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書評:『昨日までの世界(下)』(ジャレド・ダイアモンド) その4:肥満の法則

前から続く

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塩、砂糖、脂肪、怠惰

これは、この本の章のタイトルである。通常は、本の内容を振り返って、その感想を書くのだが、今回は、結論から先に書いてみようと思う。なお、話題の性質上、三流の怪しいインチキ広告のような内容になってしまうかもしれないが、著者のジャレドダイアモンドさんは作家であるだけでなく、医者なので、その辺は原典をちゃんと当たってくださいとしか言いようがない。

生活が近代化すると、塩が手に入る。塩をたくさんとると高血圧になる。喉も渇くので、コカコーラのような砂糖水をたくさん飲む。砂糖をたくさん飲むと脂肪がつく。デブになって、糖尿病になる。

こういう構造であるらしい。

だから、肥満を取り除くには、まず、塩を減らせとジャレド・ダイアモンドさんは言っている。(但し、主にダイアモンドさんが話している相手は、米国人である。あの人たち、なんでも塩振るからね。昔のなんでも醤油をかける日本人のようなもの。飲み物といえば、コーラというのも、飲み物といえば緑茶という日本人とは大きく異なる)

塩が高血圧を作る

600万年前にホモ・サピエンスが出てきて、599万年は狩猟採取民として生きてきた。狩猟採取する人たちは、海の近くに住んでいた人たちばかりではないので、塩をあんまり取らずに生きていたそうだ。ブラジルのヤマノミ族だと1日あたり50mg。アメリカ人はこの200倍(一日10g)とっているそうだ。

当然、人間の体は、ヤマノミ族のように最適化されているので、塩分が多すぎる。塩分が多いと、高血圧になるのは医学的に証明されているらしい。悪名高き昔の秋田県がそうで、昭和の時代は、漬物だなんだで塩分が多い食事をとっていたから、年をとるとほぼ脳溢血で死んでしまう。みんな高血圧持ちである。

塩を減らせば、高血圧はへるらしい。

ちなみに、米国人の食生活で塩がひどいのは、ハンバーガーとフライドポテトの塩。ポテトチップスなどもしょっぱいよね。イタリア料理、スペイン料理などがしょっぱくない食事として進められている。うーん、寿司がヘルシーフードになる米国ですからなあ・・・

また、加工食品にも塩が多い。まあ、塩が多い方が中毒性があるから、味を濃くしたくなる。家で食事を作る方が塩分としては、随分とましなんだそうで、調理をしなくなった家庭というのも気をつける必要があるかもしれない。

しょっぱいものを食べると、飲み物が欲しくなり、糖分をとるからデブになると、ジャレドさんの話は続くのだが、まあ、「お茶飲めばいいんじゃないの」と日本人なら思ってしまう。


砂糖と炭水化物がデブを作る

スーパーマーケットで売っている食材には、砂糖や炭水化物がいっぱいである。狩猟搾取生活をしていたときに食べているものにおける炭水化物や糖分の比率は、15%-55%なのだが、パスタだお菓子だとなると、71-95%は糖分と炭水化物であるということで、こちらの食生活がデブを作るのは間違いがないわけである。

米国でいうと、1700年ごろの英国植民地のアメリカでは、年間1.8kgの砂糖摂取量だったものが、21世紀では、90kg以上だそうで、そりゃ、デブるだろ、ということになる。

糖尿病(以下、2型糖尿病をさす)にもなるわけだが、しばらく炭水化物・糖分漬けになっている西洋人は、糖尿病で死ぬ人は死んでいるから、糖尿病になりにくい体質の人が生き残っている分、ひどい食生活をしても糖尿病の比率はさほど高くない。

ところが、中国やインドなど新興国はそうではないので、昔ながらの食生活から、スーパーマーケット的生活に変わると、一気に肥満になり、糖尿病になるということらしい。鉱物資源などで一気に部族社会の生活から、豊かなスーパーマーケット生活になった島国(ナウル島)では、とんでもない比率の人(成人の1/3)が糖尿病になってしまって、西欧諸国よりひどい状態になってしまうそうだ。それは、(糖尿病耐性の低い)普通の人が、砂糖づけの食事をとるからであるそうだ。

そもそも、数年に一度が飢餓がくるような食生活を送っていた伝統社会の人たちからすると、糖分や炭水化物を効率的に脂肪に変えられる人が生き残ってきたわけだが、そこに飢餓のない飽食の世界がくるから病気になる。

完全に食生活の問題なのである。

ちなみに、死ぬ原因の違い

伝統的社会では、感染症で死ぬ人が多い。現代社会で感染症で死ぬひとは例外的な疫病以外には少ない。その代わり慢性疾患が多い。その代表が糖尿病であり、糖尿病は日野原さんがいう通り、生活習慣病である。

じゃあ、狩猟採取生活が良いのかというと、そんなことはない。盲腸で簡単に死んでしまうような社会や、骨折で障害が残る社会、近隣部族との武力闘争が頻発する社会より、近代社会の方が住みやすい。

であるから、ジャレド・ダイアモンドさんは、狩猟採取民族の生活の良いところだけを取り込んで、暮らしてみたらどうかをいうのである。



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