イリア教以前の宗教とビブリア

ドラガリの世界において、祈るという行為は精神的なものに留まらず、実際にマナを生み出して対象に力を与えるものであるということ。ロストヒストリアのイベントで明らかになったこの認識によって、今まで以上にこの世界での宗教の重要さに気付かされた。


モルトメサイアは5章4-4において、ディアネル帝国を復興した理由について、英雄の萌芽を根元から断ち無窮の河を守るため。また、数百年かけて心からの信奉者を集めるのが目的であると語っていた。
これは過去の敗北を踏まえ、エリュシオンと戦う上では今まで以上に人々の想念…マナや力を束ねることが必要だと判断した為だろう。

最近、ユーディルの力が何故か増しているという描写も、人々の希望がユーディルに集まることによってマナの供給量が増えたため…と考えることも可能かと思う。
またその場合、英雄として開花しつつあるユーディルへの信心を逆に利用するために、モルトメサイアはユーディルの身体を求めたのでは…といった想像の余地も生まれる。


【ロストヒストリアで登場したアウグスについて】

モルトメサイアに一蹴されて敢え無く退場してしまった彼だが、魔神の力を前にして興味深い発言もしていた。

「あまねく世界を統べる神となることも可能ーー!」

「ずっと……ずっと欲しかった神の……!」

イリアが宗教を立ち上げようとしたこと。宗教の概念が既にあったことを踏まえると、イリア教の成立以前に既に、世界には『神』と呼ばれるものや信仰される宗教が存在していた事が伺える。

更に、「ずっと欲しかった」という口ぶりや、作中でイリアの研究に執着していた様子から察すると、少なくともアウグスは神の力というものが異界の門を通じて得られると考えていた節がある。


【コールオブビブリアについて】

ヘシウード村で信仰されていたものは、イリア教より古い時代から信じられていたものであったとの記述があった。
これがイリア教以前にポピュラーな宗教であったかどうかは定かではないが、信仰対象として『遥かなる主』が語られていることを考えると、所謂『神』と呼ばれるものもどこかに実在するのかもしれない。

また、ハインヴァルトが使者であるニャルラトホテプを消滅させた際の呪文に、
「ーーを閉ざす鍵」
という言葉が含まれていることから、『遥かなる主』周りについても異界の門が関係している可能性がある。
(クトゥルフといえば銀の鍵だが、これも時空を超えて移動するためのアイテムとして描かれており、ドラガリにおける異界の鍵と何かしら近いものが感じられる)


【人々を本に変え書庫に収めた理由について】

まず事件の経緯について確認してみたい。

ヘシウード村の住民は、数年前に司祭が派遣されイリア教会が出来たこと。加えて、近いうちに異端審問官が訪問することを知った為に、動揺し、祈り、怪しげな呪文を夜空に唱えた。
その結果として『救済の使者』が現れた。
『救済の使者』は儀式を行い、住民208人が本と化して図書館に所蔵された。

このような流れで事件は起きた。

こうして確認してみると、そもそも事件の発端は異端審問官の訪問であった事が伺える。
繰り返すことになってしまうが、祈りは力と直結している。
もし異端の宗教だと判断され、信仰が途絶えることになれば『遥かなる主』サイドとしては、信者によるマナの供給が少なくなって都合が悪いと考えられる。

ではどうするか?

ニャルラトホテプは書庫について、遥かなる主を称える神廟。
蔵書について、生贄、供物であると口にしていた。

モルトメサイアやアギトなどの描写から、祈りではなく負の感情でもマナは発生し力を得られると推察されている。
のであれば、

信者を奪われるくらいなら、書籍に変えて保護すればよい。
そんな考えもあるのではないか?

本に変えられた人々が恐怖に苛まれていたことなどから想像するに、『救済の使者』は人々の負の感情、恐怖から生まれるマナを確保し『遥かなる主』に安定供給しようと考えたのではないだろうか。

ユーディル達を罠に掛けようとした使者。人間を本に変えてしまう呪文に含まれていた「悪しきもの」「封ずる」という言葉も、人を「本に封じて」「悪しき感情」を生み出すという意味だったのだとすれば意が通る。

もしそうであれば、図書館が数百年間封印されていたというのも、イリア教による迫害や排斥から信者を保護管理する為であったと考えることも出来そうだ。

ロストヒストリアでは、ユーディルの祈りが世界の隔たりを越えてゼシアに届く様子が描かれていた。
祈りが異界に届くなら、それと対をなす負の感情が『遥かなる』主に届けられても不思議ではない。

イリアが口にしていた「正しき道への門扉が開く」が果たして何を指しているのか?
そこに何があるのかも含め、まだまだ謎が尽きないですね!

こうなってくると、ヒノモトでは何に祈りが捧げられているのかとか、キリン族などの異種族は何か信仰を有しているのかとか、様々な事が気になります。

北グラスティア大陸の宗教観も南と異なるというし楽しみ~。

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