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対外純資産と外貨準備高と米国と中国(と日本)

株式投資家なので、細々と銘柄の研究をしていたりするんですが、その積み上げが企業業績であったりして、その積み上げが国家統計になったりして、金融力などにもなるので、為替やFXに興味はないのですが、やっぱり気になるのが国家統計です。

調べて見た。で、どうも現代のマクロ経済学では、現代の経済が解明できていないような気がするのは私だけでしょうか。経済学会で色々論点があるようなので、ざっと調べて見た結果の私の分析を書いてみようと思うわけです(私は経済は、大学でマクロ経済をちょっとかじっただけなので、分析が間違っているのかもしれない。間違いは、コメントで指摘くださいね!)

対外純資産ランキング

記事のグラフだけ見てくださいね。日本は、最大の対外純資産を持つ国で、次がドイツ、その次が中国とのこと。債務超過がずば抜けているのは、米国なんですよね。

経常黒字をせっせと積み上げて、預金口座にお金が入るわけですが、じゃあ、この預金(資産)をどこにおいておくのかと言うと、日本銀行券とか日銀当座預金じゃ利回りがないので、違うものに置き換えるわけです。まあ、少しは利回りがましな米国債とか、なんとかに。

経常黒字をせっせと積み上げて、預金口座にお金が溜まっているトヨタさんは、じゃあ、この預金(資産)をどこにおいておくのかと言うと、日本銀行券とか日銀当座預金じゃ利回りがないので、違うものに置き換えるわけです。まあ、少しは利回りがましな米国債とか。でも、それも「配当しろよ」と言われてしまうので、じゃあ、「メキシコに工場を立てよう」とか「インド市場に進出するか」と言って、外国の工場を買いに行くわけです。もしくは、海外の企業に投資をするとか。これが、対外直接投資。上がってきたお金を、日本に投資するんじゃなくて、海外に投資するので、日本の対外資産は増えるわけです。で、負債の方はトヨタは返しちゃうから、あんまり増えない。

普通に考えれば、米国って、借金まみれになって死にそうですが、そうじゃないのが不思議というのが、マクロ経済七不思議の一つ(うそ)

米国の対外純資産のマイナスの構造と日本

で、調べていたら、この記事が良さそうだった。

中身を私なりに解釈しますと、こうなります。

・米国の対外資産の中心は株式(エクイティ)
・米国の対外負債の中心は債務(デッド)
・エクイティからえる利回りは高いが、デッドで支払う金利は安い
・なので、(対外資産)<(対外負債)であるけど、所得収支はプラス

債権(社債や国債)発行して安い資本調達コストでじゃんじゃんお金をゲットして、儲かるところに株式で投資して、高い利回りを得ている。

なので、見た目のバランスシートが悪くても(対外純資産がマイナス=債務超過のB/S)、米国経済は回っている。

まあ、一つの企業として考えれば、米国は、B/Sには現れないインタンジブル・アセットに投資をしていて、収支はプラスってことなんじゃないかと。インターネット時代のB/Sだなあという感想です。

じゃあ、誰が金を貸しているのか、といえば、米国債を買っている人なわけで、誰かというと日本なんですよね。そうです、そうです、トヨタの貯金で米国債を買っている、あなたの銀行貯金で銀行が米国債を買っている。そのお金が、米国の資金調達な訳です。安く調達したお金で儲けているのが米国で、安くお金を貸して損をしているのが、日本企業と日本人。

ま、そういう話が、ここに書いてあるわけです。

日本人、金貸しが下手だなあという。


中国の対外純資産と外貨準備高

さて、続いて気になるのが中国な訳です。気になる論文はこちら。ちょっと古いですが、武者リサーチの武者さんのコラムを見つけました。

解説を試みる。

(1)中国がいう「外貨準備高」は日本とは構造が違う。日本の場合は米国債とか米ドルなんだけど、中国の場合は、「ドル建てで発行した中国民間企業の負債発行でゲットした外国人のドルを、中国の銀行ががめているドル」が随分混じっている。当然、中国企業が外国企業に負債を返済すると、中国の中央銀行が持つドルも減る、という構造。だから、中国の外貨準備高は多いということになっている。対外純資産が少ない割に、外貨準備高が多いけど、これ、脆いよね。

(2)中国の対外資産・負債と分けて利回りを理解する。中国民間企業は、海外投資家に高い金利を払って負債でお金を調達している。つまり、借金の金利負担は大きい。一方、中国中央銀行が持っている外貨は、米国債などで運用しているから利回りが低い。つまりは、高い金利を払って、低い金利の商品を買っているという構造。そら、中国、儲からないよねという話。所得収支が悪いのは、そういうこと。

(3)中国の対外資産を作るべくされる対外投資は大丈夫なのか。つまり、中国の対外資産の質の問題がある。ちょっと前まで中国爆買いがあったけど、中国企業による外国企業の爆買いもあった。日本でいうと、中国人目当ての家電量販店であるラオックスの買収などが当たると思うが、そういうのを高値で掴んで対外資産にしているけど、ラオックスの価値って目減りしてない?みたいな話が、いろんなところで出てくるんじゃないの?

