本の政治家がいるとすれば、大変にセンスが悪い。あとで蜥蜴のしっぽ切りができる自民党の一部にそういう人間がいても良いが、すぐ切れる尻尾でないと危険である。基本、日本の政権を持つ政治家は、中国との関係を断ち、米国に着く必要がある。

日本としては米国に着くという旗色を明確にして中国と接していく(厳密にいうと距離をとって、しばらくなんら話をしないという姿勢の徹底)必要がある。そうしないと、日本は相当に(命の問題として)危ないわけだ。その危機感が日本の経営者諸君にはあるのか。私は問いたい。

命あっての小銭である。命と安全保障は大事にしたい。



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