書評:『アメリカに敗れ去る中国 安倍外交の危機』(日高義樹)

米国共和党や米海軍に詳しい日高さんの最新本(2018年秋現在)。先に言っておくと、「中国終わった」というのが、感想(「もうすぐ終わりそう」ではなく、「お前はもう、死んでいる」であった)。

中国の軍事的脅威というがほぼ米国からするとなくて、巡航ミサイルをたくさん搭載した原子力潜水艦からミサイルを打ちまくると、あの岩礁にできた中国の基地は全部海の藻屑になるらしい。あれは、軍事的脅威ではなくて、ただのハリボテ、というのが米国海軍の認識。

この前、台湾海峡に米国のイージス艦2艘が通った。これでほぼ、中国沿岸の電子戦情報は取れており、中国の軍事情報は筒抜け。中国がミサイルで台湾を威そうにも、台湾から三峡ダムにミサイルを打ち込むと中国大水害に見舞われるという抑止力があるらしく、軍事的には脅威でもなんでもないらしい。

経済面では、製造業2025というのをトランプは完全に叩きに行っていて、2018年に中国の国営企業(資本25%以上)が米国で営業できなくなった。これがなぜか報道されていないのは、中国マネーに染まった米国民主党政治家とマスコミの影響とのこと。米国民主党も、日本の共産党や社会党のようなものだろう。

(ちなみに、米国のシンクタンクが中国マネーに汚染されているのは知っていたが、SWIFTの金の流れを追った結果が、個人的に衝撃だった。汚染先は、ジョン・ホプキンズ研究所、CSIS、ブルッキングス研究所なども含まれ、他には、アトランティック評議会、center for american progress, East West Institute, カーター・センターが、中国マネーに汚染されているとのこと)

少しでも、中国市場への参入を真面目に考えたことがある人なら知っていると思うが、中国という国の参入障壁というか、規制は公正から程遠い、ひどいものである。中国政府からの免許がないと何もできない。その免許の配布基準も不明確で、役人の気分で勝手に取り消される。自由貿易の影もなく、合弁を強要してる(中国市場の参入の検討をしたことがあるのだが、「これなら参入しないほうがまし」という意見を持つようになった)。企業の技術や軍事技術をサイバーテロで盗んでいる。国営企業に税金を放り込んで、ダンピングして、外貨を稼いでいるのが中国の商売で、その上がりは、せっせと軍事費につぎ込んで、チベットやモンゴルや南シナ海、東シナ海を軍事占領して、領土を広げる時代遅れの帝国主義国が、中国である。そして、現地の住民を、AIを用いた監視社会で虐待、虐殺している。冗談みたいな本当の話である。

トランプ大統領は、これをやめさせるために、表向きには貿易収支の均衡を持ち出して、習近平の前で経済官僚が喧嘩させて見るなど、相手を翻弄しつつ、着実に中国の収入を奪い、中国の軍事化阻止に向かっている。目的は、今の中国の国体の崩壊である。

中国経済が弱っても、米国の経済は強く、資源もあるので、米国経済は困らない。勇気を持って中国経済を切ったトランプのおかげで、米国の経済は強いと日高氏は言う。

また、ドイツも問題だ。クソミソのスペインやギリシアを抱えることで、ドイツの採用するユーロは無駄に安い。この通貨ダンピングによる輸出と、中国とべったりの関係で、近年のドイツ経済は発展してきたわけだ。このドイツと中国の関係が、インド・南シナ海・東アジアなどのアジア・極東の平和を乱してきた。トランプ大統領の米国は、欧州を関税でねじ伏せて、ユーロ諸国は白旗をあげた。

中国が今までやっていたことは、以下である。
(1)めちゃくちゃな規制とサイバーテロで、日米欧企業の技術を盗む
(2)国有企業に補助金をつけ、盗んだ技術を活用して物を作る
(3)上記の製品を、ダンピングした安値で外国に売って外貨をえる
(4)上がったドルで、米国債を買い、人民元を安値に維持
(5)世界GDP No2になった経済力で、軍事力を高める
(6)軍事力で、周辺諸国を侵略し、軍事力で押さえつける

トランプ大統領は、貿易収支でいちゃもんをつけて、(1)の規制を変更させ、(5)の貿易黒字を減らして、(6)の軍事力強化を止めにいった。中国は貿易で上がってきたお金を国内に投資しないので、一人当たりのGDPは上がらず、国内消費の比率は少なく、輸出が落ちると、中国経済が死ぬ。

世間知らずの習近平は、Plan Bもないまま、米国に喧嘩を売った。トランプに輸出を絞られ、無策。まさに、机上の空論。砂上の楼閣。坊ちゃん育ちの官僚主義が陥りそうな罠である。

