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書評:『米中海戦はもう始まっている』 (マイケル ファベイ,赤根 洋子)

まあ、この本を1冊読むだけで、オバマ大統領が世界の平和を壊したということが良く理解できる。ノーベル平和賞をとったオバマ大統領であるが、少なくとも、日本の平和はめちゃくちゃに壊してくれたことが良くわかると思う。この本を読むと、いかにして、オバマが日本の平和を壊して中国の脅威を増長したいのかが良くわかる。

海と空の無法者である中国軍

原著は、"Crashback"という。Crashbackというのは、船舶の緊急停止行動のことで、逆にスクリューを回転させ船を止める。走っている車の中で、いきなりバックギアを入れるような行為だから、船も痛むとうことで、通常、これをやってはならない。米海軍では、クラッシュバックは理由はどうあれ、艦長の責任になる。

話は、カウペンス号の事件から始まる。カウペンスというが、中国空母を偵察しているときに、中国の船が近づいてきて、衝突行為を仕掛けてきた。時は、オバマ大統領。「相手と紛争にならないようにしつつ、威嚇せよ」という、自衛隊に対する司令のような訳のわからん司令が政治家よりカウペンス号に出ており、現場の海軍の艦長が困るという構図。結局、当たれば相手の船が壊れるだけだったが、カウペンス号の艦長は曖昧な命令にしたがって判断を下し、船を緊急停止させる。

海におけるルール、飛行機におけるルールというのは、軍隊同士にもある。あるのだが、中国はそれを守らない。

時の大統領はオバマ大統領。21世紀の歴代大統領が、オバマまで対中国政策を失敗していたのだが、その実情がこの本には良く書かれている。中国をゲームに引き込む、として、中国をハワイの同盟国の演習であるリムパックに呼んだり、海軍大将同士でテレビ会議を繰り返したりして、米国は中国海軍を信じようとしてきたが、どれも無駄だった。

中国の論理は、「お前はやっちゃダメ、俺はやっていい」という訳のわからないもので、嘘はつくし、グダグダうるさいし、危ないことばかりするので、まともに話にならない。そういう相手であることは、日本人なら誰でも知っており、中国共産党が信用に値しないことは理解しているのだが、ちょっと前の米国はそうでなかったという話が良くわかる。

海南島事件では、米国の哨戒機に中国のオンボロ戦闘機が近づいてきて、体当たりになった。中国の戦闘機はぶっ壊れて大破。パイロットは死亡。米国の哨戒機が生き残る道は、海南島への着陸しかなかったので、機密書類を廃棄した上で、パイロットたちはその道を選ぶ。米中は戦争中でもないのに、米国の搭乗者たちは捕虜として扱われた。

オバマ大統領は、リムパックというハワイ沖でやる合同演習になぜか中国を呼んだ。呼んだのだけど、なぜかリムパックで合同演習しているときに、中国のスパイ艦(しかも呼んでいないやつ)が、米国空母の近くに寄ってきてスパイ行動をする。

などなど、要するに中国の礼儀はなっていないのだ。

あとは、EEZ問題。領海には入らないものの、EEZの中であっても航行の自由は認められているのに、中国は他国の軍艦が自分のEEZに入ると領海のように扱って追い払う。だけど、中国は、ハワイの演習のように相手のEEZには入れると権利を主張する。

挙げ句の果てに、海軍大将同士の会話でも「あれは現場のパイロットが独断でやった」とか「あれは俺の指示じゃない」とか訳のわからない言い訳をする。

親中国だったグリナード大将などは、(マヌケにも)その中国と(オバマ大統領の命令で)仲良くしようとし続けて、騙し続けられた。ハリス海軍大将はそこまでマヌケではないので、色々作戦を実行しようとしたが、腑抜けのオバマ大統領の政策で、骨抜きにされていた。

万事この通りで、大人同士の話し合いができない国が中国なのである。まあ、良識がないというか、ルールを守れないというか、話しても無駄というか、外交ができない国なのである。

中国の脅威

という、やりたい放題の無法者中国であるが、その経済の成長に合わせて、軍事力を強化している。

ここでも、米国民主党およびオバマ大統領の失策は米海軍の破壊に繋がっている。

米国は、巡航ミサイルが弱いのだ。

海軍・空軍のミサイルの射程において、米国は中国に負けていた。なにせ、先に長距離射程のミサイルを打たれてしまうのでは、話にならない。これは、冷戦後、米国が巡航ミサイルの研究をしてこなかったことが大きいようだ。

