投資日記: eワラントによる裁定取引

初心者に向けてと書いておきながら、技術的には最難関、そして投資ではなく投機の話から進めてみようと思う。

昨日、私がやってみた取引が、日経平均の裁定取引である。裁定取引は、アービトラージとも呼ばれており、「サヤ取り」である(ちなみに、ウォーレンバフェットは、裁定取引を「投機」と呼んでいる。これは「投資」ではない。ギャンブルの要素が大きいからである)。

使っているのは、楽天証券の口座である。

さて、意味はわからないと思うのでのちに解説を載せるが、まず、何をやったのかを先に書く。

日経平均が20,500円ぐらいの時に、以下のことをした。

(1)日経平均20,000円のコールのeワラントを買う
(2)日経平均21,000円のプットのeワラントを買う

この二つをほぼ同額で買ってみた。具体には、「U4251 eワラント日経平均コール1030 EW」と、「U4276 eワラント日経平均プット791 EW」である。eワラントの満期日は、2017年11月8日で、7,500円づつ買ってみた。金額的には、完全なるお遊びである。記録を見たら、2017年10月17日に買っていた。

購入額は、15,000円ほど。まだ満期になっていないが、現状の値段では、19,700円の価値があるそうで、このままいけば(行かないが)、4,700円ほど儲かる計算になる。11/8に満期になり、清算される。

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この裁定取引の解説をしておこうと思う。

まず、この裁定取引であるが、『バフェットからの手紙』で出てくる取引である。現状の価格に対して、ギャンブルする。バフェットがよくやるのは、会社が公開買い付けで買収される時に、その買付価格が安すぎると思えば、株式を買っておき、買付価格が上がる方に賭ける、というギャンブルである。(株式の公開買い付けで最低買取価格は保証されているようなものなので、リスクはあるが限定的なギャンブルである)

私の上記の取引もギャンブルで、「日経平均が大きく上下にぶれる」ことに賭けたのが、上記の取引である。

一つ一つの用語の解説をしていくと、

(1)日経平均20,000円のコールのeワラントを買う

日経平均の解説は省く。まず、「コールのeワラント」の説明からする。eワラントというのはオプションの一種である。オプションがなんたるのかは、『証券分析』という本に詳しいのだが、分厚くて読む気にならないだろうので説明しておくと、「証券そのものから一部の権利を切り離したもの」である。この場合、「日経平均が11/8の時点で20,000円を超えていた部分を貰える権利」である。日経平均が満期日に2万円を超えていればお金がもらえるが、2万円以下になると0円になる。

オプションというとストックオプションをよく聞く。よくあるストックオプションは、株価が一定額(面倒なので1000円とする)を超えた場合、株式を1000円で取得する権利である。例えば、株価が2000円の時にストックオプションを行使すれば、2000-1000=1000円の利益を得ることができる。株式を1000円で買った場合、株価値下がりのリスクがあるが、ストックオプションは無償でもらう場合、投資をするリスクがなく、株式が上がった時のリターンのみをもらえる。これが、オプションである。

同様に、eワラントもオプションの性格がある。上のものでいうと、日経平均が2万円からどこまで下がろうが、投資額以上の被害はない。上に上がる時は、リターンがある。

ただ、2万円を下回るとゼロ円になる。あと、満期まで持っていると値下がりする場合もある。様々なリスクがある商品であって、単体だと怖い。

そこで、私は、もう一つのeワラントを買っている。

(2)日経平均21,000円のプットのeワラントを買う

こちらは、逆に、日経平均が21,000円より低くなる方に賭けているeワラントである。満期日である11/8に、日経平均が21,000円を越えると、価値がゼロ円になる。

例えば、22000円である時は無価値。21000円である時も無価値、20500円であれば、価値が発生する。原資産数という面倒なのがあるので、金額は省くが、満期日において21,000円より安くなればなるほど価値が上がる仕組みになっている。

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さて、(1)(2)の双方を買うということは、何を意味するのかである。

(1)(2)の一方が上がれば、一方の価格が下がるようにできているのが、この組み合わせである。この組み合わせで、私は何に賭けたのか、を解説しようと思う。

日経平均が20,500で満期日まで推移した場合、きっと私は損をするようにできている。eワラントの価格を決めているのは、その証券を組成した会社であるので、それで得をするようには作っていない。だいたいにおいて、20,500円のままで推移した場合、満期には損をするようにオプション価格は設定されることが多いので、うまく行かない。ただ、(1)(2)共に、価格はつくので、購入したお金は、0円にはならない。購入したお金は満期日までに保有した場合、取り返せない。いくらかは残る。