次に中国で起こるのは、内乱と言う。

中国の陸軍空軍の8割が国内の反乱鎮圧に向いていて、外国には向けられないらしい。金がなくなると、軍隊が維持できなくなる。軍隊は、運用能力や、後方の情報もがなく、ハードウェアだけのステレス戦闘機と空母は、張り子の虎なのだが、しっかり運用保守費用はかかり、中国の台所事情は苦しくなる一方。資源価格が上がるインフレが起きると物価も上がり、国民の不満も高まる。これでは、習近平は持たない。

憲法を変えて、皇帝ばりの権力にした習近平には後継者を決める方法がなく、権力争いの内乱が始まることが間違いないとのこと。

アジア各国の海軍の中国包囲網も縮まり、インド、インドネシア・ベトナム、オーストラリア、マレーシア、シンガポール、日本、韓国、フィリピンと海軍力の強化が進んでおり、これらを合計した海軍戦力は、中国を凌駕するとのこと。

このように、中国崩壊が間違いなく、「米国の敵は中国」とやっている時代に、安倍首相は何をやっているのかと言うと、「中国と自由貿易、うんたかかんたら」である。完全にボケていると、日高さんは言う。

米国の敵ははっきりと中国であり、トランプ大統領は、尖閣諸島などに不当に侵入する暴力団たる中国の行動をやめさせようとしているのに、同盟国の日本の首相が、小金に目が眩んで中国とつるもうとしている。米国の共和党幹部は「安倍は何やってんだ」となっているらしい。李首相が日本にきていた時に、「尖閣に侵攻してくんじゃねーよ」「不公正な貿易ルールやめろよ。なんだよ、あのめちゃくちゃな免許」と、ビシッと言うチャンスなのに、中国経済との距離を考えて、中国に甘い顔をしてしまったのが、安倍首相である。平和ボケと、日高さんは言う。中国経済が崩壊するんだから、中国経済の重要度も下がるということがわかっていない。

この本が100%正しいのかはわからないが(何しろ、日高さんは米国暮らしが長く、米国共和党と米国海軍の人といったほうがいいような人だから)、どうも米国の主張として、共和党の主張は正しいと思う。

私個人の意見としては、中国の非道はやめさせるべきであると思うので、日本は、中国の卑劣な行いをやめさせるべく行動しているトランプ大統領の米国に理解を示し、中国という隣国の経済を、普通の自由貿易にさせるべく、一緒に圧力をかけるべきだと思う。

どこぞの中西さんという経団連の会長が、時代を読み違えて、「今こそ、中国と仲良くすべきだ」などと安倍首相にけしかけているかも知れないが、これは大きな間違いで、(中国市場に軸足を置く日立建機や日立エレベーターなどの小金欲しさに、)日本を売ってはいけない。日本は、米国共和党とともに、中国共産党を崩壊させ、抑圧されている住民を解放した上で、経済の協力を取り付けたほうが良いだろう。そうすれば、日本の海軍にかける軍事費用も抑えられて、中長期的には日本経済にもいいはずだ。

平和という観点においても、米中貿易戦争という経済戦争で勝負がつけば、米中は軍事的な戦争にはならない。これで決着がつかないと、逆に軍事的な戦争になり、地政学上、必ず日本は戦争に巻き込まれる(そして、得をするのは英国・欧州となる)。なので、米中貿易戦争で勝負が着くように、日本は、中国との経済的な関係を断ち切り、インド・インドネシア・ベトナム・オーストラリア・フィリピンといったTPPな国々に資本を投下して、中国の工場をどんどんこれらの国に移転すべきなのである。

その上で、現在の共産党習近平の独裁国家を崩壊させた上で、開かれた民主主義国である新しい中国を作らせた上で、経済の相互発展を目指すべきである。また、チベットやモンゴルの独立も進めるべきである。

八方美人な外交の行く末が、現在の韓国になることは見えている。ああいうひどい国難にならないためにも、日本の「米国側につく」という外交方針はしっかりする必要があるし、日本の経済界は、中国の小金に固執することなく、アジアの発展にコミットして、頑張っていく必要があるのだと思う。

日本の製造業が、中国に工場を作ってしまったのはしょうがないが、それらは綺麗さっぱり諦めて、次の国にいって生産を立ち上げるべきだ。中国市場を取るのは、中国共産党が崩壊してからで良い。

というわけで、中国どうしよっかなー、と思っている経営者諸氏には、ぜひ、この本を読んでもらいたいと思う次第である(一日あればすぐ読める程度の本である)。

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