書評:『「全世界史」講義 I/II』(出口 治明)

読むのが、二度目です。この本は、何度読んでも良いなあと。まあ、私の世界史記憶力がない(というか、理系の勉強をしていたので、世界史をやった記憶があまり残っていないから、という話かもしれません)

私は、地球儀とかgoogle mapsなどが好きです。ふと、google mapsで黒海の入り口を調べ見たり、子供のためにに地球儀ビーチボールを大量に買って見たりします(すぐ空気が抜けて壊れるので)。そのような地球儀にストーリーを吹き込んでくれるのが、歴史であったりします。全世界同時にどのように人類が動いてきたのかというダイナミクスをこの本は教えてくれます。私が受けた世界史の授業では、そういうのはありませんでした。

20世紀、21世紀に生きていると、欧州・米国のいわゆるWestern Countriesが最先端を進んできたような感覚にとらわれがちですが、実際この本で世界史を紐解いてみると、全然そういうことはありません。人間はアフリカで起きて、文明が起きたのは、イラクあたりです。その後、今のシリアあたりが一番豊か。欧州あたりはかなり蛮族の地でありました。それ以外に、インドと中国というのに文明があった(南米もあったかもしれぬが、記録がないので、歴史がない)。

実際、秦の始皇帝ぐらいの時代をみると、中国の方が文明が進んでいるところもあるし、国の作り方も進んでいた。科挙という官僚制度などが進んだのは中国で、中東と中国において文明が進んでいたことがわかる。欧州が先進国に飛び出てきたのは、18世紀ぐらいであって、たかだかこの数百年にすぎない。米国の活躍などは、20世紀ぐらいのもので、5000年を振り返ると、国の趨勢とかバランスというものは、常に動いていることがわかる。

最初は、中東で文化が起きて、しばらくユーラシア大陸の真ん中の騎馬民族(ソ連であってロシアでないところ+モンゴル)が活躍し他のがわかる。それが、欧州に流れて、歴史が変わる。騎馬に勝つのは、銃兵を使ったオスマントルコと織田信長という訳で、そのあと、戦車・飛行機と移り変わる。

2回目に読んで印象に残ったのは、産業革命の大英帝国である。大英帝国は、インドが欲しくてインドに集中したのではなく、本当は香辛料のインドネシアとかが欲しかったけれども、ネーデルランドに勝てないから諦めて、インドに集中した。インドは、綿製品で儲かっていたのが羨ましくて、その産業を、蒸気機関で効率をあげて、イギリスに奪い取った。綿花などの栽培をインドに押し付けて、インドの食料自給率も下げて、食料輸入国に落ちぶらせた。インドはそこそこのGDP持っていたんだけど、搾り取って潰したのはイギリスだということと、それで、だんだんと大英帝国は沈んだということ。それから、産業革命という生産性革命が、インドという人でやっていた産業の綿繊維産業を駆逐して、イギリスの工場に豊かさをもたらせたこと。また、綿製品は昔から最強の衣類であって、一番豊かな産業をイギリスが技術で奪い取ったことに、大変強い印象を持った。

2冊目の方は、二度の世界大戦を通じた出口さんの理想主義の嫌いさがよくわかり、実績と検証を積み重ねていくのが保守主義というのがわかる。まあ、昨今のウェブの作りなどは、保守主義何だろうなと思いながら、読ませていただきました。

最近、漫画でもキングダムとか、ヒストリエとか、アルスラーン戦記とか好きなので、これ、いつの時代何だろうなと思って読んでいるのですが、この全世界史をみると、それが整理できて非常にいいと思います。

歴史漫画と全世界史を広めると、もう少し日本の世界史教育もよくなって、教養も広がるんじゃないかと思いつつ、まあ、漫画は漫画で史実と違うので、その辺を広く読んでみるのが楽しみになって、今年は塩野七生さんの本を読んでみようと思ったら、小泉孝太郎さんが読んでるらしいので、私もそこそこいけてるのかもしれないなと思う、2018年です。


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