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眠るみんなのポテンシャル

【クリエイティブリーダーシップ特論レポート】
武蔵野美術大学
大学院造形構想研究科
クリエイティブリーダシップコース
 
2021年5月31日(月)18:20-19:50
クリエイティブリーダシップ特論 第8回 安斎 勇樹さん

 ワークショップの実に深い話を安斎さんから伺いました。むしろワークショップだけでなく、司会・ファシリテートやマネジメントなど多くの場面で応用できる内容だったと思います。

 さて、まず私たち人間の視野は狭いです。目の前に広がる全てを2つの目で捉えている気になっているものの、実にたくさんの物を常に見落としています。例えば、視野に入る鼻や眉間について安斎さんは述べられていました。メガネや前髪なんかもそうですね。目の前の風景を描いて下さいといわれて、こうした部分を描く人はまずいません。つまり当たり前に存在しすぎるあまり盲目的になっている部分があるということです。

 モノづくりがしたく希望に満ち溢れ入社したものの、ヒット商品を作らなければという目に見えない抑圧によって、創造性が失われてしまうのは企業の大きな課題と述べられていました。「未来のカーナビとは?」という問いについて、「カーナビを作ること」に捉われるあまり、なぜそもそもカーナビを作るのかという根本を見失うという自動車会社の話です。まさに盲目の状態です。

 こうした状態の組織に、ちょっとしたきっかけ刺激を与えてあげることで眠っていた「ポテンシャル」や「創造性」を解放する。これが安斎さんの考えるワークショップでありミミクリデザインで行っている事業の1つです。

 社会と個人のバランスというテーマもとても面白かったです。いきなり「未来のカーナビ」とか「100年の歴史を背負った時計」なんて作れと上司から言われても、実際の担当者や製作者だとあまりに大きなテーマに対して「?」と思考停止状態になってしまいますよね。そこにちょっと主語や視点を変えて「自分ごと」として考えてもらえるよう工夫することで、一気に議論が進むことがあるようです。このバランスを考えながらきっかけ刺激を与えているということでした。

 そういえばデザイン思考の「How might we...」と同じですね。「世の中を変えるぞ!」と意気込む気持ちは大切ですが、ではそのために果たして自分は何ができるのか。まさにどうするか自分自身を問うということです。

 最後に問いのデザインについて研究している安斎さんは、大喜利を見ていても「これって問いなのでは?」と考えてしまうようです。この研究者精神は大学院生として私自身見習わなければ。。。

■安斎 勇樹
株式会社ミミクリデザイン CEO / Founder、株式会社DONGURI CCO(Chief Cultivating Officer)東京大学大学院 情報学環 特任助教
1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。研究と実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について研究している。主な著書に『問いのデザイン-創造的対話のファシリテーション』(共著・学芸出版社)『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』(共著・慶応義塾大学出版会)『協創の場のデザイン-ワークショップで企業と地域が変わる』(藝術学舎)がある。

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