書評:『アメリカは中国を破産させる』(日高義樹)

最近の日高さんの本は、本が売れていないのか、高齢のため本人がボケてしまってきているのか、タイトルと文章の中身が違いすぎて非常によくないと思う。ちなみに、本のタイトルだけでなく、各章の見出しも言葉が強すぎて、結論や論理的な中身が従っていないことが多すぎるのでちょっと辟易しだしている。まあ、中身はよくわかるので、変に煽った題名だけをちゃんと中身に沿ったものに変えれば良いと思うのだが。誰が見出しふってんだろうか。論旨についてはよく分かるのですが。

「朝鮮戦争は終わらない」の内容は、

・朝鮮半島に主権はない
・北朝鮮はロシアと中国のもの、韓国は米国のものだ
・米中の覇権争いや、米露の対立がある限り、朝鮮戦争を終わりません

と言っている。

そうは問屋が卸しません。文在寅政権がボケているのは、誰でもわかる。米国もロシアもそれを許さない。「まあ、そうだろうね」という内容。ちなみに、米国は長らく朝鮮半島に関する戦略を持っていないそうです。どうでもいいんでしょうね。


「中国を破産させる」の内容は、

・米国からの技術の盗用や輸出が止まった
・中国は異民族の反乱が始まって大変
・香港もニッチもサッチも行かなくなった
・新シルクロード構想は破綻している
 (特に海のシルクルードは軍事的に言って具現性がなく絵に描いた餅)
・中国は米国への輸出パワーではない
 (すでに3位の国に落ちている)

という話。

「中国経済は米国の締め付けで自滅するだろう」というのおおよその内容で、よくわかるのだが、「米国が破産させる」という強硬な内容ではない。「米国が中国からサッと手を引いて、圧力をかければ、中国は自滅するだろう」ぐらいの内容である。習近平の政策がうまく行かないことだけは良く分かった。


「アメリカは中東から撤退する」の内容は、

・米国はサウジの国防で手抜きをして、サウジの石油施設はやられた
・トランプは戦争する気がない
・石油はもはや米国でも取れるので、石油の価格は上がらなかった
・中東の石油が届かなくなって困るのは、日本と中国と韓国だけ、

という内容。


「欧米同盟体制が終焉する」の内容は、

・EU自体が軍事面から見ると幻でなんの実体もない。ドイツも自分で安全保障できない国なのに、すっかりボケちゃって、経済さえ良ければ主権があると思っているけど、米国なしには自分守れない。それに気づいていないマヌケな国家である。EUが自分で国を守らないし、米国が守ってくれて当たり前と思っていてカネも出さないから、トランプは愛想をつかして撤退するかも。そうしたら、EUはロシアに占領されるね、

という内容。


「戦うアメリカが消えた」の内容は、

・もともと米国というのは軍事力を行使する前提で外交をしてパクス・アメリカーナを作ってきた国
・最近米国は、もう戦争が嫌になっている
・さらに、女性政治家が増えてきて厭戦的で、戦わなくなった
・結果、米国の外交能力が落ち、世界の平和は守らない

という内容。納得。アメリカ大陸だけの孤立主義にまた戻りそうな予感。米国は、アメリカ大陸+太平洋ぐらいでいいと思っている節があると思う。


「日米安保は消滅する」の内容は、

・もともと日本の米軍基地は米国の植民地
・植民地が独立した歴史のある米国はそう言いたくないけど、日本の米軍基地に日本の主権はないので、実質は植民地
・日本の政治家は、「経済大国」なんて胸を張っているけど、全くのあんぽんたんで、軍事力を持ち安全保障を自分でできない国は、そもそも主権があるとは言えないし、軍事力をベースにしない外交など効果が全くない
・だから、イランで日本のタンカーがやられた。軍事力のない日本に仲介外交などできるわけないじゃん、馬鹿

という話。

米中が対立する中、経済だどうだ、米中をとりもつとか言っていると、米国が怒って、米軍を全部引き上げてしまう。現に、米国共和党には、そういう話が出ており、日本は、安全保障を米国に頼るのであれば、中国との距離を詰めているのは、アホでしかない、という話でした。


感想。

日本には主権がないのがよくわかって、納得した。結局、国家としてやるべきことをやっていない(安全保障をやっていない=独立した軍事力を持っていない)。米国に庇護されているのに、米国ではなく中国に近寄るのは非常に危険で馬鹿げた話で、すぐやめるべきだと思った。金の匂いがするから、中国に寄っていくのは、本当に危ないし、馬鹿げた戦略だと思う。

中期的(5−10年)に見ると、日本は国防を自分でやらなきゃならない。同盟関係を含め、軍備を自国で整える必要がある。日本には、金がうなるほどあるわけでもないから、コスト効率の良い核ミサイル防衛は当然として、攻撃型潜水艦(核ミサイル用、巡航ミサイル用)、ステルス飛行機、軽空母、などを、同盟などを駆使し、安定した立場で開発・運用する能力を持つ必要がある。そうしないと、米国の方針に振り回されて、日本の安全は危ないと強く思いました。

今まで米国が守ってくれていたから、これからも守ってくれるのが当たり前という考え方は、大学生が親の仕送りがあるのが当たり前だと思って、卒業後も自分で働こうとしない態度のようなものであって、実に幼稚であると言わざるを得ない。

実際、トランプは経済人なので、お金がかかる戦争をしない。その方針は、中国がヤクザなことをしても、北朝鮮が核ミサイルを実験しても、米国は戦争をしないということを意味しており、中国も北朝鮮も基本的に好き勝手なことをし出すわけだ。日本は日本で国防しないと、隣国に何されるかわからない。

そして、たまたまトランプだからという話ではなく、米国全体が戦争する気もないし、世界の平和を守るつもりもないので、この危なっかしい状況はずーと続くと想定すべきである。

本当の安定と安心というものを日本は目指さねばならないし、米国が東アジアから腰が引けていて、隣に中国がある現実を直視して、どこと同盟して、どう日本の安全を確保するのか、しっかり考えていかないといけないと思った一冊でありました。

三菱重工を潰しちゃまずいなあ。

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