本当は怖いコールオブビブリア

いかださんのビブリアまとめ考察を読んで非常に刺激を受けたので、ビブリア終盤の展開における自分の見解を今一度整理し直してみました。

いかださんが指摘したとおり、白ニャルと黒ニャルが互いに相手を封印しようと立ち回っていたという前提で考えていきます。
(詳細や流れは、twitter上の「漂流いかだ」さんの考察を読んでみてください)(とっても分かりやすいので)


物語の終盤でラトニーの姿に化けていた白ニャルは、黒ニャルとハインヴァルトによってその正体を看破され、今回の事件の黒幕…人に害をなす存在だと判定された。
白ニャルはそれを嘘だと主張しクーガーに助けを求めるも拒絶されてしまう。
周囲に味方がいないことをみて、幼女からニャルラトホテプの姿へと変じ、ユーディル達に攻撃を仕掛けてきた。
ニャルラトホテプの生命は無であり無限。倒すことが不可能だという事情からハインヴァルトが発見したという『ニャルラトホテプをこの世界から消滅させる』呪文を使って解決を図る運びとなった。


呪文を唱えた結果として、起こったことが2つある。

まず1つめ、白ニャルが次のような言葉を喋った。
『我は混沌。我が終焉は創生。黄昏にして彼誰。黯黒ノ朝ノ醒メヌ悪夢ノ訪レ。』
『我、遥カナル主ノ使者タル数多ノ顕現。数多ノ貌。数多ノ名。数多ノ……アマタノ……。』

つぎに2つめ、白いニャルラトホテプの姿が消えて、周囲にヘシウード村の住人らしき人々の姿が現れた。その中にはラトニーという幼女も含まれていた。

その際、ハインヴァルトは術を掛けた白ニャルが消滅したことによって魔術が解けたのだろうと語っている。

本にされた人間達も元に戻ってめでたしめでたし…といった様子が描かれているが、ここで疑問を挟んでみたい。

まず、白ニャルが術を掛けたというが、司祭の日記に書かれていた、村に現れ儀式を行ったという『救済の使者』は黒い姿ではなかったか。
いかださんの考察でも触れられているが、人々を本に変えた犯人は黒ニャルであった可能性が高い。
だとすると、白ニャルが消えたことによって魔術が解けたという展開は間違っていると考えるべきだ。

では魔術が解けていないなら、どうして人々が元に戻ったのか?

いや、そもそも彼らは本当にヘシウード村の住人なのか?


ここで先程上げた文章。白ニャルが消える直前に遺した言葉を振り返って見て欲しい。

『終焉は創生』『黄昏にして誰彼』『数多ノ貌』『数多ノ名』
加えて、黒ニャルが自己紹介の際に口にした『ひとつの名、ひとつの貌に収まらず』

これらの言葉から推察するに、ハインヴァルトが行使した『ニャルラトホテプをこの世界から消滅させる』呪文というのは、実は、ニャルラトホテプを消滅させて数多の人間へと変じさせるといった効果だったのではないだろうか?


この説を補強する材料が2点ある。

一点目は、ヘシウード村の住民が変じた本にあった記述だ。
ハインヴァルトが読み上げていた本の内容は、
『……残された魔導書……呪文……新たな世界……供物……』
それに対してハインヴァルトは『失敗した?いや、成功なのか?』といった感想を述べている。

ここで特に取り上げたいのは『新たな世界』という表現についてだ。

恐らくここに書かれた内容は、本に変えられる前の住人が救済の使者を呼び出して願った目的だと思われる。
そう考えてみると、村に『残された魔導書』を利用し、救済の使者による儀式によって『新たな世界』へ至ろうとしたといった様子が読み取れる。

もしも、人が本に変わること…今までの存在のあり方を変えることが『新たな世界』なのだとしたら…、それと同様に『この世界から消滅させる』呪文というのもニャルラトホテプが人に変わるといった意味でも通じると思えるがどうだろうか?


二点目は、ラトニーを含めた人々が姿を現した際のエフェクトだ。

彼らが姿を現すと同時に発生している、紫がかったホタルのような光。
これはこの物語の一番最後のシーンであるハインヴァルトと黒ニャルとの問答。彼が自分の正体に気付いた時に発生しているエフェクトと全く同じものだった。

もしこの光がニャルラトホテプを表しているものであるならば……、ラトニー、ハインヴァルトだけでなく、村に戻ったヘシウード村の208人全員がニャルラトホテプであると思われる。


(本当は怖いコールオブビブリア)(Fin)

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