書評:『再び「大黒柱に車をつける」とき』(岡田 卓也)

1996年の本なのですが、ふと読みたくなって、再び読んでみました。戦後の昭和において、小売業はベンチャービジネスで、特に、チェーンストアを作っていくというのは時代の潮流であったようです。今のインターネットによる変化には遠く及びませんが、変化の激しい小売業界の中で、どう岡田卓也さんが日本一の流通グループを作ってきたのかが、岡田家の家訓とともにわかります。また、当時製造業にバカにされていた小売業だそうで、小売業の社会的な地位はとても低かったそうです。今とは違いますが、そういうロクでもない業界を確信してきたのが岡田さんをはじめとした小売業の偉人たちだと思います。そういった意味では、この本は、私の好きな本の一つです。

ニトリの似鳥さんも世の中を非常によくみている方ですが(チェーンストアとしては同根)、岡田卓也さんが本当に幅広く世界の世の中をみながら、自社グループの多角化を進めていったことがよくわかります。イオンのショッピングセンターが日本(やアジア)を席巻しているここ数年ではありますが、その戦略はすでに1996年には完成の域に達しており、1990年ぐらいには着手していることがわかります。また、アジア展開についても同様です。20年たった今みてみると、正確に世の中の変化を読んでいたことがわかります。

また、M&Aにも、外国企業のM&Aにも積極的な岡田卓也さんですが、その前に業務提携を含め、多くの米国人と仲良くなっており、個人的な関係を築いていたことがこの本からよくわかります。つくづく、実業というものは、人間関係であるのだなと思います。

岡田卓也さんの経営の考え方は、連邦出会って、連結経営ではありません。親子の重複上場をさせて、早く独立した存在になることを子会社に求める。連結会計の観点からすると、効率的ではないのかもしれませんが、ウォーレンバフェットも同じようなガバナンスをしている(子会社完全独立という面で)ことや、それを真似した元グーグルのアルファベット社を考える時、岡田卓也さんの慧眼には恐れがいる限りです。やはり、親に頼っているようでは、子供はダメだということだと思いますし、親があーだこーだ言い続けると、才能ある子供を潰してもらうということだと思います。逆に、才能のない子供は、小さい会社を持たせて倒産させれば被害が少ないということだと思います(大塚家具も会社分けておけばよかったですね。きっと、最初に潰したと思うので)。真の親子関係という意味でも、親としての岡田卓也さんは、同じ子供を持つ親として尊敬に値します。

20年前の小売業界を知る人が今読むには面白い本で、これを小売業じゃない分野に適用した場合、役に立つ本なのではないかと思っております。

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