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空想から現実に

【クリエイティブリーダーシップ特論レポート】
武蔵野美術大学
大学院造形構想研究科
クリエイティブリーダシップコース 

2021年4月18日(月)18:20-19:50
クリエイティブリーダシップ特論 第2回 岩渕 正樹さん

 「あんなこといいな、できたらいいな」と、我々が子供のころからお馴染みの曲があります。日本人であれば誰もが一度は「どこでもドアがあればな。。」や「暗記パンが欲しい。。」と思ったことがあるのではないでしょうか。

 残念ながら鉄腕アトムのような意思を持つロボットは設定の2003年には誕生しませんでした。またデロリアンもこれまた設定の2015年には空を飛んでいるということは現実にありませんでした。しかしテクノロジーの進歩によって日常は一歩づつ便利になっています。

 こうした夢を抱くのは決して漫画家だけではありません。エジソンもライト兄弟もやはり「こんなことができれば」と思うことから実験がスタートしています。彼らが「まあそんなこと現実的には無理だよね」と冷めた人であったならば、私たちの生活や歴史はまた違っていたかもしれません。

 日本財団が行った「18歳意識調査」というものがあります。

 中国やアメリカなど9カ国で行った調査で、自分の国の将来について「よくなる」と答えた日本人は9.6%でした。また「自分で国や社会を変えることができるか」という問いについても「思う」と答えた人はわずか18.3%となり、どちらも9カ国中最下位となりました。

 官民共にイノベーションが求められている時代でありますが、こういった意識が潜在的にでもあるとなかなかイノベーションは起こり得ないように感じました。壮大な夢よりも現実を着実に進むのが美徳かもしれませんが、グローバルな競争が巻き起こっている中だと日本の行く末が危ぶまれるような気がします。

 先に鉄腕アトムの例を挙げましたが、日本人はアニメやマンガで空想的な世界を描くことに長けた人は多いですね。それはあり得ないような世界観だったりしますが、世界中の人がAnime, Mangaに惹き込まれています。

 空想から現実への橋渡しというのは、アーティストやデザイナーからビジネスへの橋渡しと似ている気がします。そして橋渡しをしていく役割こそ、我々造形構想を学んだクリエイティブリーダーたちでないといけないなと改めて自覚したのでありました。


■岩渕 正樹(イワブチ マサキ)
NY在住のデザイン研究者。パーソンズ美術大学非常勤講師、東北大学工学部客員准教授。東京大学工学部、同大学院学際情報学府修了後、IBMDesignでの社会人経験を経て、2018年より渡米し、2020年5月にパーソンズ美術大学修了(MFA/Design&Technology)。現在はNYを拠点に、Transition Design等の社会規模の文化・ビジョンのデザインに向けた学際的な研究・論文発表(Pivot Conf., 2020)の他、パーソンズ美術大学非常勤講師、Teknikio(ブルックリン)サービスデザイナー、Artrigger(東京)CXO等、研究者・実践者・教育者として日米で最新デザイン理論と実践の橋渡しに従事。近年の受賞にCore77デザインアワード(Speculative Design部門・2020)、KYOTO Design Labデザインリサーチャー・イン・レジデンス(2019)など。

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