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大型空母不要論とF-35B

近年の大型空母不要論

近年、大型空母不要論というのが強い。

右側のメディア・産経新聞の解説がわかりやすかったので、引用する。

米国の海軍アナリストであるノーマン・ポルマーは最近メディア誌上で次のような持論を展開した。(中略)最新空母1隻の建造コストは約150億ドル、そして就役した後も膨大な維持費を50年間払い続けなければならない。(中略)次世代のF-35Cは確かにステルス性能や他の新しい能力を備えているけれども、航続力の短い「何でも屋」であることに変わりはない。  
このことは空母がもはや海軍の最高の盾と鉾ではないことを意味する。敵を攻撃したければ攻撃機を飛ばす必要は無く、数百マイル離れた所から駆逐艦や潜水艦にトマホークを撃ってもらえばよい。 
 かたや、海兵隊の強襲揚陸艦の建造費は大型空母の5分の1で、しかも広大な甲板から最新のF-35Bを容易に運用できる。「空母1隻と強襲揚陸艦4隻のどちらが欲しいか戦闘指揮官に聞いてみるといい。現在建造中のものはしかたがないとして、その後の空母計画は再考すべきである」と、ポルマーは主張している。 

「F35Bの対空戦闘力がどうこう」、「F15の方がF35より対空戦闘力が強い」などチンケな主張がなされているが、そういうレベルでは無いようで、

(1)米国の原子力空母はお金がかかりすぎる
(2)戦闘機はいらない。前線のセンサーで良い
(3)ミサイルは、戦闘機が撃つ必要がない。潜水艦か、後ろの駆逐艦が撃てば良い
(4)だったら、前線に置く強襲揚陸艦で良い

というのが主張の主旨である。


ポスト空母時代というパラダイムシフト

もう一つわかりやすい解説があった。

PDFには、『F-35B の出現と空母時代の終焉』(雑誌「水交」No.645 号 平成 29 年新春号から)とあり、「岩﨑洋一 幹候 29 期」と文末にある。こちらは、全体を解説している。

キルウェッブについて書かれており、

(1)前線にF-35Bを上げる
(2)上空から敵機や敵の攻撃目標をF-35Bが把握する
(3)情報システムで、その情報は自動的に全軍隊にリンク
(4)後方のイージス艦 or 潜水艦から巡航ミサイルで攻撃
(5)F-35Bのレーダーの結果を通じてミサイルを誘導

基本的に、こういうことが今はできてしまうということ。最後の終わりに書いていることがより詳しい。

おわりに
戦争とは弾頭を相手に送り届ける手段の歴史でもある。大艦巨砲時代は艦砲という手段を使って数十キロメートル先へ弾頭を届ける時代であった。空母打撃グループの時代は艦載機という手段で重い兵装を積んで数百キロメートル先へ弾頭を届ける時代であった。今は艦載機よりも安価で長射程のミサイルが、後方に位置する艦艇や陸上発射ビークルのセルから数百~千キロメートル先の敵艦・航空機を目指して弾頭を送り届けてくれるセンサー機・中継機を飛ばせる甲板をもつ艦とウェポン・キャリアー艦がいれば水上打撃力として十分な時代になりつつある。正規空母の時代は終わりを告げようとしているのかもしれない。

戦い方のパラダイムシフトである。

(1)巨艦巨砲時代は、艦船の艦砲
(2)空母時代は、飛行機が爆弾運んで、爆撃
(3)今の時代は、巡航ミサイル

艦砲は強力だったが、弾丸が当たらなかった。
空母は弾丸がよく当たったが、金がかかった。
巡航ミサイルは弾頭が高価なのが、悩みの種である。

高価な巡航ミサイルを確実に当てるために必要なのは、敵の攻撃目標をリアルタイムに測るセンサーである。地球は丸いので、遠くにいる敵は船からでは見えない。早期警戒機を飛ばせば遠くまで見えるが、地上の細かい目標や、ビュンビュン動く戦闘機も把握できない。だから、前線に飛行機を飛ばして、リアルタイムに敵の攻撃目標を捉え続ける必要がある。

そのために必要なのが、F-35であるということになり、F-35Cという空母に積む戦闘機を考えていた。ところが、空母は金食い虫である。なので、より小型の強襲揚陸艦が数あればよく、そこから、垂直にも上がって降りられるハリアー型のF35Bがあればいいんじゃないか、というのが、最近の考えであるらしい(ちなみに、私は、いずも、かがの両護衛艦にF35Bを積むことには賛成である。これらの艦隊は、ワスプ級強襲揚陸艦よりやや小さい。そういった意味で、日本の海上自衛隊の戦力は、少ない予算を有効に使っていると思う)。

F35Bは、何をするかというと、隠密偵察である。前線近くまで派遣した強襲揚陸艦からF35Bを上げて、相手に見つからないようなステルス性をもって、敵の攻撃目標たる地上目標、および、空中の戦闘機を把握する。その情報を後方に伝え、後方にいる駆逐艦や海中に隠れている潜水艦(巡航ミサイルをわんさかもっている)から巡航ミサイルを発射し、攻撃目標を破壊する。

その攻撃目標の破壊の確認もF-35Bということになる。F-35Bは、敵機に見つからなければ、ミサイルを撃つ必要もない。なので、対空戦闘能力がどうこういう必要もなく、見つからなければ良いという話になる。


F-35Bは最後の有人戦闘機

F-35は最後の有人戦闘機と呼ばれるらしいのもよくわかる。

偵察が目的であれば、人を載せる必要もなかろう。もう少し小型でセンサー満載の無人機(といって、ヘリコプター型の遅いのではなくて、超音速機)を飛ばして、目標を捕捉出来れば良い。なので、今後の戦闘機は無人機になるのではないかと思われる。

かたや、ミサイルを積む艦船も、無人化、高速化が進んでいる。米国は、近年、無人運転の潜水艦まで開発したと聞く。

中国は、せっせと大型国産空母を作っているようだ。空母の運用には大量の人が必要である。飛行機が弾薬をもって運ぶ前提であるが、いざ、戦争が始まると、F-35のような偵察機が飛んできて、場所を特定されると潜水艦からミサイルと魚雷がわんさか降り注ぐことになるわけだ。大量の中国人民が海の藻屑になるとともに、原子力空母であれば、大量の放射能が海の中に放たれるだろう。

そうならないように、望む。


追記:海軍評論家のノーマン・ポルマー氏の雑誌の論説

それらしき記事を見つけた。

やはり、大型空母のコスト効率を述べている。ロシア・中国の対艦巡航ミサイル巡航の脅威を考えると、大型空母はコスト効率が悪い。一日何台飛行機を飛ばせるか競ってる場合じゃなく、安い小型の強襲揚陸艦にしとけ、と書いてあると思う。

意味のない例として、イギリスの空母・クイーンエリザベス号をディスってます。

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