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PUZZLEとMYSTERY

【クリエイティブリーダーシップ特論レポート】
武蔵野美術大学
大学院造形構想研究科
クリエイティブリーダシップコース
 
2021年10月11日(月)18:20-19:50
クリエイティブリーダシップ特論 第14回 佐々木 康裕さん

 佐々木さんも元々はサラリーマンで、そこからビジネスデザイナーとなっていきます。またキャリアの途中でデザインを学ばれて転身していることからも、自分の経歴とも照らしながら話を伺うことができました。

 商社での経験ももちろんですが、やはり人生の大きな転換点はシカゴのイリノイ工科大学 Institute of Design(ID)に行かれたことでしょう。「デザインスクール」と称するものの「ビジネススクール」にも近しい授業が豊富だったようです。またシカゴという場所が西海岸とも違うデザインシンキングが存在していたという話は興味深かったです。日本のようにやや堅苦しい大企業が多く、そのシカゴ型デザイン思考は日本に帰ってビジネスをする上でとても役立ったようです。

 そしてIDで学んだことのひとつが以下。

劇的な環境変化に必要なもの
○超・多様性 
⇨ デザイン思考や論理思考その他を有機的に組み合わせた新しいアプローチが必要

○創造性非依存の再現性あるアプローチ
⇨ 創造性やインスピレーションに依存せず、高い再現性をもった規律的プロセスとして新規事業創出を行う


 従来よりも圧倒的なスピードで世の中が変化している中、ついていくだけで精一杯とならずに、それを超すスピードが求められています。それを体現しているのがtakramの事業そのものなのだと感じました。そしてもうひとつ「変化」の内容もよりぼんやりと不明瞭なものになっている時代。VUCAと呼ばれるものです。

 いままでは”PUZZLE”であり、それは論理思考で資源を投入して、答えがありました。つまりスピードもゆっくりですし頑張れば解ける問題が一般的でした。しかしVUCAの現代は”MYSTERY”。答えがない問いに対してシステムやデザイン思考など新しいアプローチでプロトタイピングして常にアップデートする。これが必要なのです。「ビンラディンを殺害せよ」なのか「アフガニスタンを再建せよ」なのかという例示はわかりやすかったですね。「パンデミックを収束させよ」も「気候変動を止めよ」も当然MYSTERYに分類されます。これらはまさに我々が直面している問題そのものでした。

 「クリエイティブの力で社会を良くする」というのが今の学科の大きなコンセプトだと思っているのですが、これもMYSTERYを包括的に捉えています。本講義の最終回が佐々木さんだったわけですが、クリエイティブリーダーシップの本質を問うような内容であり、最後の最後まで印象に残るものでした。


■佐々木 康裕
ビジネスデザイナー。Takramではデザインとビジネスの知見を組み合わせた領域横断的なアプローチでエクスペリエンス起点のクリエイティブ戦略、事業コンセプト立案を展開。2019年3月、スローメディア「Lobsterr」を共同創業。“ビジョナリーブランディング“を行うPARADEの取締役、ベンチャーキャピタルMiraiseの投資家メンター、グロービス経営大学院の客員講師(デザイン経営)も務める。
著書/共著に『パーパス 「意義化」する経済とその先』(NewsPicksパブリッシング)、『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略 』(同)、『いくつもの月曜日』(Lobsterr Publishing)等。


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