また、最後の巻末に出てくるが、米海軍の予算をオバマ大統領に削られ続け、300隻を切る艦艇しかない。WW2後の、唯一の海軍米国という状況は特殊にしても、すでにスーパーパワーは衰えており、危ないというのが、オバマ政権の末期であったらしい。

海軍には二つの予算があったらしく、本当に国防に必要な海軍予算と、オバマ政権によって、通るギリギリの予算出そうだ。

新しい空母の建設も予算に苦労したようだが、これ、あんまり意味がない。最新式の空母は、人がかからないらしく、6000人で動かすところを最新式は、4600人で動かせるから、新しい空母の方が、運用費が安く済む。なので、古い空母は建設費に金がかかっても運用費が下がるので新しいのに変えた方が良いのに、そのお金が出ない。まるで、白熱電球をLEDに交換しない貧乏人(そして電気代は高い)のようなものであったようだ。

この本の最後は、トランプ大統領の出現で終わっている。トランプ大統領が本当に欲しい方の海軍の予算はいくらなんだ?と聞いてくるところで、この本は終わっている。

感想

トランプ政権が終わるこの時に、私はこの本を読んでいる。つまりは、4年遅れて読んでいるということだ。

つくづく思うのだが、オバマ大統領は地球平和のために、史上最悪の大統領であった。世界の平和を支えていた米国海軍の予算と力を減らし、世界最悪の無法者である中国共産党と中国海軍の拡大を招き、尖閣諸島であれ、南シナ海であれ、中国の侵略を許した。そこに対して、オバマ大統領がしていたことといえば、ヘラヘラしていたことだけだ。

おそらく、この本が書かれていた頃が最悪で、トランプ大統領の4年間で少しは米国海軍もましになったのだろう。

が、米国海軍力の相対的な低下は否めないし、米国のミサイル技術もさほど優位ではなさそうだ。防衛予算の少なく、実戦経験もない日本など、中国の大量のミサイルと大量の艦艇と戦えば、善戦はするものの、中期的には、ひとたまりもないだろう。

トランプ大統領で日本の国防も一息はつけたのかもしれないが、次にはまた米国は民主党のバイデン政権である。

対中国だけでいえば、後一息で、中国経済を崩壊させるところまで持ってきたのであるから、共和党であろうと、民主党であろうと、対中国には強硬政策をとりつづけ、その経済力・軍事力を奪っておかないと本当に大変なことになりかねない。

昨日不全の国連の復活など夢を追うより、現実的に、目の前の中国のミサイルという脅威に対して対処すべきである。

ミシガン級の潜水艦を駆使して、中国海軍を壊滅させるぐらいのことをしないと中国の海軍は壊れないだろうし、日本は実行的なミサイル防衛を行う必要があるだろう。

レールガン・レーザーが出てきているが、レーザーも、強力な磁石も日本の得意な技術であるのであるのだから、高出力のレーザーを作り、電磁カタパルトもレールガンも作り、高周波のレーダーで超音速の物体を捉えて迎撃する単価の安いミサイルをコンピューターとハードウェアの制御でやっつける新たな技術に日本政府は投資をすべきであると思う。NECと日立製作所と三菱重工は、そういうことに技術を投入するのが良いのだと思うがなあ。そして、トヨタで量産してこそ、日本の平和が保たれる。そして、NTTをはじめとして無線技術を磨いて、高性能のレーダーを作るべきだ。基本、レーダーなどカミオカンデと同じわけで、やってやれぬことはなかろう。

ミサイル防衛もやっと議論が始まったようだが、それらとともに、射程の長いミサイルを研究し、陸上のトラックから長距離ミサイルを発射する研究と生産をちゃんとやった方が良い。日本は島国なのだから、高速道路から長距離対艦ミサイル、長距離地対空ミサイルを大量にぶっ放してこそ、国防である。

日米同盟を堅持しつつも、米国がどうなろうとある程度は日本が日本を守れる形が無ければ、江戸時代末期に日本は後戻りしてしまう。もはや、経済大国でも技術大国でもない日本に無駄をやっている余裕はないので、極めて効率性の高い有効な戦略をもとに、国防を進める必要があろう。

と、4年前の古い本を読んで思ったのである。


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