(4)でいて、中国中央銀行は、元を守るために為替介入でドルを売っちゃってたりする。その元になる外貨準備高は、民間企業の負債でゲットしたやつだから、民間企業に海外投資かが誰も金を貸さなくなったら、外貨準備高の実質って減るんじゃない?もう一つの外貨準備高の元になる対外資産もラオックスみたいなのだとしたら、統計上の中国の外貨準備高は多くても、実質ドルが足りないみたいなことが起きるかもね

といったところで、別の記事を持ってくると、こちら。

ラオスとかコロナショック でお金がなくなっちゃった。出稼ぎの人からの仕送りがなくなってお金がない。でも、中国の一帯一路でインフラ作っちゃって、その借金は、中国政府だから、中国に借金どうしよう、「中国さん、返済をどうにかしてくんね?」とラオスが言っている、という話。

中国の対外資産は、ラオックスに加えて、支払い能力が怪しいラオスのインフラプロジェクト by 一帯一路。頼みの対外資産の質も大丈夫なんすかね。利回りの低い米国債を減らすのは良いが、made by chinaの低品質のジャンク債を世界中で作って、そっちに持ち替えているというのも、利回りは高いのかもしれないけど、ちょっと・・・という気がしますねー


中国の資本、華僑の資本が中国外に逃げてね?

中国の国際収支には、誤差脱漏が多いというのはよく言われている。SMBCさんのレポート貼っておく。

「誤差脱漏」は雑にいうと、華僑の資本が中国から逃げているということらしい。

まあ、「中国に資産置いておいても怪しいから、外国にうつそう。そうだ、日本の湾岸のタワーマンションだ」って、あれですね。

香港のお金だから、統計上どこかわからないけれど、こんな記事も気になる。

香港のファンドが、日本の不動産に8000億円投資である。香港のファンドがどこから資金を集めたのかわからないけれども、香港のファンドが、お隣の中国に投資するのではなく、日本の不動産に投資ですよ。香港のファンドって、華僑や中国人のお金がいっぱい入ってそうなイメージありますが、これ、キャピタルフライト起きてね?

で、香港の財閥は、こんな感じ。

CKハチソンという財閥を作った李嘉誠氏は引退して、香港の不動産をさっさと売り払って、英国などに資産を切り替えている。

李嘉誠氏は中国や香港の不動産を売却して、カナダやオーストラリアのインフラ事業に投資するなど、収益源の多様化を進めてきた。中国や香港の政治経済に左右されずに安定した利益を確保するためだ。
CKハチソンの本業の稼ぐ力を示すEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を分解すると、中国と香港は13%にとどまり、通信などを手掛ける欧州は55%、エネルギー子会社を持つカナダが10%に達した。港湾事業を手掛けているものの、米中の貿易が利益に与えた影響はわずか0.5%という。

華僑さんは、見事に中国・香港からも逃げている。すでに、中国と香港で13%しか資産をおいていない。そのまま、シンガポールに本社移せば、移転完了というレベルに近い。本人は、イギリスかカナダにでも移住ですかね。


中国経済はいつまでもつのか?

以前、中国市場への参入を研究したことがあるのですが、研究すればするほど、「こんな規制では参入しない方が良い」というのが私の結論であった。

今回も中国のマクロ経済や財政について調査を調べているのであるが、研究を進めれば進めるほど、中国経済がいつまでもつのか、極めて疑問である。というか、いつ、何かのショックで崩壊しても、全く不思議じゃない。

そっと中国中央銀行の金庫を開いてみたら、ドルや米国債がほとんど残ってませんでした。なんてことまで行かなくても、ドルや米国債の合計と、返すべき負債を比べたら、実質マイナスでしたということはありえるんじゃないかと思われる。

特に怪しいのが、中国の外貨準備高であり、その質である。

米中貿易摩擦と中国の景気後退の中で、中国の企業の負債を買おうという人たちは減っていると思う。その中、過去の負債の返済は続くわけで、中国企業の対外負債は減り続けるだろう。それが意味するのは、ドルの流出である。

一方、外貨準備高の中身は、米国債から「ラオックス」とか「ラオスのインフラプロジェクトの債権」に切り替えられている。中国企業に「金返せ」といったら、「ドルない」と言われて、「代わりにこれ、はい」と差し出されるものが、ラオックスとかラオスのインフラプロジェクトの権利だったりするわけで、債権投資家からしたら「そんなのいらねーからドル返せ」となる。

行き着く先は、日本のバブル崩壊と同じ、中国の金融不況であるような気がしてならないわけで、資産デフレとか起きないんですかね。強烈な、外国からの貸し剥がしが中国で発生する気がしてならないです。

一番貸し剥がすのは、華僑さんかもしれませんが。いや、彼らは、もうとっくに逃げているか。

君子危うきに近寄らず、ですな。

[追記]
もっと短絡的にいうと、上記にある武者リサーチさんのレポートで言及されていますが、中国の経済成長を貿易が牽引していたのは2008年まで。それ以降は、負債による調達が多いだけ。ただの金融バブルで、ここで、すでに中国経済は、破綻してますな。

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