見出し画像

言葉と生きる

【クリエイティブリーダーシップ特論レポート】
武蔵野美術大学
大学院造形構想研究科
クリエイティブリーダシップコース
 
2021年10月4日(月)18:20-19:50
クリエイティブリーダシップ特論 第13回 吉澤 到さん


 21年度後半のCL特論は、会社や組織を飛び出して自分で事業をしている人など「ぶっ跳んだ人」が多かった印象がありましたが、今回の吉澤さんは企業人であり、いつもより親近感というか、より身近な方(勝手ですが)としてお話を伺うことができました。

 吉澤さんのキャリアはコピーライターから始まります。私たちが日常で目にするキャッチーなフレーズなどは基本的に短いものが多いです。が、この短いフレーズを考えるのには何百という候補を泥臭く作って、そこから厳選していくそう。とても地道な仕事なんですね。決して天才の頭に降ってきたフレーズが決まるというようなことではないそうです。そして言葉に責任を持つことがコピーライターの役目というのが印象的でした。

 そして40歳を超えてイギリスのMBAへ留学することで、コピーライターから経営へという大きな転換点を迎えます。一見すると180度の方向転換に感じるかもしれません(私はそうでした)。しかし、コピーライターとしてクリエイティブに関わっていた経歴がとても活きたそうです。現代の経営というのは決してアカウンティングや係数管理といった「算数」だけでなく、「心理学」「哲学」も密接に関わってくるから。「VUCAの市場変化の激しい時代、従来の管理手法ではイノベーションは起こせない」という言葉がとても印象的でした。まさに右脳と左脳のバランスが求められる今の時代を先読みしていたのが吉澤さんでした。

 競争によって成長の限界が見えてきたいま、「思考を開く」「心を開く」「意志を開く」ことが大切と説きます。上でも書きましたが、これらはとても哲学的ですよね。いかに人の心に訴えるか、人の心に入り込めるかというのが重要なんだと思います。これは仕事においても生き方においても。

 言葉を相棒として付き合ってきた吉澤さんだけに、今回の言葉の1つ1つの重みを実感した回でした。


■吉澤 到
博報堂 ミライの事業室 室長
東京大学文学部社会学専修課程卒業。ロンドン・ビジネス・スクール修士(MSc)。1996年博報堂入社。コピーライター、クリエイティブディレクターとして20年以上に渡り国内外の大手企業のマーケティング戦略、ブランディング、ビジョン策定などに従事。その後海外留学、ブランド・イノベーションデザイン局局長代理を経て、2019年4月、博報堂初の新規事業開発組織「ミライの事業室」室長に就任。クリエイティブグローススタジオ「TEKO」メンバー。著書に「イノベーションデザイン~博報堂流、未来の事業のつくり方」(日経BP社)他

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?