書評:『これからの世界をつくる仲間たちへ』(落合陽一)

書評:『これからの世界をつくる仲間たちへ』(落合陽一)
http://goo.gl/Y6mDmi

Kindle版で読みました。

感想を一言で言うと「家庭を持つ前に本を書くとこうなるよね」
良くも悪くもホリエモン臭がしました。

「きっと、落合さんはメディアアートの世界ですごい事をしているのだろうな」とご推察しました(すいません、まだ作品を見ていないです。面白そうなので、是非見たいと思います)。それは、十分に分かったし、主旨である「コンピュータとAIの時代には、今現在良しとされている教育は意味が無い。パラダイムシフトした世の中にあわせた教育をすべき」というのは、よくわかりました。大体の意見は賛成です。

それでもこの本が「鼻につく」のは、「ところどころ間違っている」と私が思うことがあるからです。

例えば、落合さんは、「マネジメント意味なし」と言うけれども、googleでもマネジメントの重要性を再認識して、マネジャー不要論を撤回しています。大きな組織を持てばこれはいつの時代もマネジメントは必要になります。機械もAIがマネジメントを出来るようになるかは怪しい。Uberのように、資源の配分はできるかもしれないが、組織を作る事ができるかどうか。組織を作るのも、組織の中で動く人とは違うスキルだからなあと思いました。ま、全ての仕事が10人ぐらいで出来るのであれば、マネジメントはいらない気もしますが。

あとは、「ワークライフバランス」に関する主張ですが、「仕事が趣味で、やりたい事ならワークライフバランスを考える必要は無い」という落合さんの主張ですが、これは、私のように小さな子どもを持つと変わると思います。子どもと遊びたい事をしたい時に、ワークはどうやっても邪魔です。自分の子どもと遊ぶのを仕事には多分出来ないと思いますし。そういうライフステージが誰でも出てくると思うのですが、それは、そういうライフステージにならないと分からない訳で、この本の蛇足になるなと思いました。

あと、「英語の勉強も自動翻訳されるから意味なし」と言うけど、細かい事を言うと、同時通訳と逐次通訳で違う。私が英語を勉強するのは、短い時間で英語をしゃべる人とコミュニケーションをしたいから。同時通訳の出来る人をつれてビジネスをした事ある人は分かると思いますが、逐次通訳と同時通訳は全然意思疎通にかかる時間が違う。逐次通訳なんてかましてたら、短い時間でコミュニケーションできないし、意思疎通の密度が薄くなるので、私は深い意思疎通を詰め込みたいから、英語を勉強する訳です。そもそも、言語なんて複数話せて悪い事は何にも無い訳で、どうせ多く人は、facebookみたり、twitterみたり、下らんテレビ番組を見て過ごしている時間があるんだから、そんな時間に語学の勉強をするのは楽しいと思うけどなと思いました。まあ、英語だけできても意思疎通する中身が無ければ意味が無いですけど、youtubeもSkypeもある時代なので、今の幼児達が英語を習得するのは昔よりかなり楽になってると思いますけどね。「言語は忘れる必要が無い」が私の哲学なもので、このあたりはあいませんでしたね。

あと、「デジタルネイティブが嫌いで、デジタルネイチャーと呼ぶ」「デジタルネイティブはそれが普通だから、違いが分かっていない」というのは、アレだなと思いました。「おれすげー」って言っているだけに聞こえて、既におっさんのコメントになっているなと思います。私は常にメディアを上手に使いこなすのはその時代の若者だと思うので、デジタルネイティブの方が、その時代のコンピュータを使いこなすのは上手いと思いますね。自分より若い人への示威行為は恥ずかしい事で、自分の自信の無さを示すだけなので、余計難じゃないかと思いました。

と、鼻につくところばかりを書きましたが、基本、コンピュータの時代、インターネットの時代に求められる能力は今までと違うと言うのは賛成です。特に、「劣化版のwikipediaでは役に立たない」というのはその通りで、覚えているというのが価値の時代はもうどっかに言ってしまったと思います。

「意識だけ高い系」の「xx読んだ」には意味が無いというのも分かります。昔から言う「論語読みの論語知らず」という奴に意味が無いのと一緒で、本は読むのは良いですが、その通りに実戦して、行動を替えないと意味がありません。本を読んで、それを自分のものにすることに価値がある訳で、知って覚えただけではいつの時代も役には立ちません。今の時代は、覚えていなくてもネットですぐ再検索できるので、行動に活用する事こそが価値だと思いました。

最後に、「落合さんの親御さん偉いなあ」と感心しました。家の中のものを分解する、電話も分解してしくみを知ると言う事を子どもがして、普通に許してしまう親と言うのが素敵であるなと思いました。

ものを音波で浮かす、それを、コンピュータで制御すると言う面白いことをやってのけているのが落合さんなので、落合さんの功績時代をどうこう言うつもりは無いですが、20年経って、落合さんがこの本を読んでどう思うのかは知りたいと思いました。

この本は、全否定でもなく、全肯定でもなく、批評的な目で読んでみると、学生ぐらいまでの方々には役に立つのではないかと私は思いました。

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