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参加型熟議民主主義を作る

【クリエイティブリーダーシップ特論レポート】
武蔵野美術大学
大学院造形構想研究科
クリエイティブリーダシップコース
 
2021年9月6日(月)18:20-19:50
クリエイティブリーダシップ特論 第9回 関 治之さん

 

 少し前にはなりますが、Wikipediaの仕組みについてお話を聞いたときを思い出しました。インターネットの普及前だと私たち一般ユーザーは企業や行政から「作られたモノ」を提供されて否応にもそれを消費して生きてきました。しかし現在では決して企業や行政のみならずとも誰でもモノの作り出すことができます。

Code for Japan  "VISION"
誰もが「つくる」側に回ることができる。
社会に不満があるなら、まずは自らが手を動かそう。
自分たちの能力を、より楽しく暮らせる社会づくりに使おう。
困っている人たちとともに考えながら、新しい仕組みをつくろう。
組織や地域の壁を超えて繋がり、アイデアを交換し、助け合い、挑戦しよう。

 関さんは「伽藍とバザール」というモデルを用いて説明をされておりましたが、まず伽藍の場合は作り手が全て設計し、容易に変更はできない。また設計した組織にのみノウハウが溜まっていくという特徴があります。一方でバザールはユーザーが状況に応じて自在にスタイルを変えていき、皆がノウハウを共有するというメリットがあります。なので伽藍一辺倒な行政をバザールへ転換できないか。さらに自分たちでいいものができるんだし、既存のをより使いやすいように作ってしまえという意気込みからスタートしたのがCode for Japan。そう私は理解しました。

 インターネットという場における参加型の仕組みは様々な分野で導入がすすんでおり興味深いなと思いながら聞いておりました。デジタル庁からお声がかかったのもまさに時代の要請ともいえるでしょう。

 そして今回印象に残ったことが1つ。それは学部生からのコメントでした。それは「保守的な人」という表現を使っていましたが「世の中誰もが誰も社会を変えると意気込んで生きているわけでない。CI、CLコースにいると保守的な人=世間とのギャップを感じる」という内容でした。20歳くらいの学部生が実感している素直な意見だなと思いながら聞いていました。

 私自身も同じようなことを感じており、CLコースにいると感覚が麻痺してくるからです。少し話は逸れますが、直近の国政選挙における投票率は50%程度でした。20代30代に限ると投票率はさらに下がり50%を切っています。

 みんなで将来少しづつ世の中を変えていきたいという少数派の人が集まる場所がCLコースであるとして、半数以上の人はそもそも社会(社会を変える基本である選挙にすら)に全く興味がない「無関心」であるのが実情です。オープンソースなど理解できるひともごく一握りと考えられるので、将来新たなデジタル弱者が誕生し社会を分断してしまう可能性もあるのではという一抹の不安を感じました。

①Code for Japanの人たちに導いてもらうのか?
②Code for Japanに参加できる人を増やすのか?
③Code for Japanなんてコミュニティがなくてもいい世の中にできるのか?

 現代の民主主義が抱える問題に通づるようなポイントを今回の公演と学部生の問いから考えるきっかけとなりました。
 

 さて、「技術は人を幸せにするのだろうか?」というのは関さんが最初に提示した問いです。オープンソースは善意で改善が進む便利な側面ががあるものの、悪意のある人による書き換えなども問題点として挙げられます。「技術」も結局のところは運用するのは「人」なので、いかに私たちが成熟していけるかが鍵となりそうですね。


■関 治之
Code for Japan代表
開発者として主に位置情報系のサービスを数多く立ち上げ、テクノロジーを活用したオープンイノベーションについて研究してきた。
東日本震災時に情報ボランティア活動を行なったことをきっかけに、住民コミュニティとテクノロジーの力で地域課題を解決することの可能性を感じ、2013年に一般社団法人コード・フォー・ジャパン社を設立。
以降、「テクノロジーで、地域をより住みやすく」をテーマに、会社の枠を超えて様々なコミュニティでも積極的に活動する。社会課題からエンターテインメントまで、幅広く様々なハッカソンを実施している。(HackCampより)

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