書評:亡国のイージス(漫画)

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自民党の石破さんが露出してきて、再び『亡国のイージス』という作品が注目されつつあるのではないかと思って、探してみました。小説だと時間がかかりそうなので、漫画を探して、読みました。

この本、途中打ち切りだったようで、完結していません。

ネタバレ覚悟で書いてしまうと、日本のイージス艦がテロリストに乗っ取られてしまう話です。それで、米国軍が隠し持っていた化学兵器が北朝鮮の手に渡り、イージス艦と組み合わせて、日本と北朝鮮の脅威になると言う話です。

「専守防衛」と言うのは、「殴られるまでは殴り返さない」と言う事であり、自衛隊において殴られる、とは、例えば、「イージス艦の1隻を沈められ、その乗員が全部死ぬまで何もしない」ということがよくわかる本だと思います。軍事戦術的に考えた場合、実に馬鹿馬鹿しい話ではありますが、一応、殴るまでは殴らない、というのは一定の抑止力にはなるかなと思いました。但し、テロリストにはあまり有効でない気がします。

安全保障という観点で見た場合、電子化の進む現代において、一番恐ろしいのは、内偵や人の裏切りという問題です。サイバーセキュリティを含め、内部による犯行が一番怖いと言う話は、物語と言う意味でも『銀河英雄伝説』などでよく描かれており、そういう意味でこの本は、分かりやすいです。

この本を読んでの感想は、「日本の自衛隊は戦争弱い」ということです。

軍事的に世界で一番強いのはおそらく米国軍だと思いますが、彼らは歴史的に、同胞を見捨てない。米国軍の兵士を大事にしていて、決して見捨てたりしないという精神の元に軍を運用する。だから、第二次世界大戦でフィリピンを取られても、兵がなるべく死なないように豪州までひいて、相手の兵站が切れるまでひいて、万全を期してから攻撃してくる。同胞を裏切らない、と信じるから、米国軍は強いし、そういう戦略、戦術を取ってくるから強い。

一方、今の自衛隊の専守防衛は、自衛隊員の最初の一人、最初の1機、最初の1隻が犬死することを前提にして作られている。そもそも戦争だけでなく、厳しい環境下、国民や世界の人々の救助を行う自衛隊員の方々には尊敬の念しかないが、こういう戦略戦術は頂けない。いくら一人一人が強くても運用を含めた軍隊全体が弱くなるのは、昭和の戦争をやらかした日本軍となんら変わりがない用に思えました。要するに、同胞の命を軽視している。企業なら、ブラック企業の最たるものですね。

私は、「専守防衛を明確にした上で、憲法も法律もきちんと書き換え、極めて限られた日本国の領域と日本国民を守る自衛隊を持ち、運用する」ことが持論です。だから、他国の軍事力が、警告を無視して、許可無く領土領海に入ってきたら、容赦なく断固とした処分が取れるようにした方が良いと思いました。

一方、この小説に出てくる「亡国のイージス」つまり、「守る主体を失った盾」というのはどうかと思いました。主体が「国家」であるのが今イチです。守るべき主体は「日本国民」であり、その命や生活を守る為に、領土領海領空と言った「国」あると理解すべきあると思いました。国家とは国家権力であり、守る必要は無い。一方、国民は人間の集合であるからその命を守る意義がある。

まさに今の自衛隊は、災害等で困った日本国民を救助しており、離島等の緊急の福祉医療が行き届かない地域に住む人の人権を守るため、活動をしているのであります。つまり、今の自衛隊は、日本国民を立派に守っているのであり、守るべき主体等は失っていない。日本国民は存在する訳ですからね。だから、この論文に関しては、否定すれば良いと思いました。

とはいえ、この本は面白い。こういう日本の安全保障の問題を理解する上でのケーススタディとしてこの本は面白いと思いました。漫画は完結していないので、できれば、短い時間で読破できる漫画を最後まで描き、完結して欲しいと思いました。

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