日経平均20,900円ならどうだろう。(1)のコールは少し価格が上がるだろう。(2)のプットは価格が下がるだろう。合計すると同じく損をすると思う。

日経平均18,000円ならどうだろう。(1)のコールは無価値になり、(2)のプットの価格は上がる。合計するとおそらく得をするだろう。

日経平均22,000円ならどうだろう。現在そうなっているが、(1)のコールの価格は上がり、(2)のプットはタダ同然である。合計すると得をするだろう。

eワラントの値動きは株式よりも激しい。通常、株式トレーディング(トレーディングは投資ではなくて投機である)をして儲けようとする人は、レバレッジというものを賭ける。レバレッジというとかっこいい響きだが、要するに借金をして、倍率をあげているのである。値上がりも倍率が上がるので儲かるが、値下がりも倍率がかかるので、失うのも早い。そして、値上がりする時は上に行くが、値下がりをしていると、追証を求められて、追証を払えないと強制決済がされるので、購入に充てていたお金は容易にゼロになる。株式が暴落すると、資産を失うのが、レバレッジを活用した投機の特徴である。

このレバレッジと同じ効果を得ることができるのが、eワラントの実行ギアリングである。eワラントは、価値がゼロになるリスクをとり、さらに高い取引コストを払うことで、激しい値動きを得ているオプション商品である。これを信用取引を使わずに買うことをすれば、借金は必要なく激しい値動きを享受することができる。

通常、プットの取引は、信用取引になる。1000円の「信用売り」をして、その株価が1000万円になった場合、買い戻して、999万9000円を支払う必要が出てくる。経済力がない人の場合、1000円の信用売りで破産することがありうる。

一方、オプション取引は、リスクが限定的である。先ほどの日経平均の取引の場合、(2)は日経平均が21000円を上回るとゼロ円になるが、借金を追うことはない。(1)も(2)も、リスクは、購入額までである。そこが、eワラントなどのオプションを通じて投機をする場合と、信用取引で投機をする場合の違いである。

さて、解説が長くなったが、私は、何に賭けたのかというと、「相場が荒れること」に賭けたのである。専門用語で言えば、「ボラティリティが高くなることに賭けた」のである。

そして、プット、コールの双方を、購入時点の日経平均を挟んで買うことで、手持ちの資金がゼロになることを防いだ。その上で、相場が荒れた際に利益を取れるような手法をとったのである。

どうして相場が荒れるのに賭けたかというと、衆議院総選挙があるのと、北朝鮮で問題が起きそうだったのと、トランプ大統領の来日や訪中があって、国際情勢が荒れそうだと感じたからである。株式市場が上下のどちらに触れるのか、私にはわからなかったが、荒れると思ったので、やってみた。ここが私のギャンブルである。

これはただのギャンブルなので、ギャンブルで全てのお金を張って、失うのは馬鹿馬鹿しい。まずは、投機額を小さくした。次に、裁定取引を使うことで、投機額がゼロになるのを防いだ。手法でリスクを限定的にしたのである。

今回賭けていたのは、「ボラティリティが高くなること」だから、例えば、ボラティリティに連動する証券を買っても、同じ効果は得られたのだろう。むしろそちらの方が取引コストは安かったのかもしれないことを補足しておく。

ということで、裁定取引の話でした。

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通常裁定取引は、プロしかできないような印象があるが、少額でやろうと思えば、(知識があれば)素人でも限定したリスクの中でできるという話を書こうと思って書いてみた。eワラントを使った裁定取引は、ウェブでちょっと調べてみたけれども、誰も書いていない雰囲気だったので。

また、今回の場合、結果論だけかけば、「コールだけを買ったら大儲け」「相場感が定まったところでプットを売却すればもっと儲かった」ことになるとは思いますが、私はあえてそれをしなかった。それはただのトレーディングであって、裁定取引ではない。そういうことは、バフェットはやらない。。「値動きを他人よりうまく読める」という自惚れは、私はとらない。そして、11/8までに暴落する可能性がなくなった訳ではないのであるし。

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実際買う時は、1ワラントあたりの原資産数などに気をつける必要がある。アクセス数があれば、この辺りの実務的な話も書いてみようと思う。excelやgoogle spread sheetがあれば計算できるレベルであるので。

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ちなみに、今回はこの取引がうまく行ったが、通常は、株式相場のボラティリティが小さくなるのが順目だ。通常この取引は通常は損をする。

平常時、明らかに満期でゼロ円になるコールやプットを信用売りしていくプロのプレイヤーがいるはずで、この人たちは勝率が大変高いと思う。ただ、相場が荒れた時に大怪我する可能性もある取引であり、今回大怪我するプロが多いんじゃないかと思う。

<追記>
eワラントが楽天証券から2018年3月31日を持ってなくなってた。eワラントを組成する会社の株主がわかったかららしい。なんだかなあ・・・

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