13歳の君へ

先日、無事に40歳を迎えた。

40歳というと、確実に人生の前半が終わり後半が始まる感じがあり(本来、前後半に分ける意味も必然も無いが)、それと同時になんとかここまで生きてこれた事そのものに対する感慨も少なからずある。

少し前に、ふとしたきっかけから地元の中学一年生を前に話す機会があり、その後一人ひとりから感想文を兼ねた手紙を受け取った。私は感銘を受け、返事の手紙を書いて送った。その手紙を40歳を迎えた自分から現れた言葉として、記念と記録の意味も含めてここにそのまま残しておく事にする。

これまで40歳の1人の人間として漠然と思い描いていた理想は、 “他人からの借り物の言葉では無く、自分の人生を通じて実感した言葉で誰かに語りかけた時に、それがなぜか普遍的な響きを持つ”といった状態で、そういった意味で、今回13歳の彼、彼女らに送った手紙は少し自分でも驚く様な言葉も現れて、その上で納得感も高い表現になった。それは言うまでもなく学生たちが引き出してくれた物で、何か言葉が出る時にはどこまでも他者が必要になる。今回、出会えた事に感謝すると共に彼、彼女らが今後どのような人間になっていくのかを見守りたい。そしてそれは自分に対しても同じ思いだ。以下は今回の手紙の内容(原文から若干の変更、修正済み)。

職業講話でお世話になった皆さんへ。

職業講話でお会いした皆さん、その後お元気で過ごされていますか。あの日は皆さんのおかげで、とても有意義な時間を過ごせました。どうもありがとう。そしてご丁寧に感想の手紙も書いてくださり、すごく感激しました。一枚一枚、ゆっくり丁寧に読ませていただきました。本当にありがとう。返事の手紙が少し遅くなってしまってごめんなさい。

僕にとって、あの時間を皆さんと共有できた体験は、とても有り難いものでした。終わってから “もっとあんな事を伝えれば良かった”とか “あの話をしたらもっと皆さんが面白かったのかも”とか、色々と出てきました。でもその事を後悔はしていません。伝えきれない想いが残っているからこそ、今後の関係も続くし発展するだろうと信じているからです。

この手紙では、たくさんある “あの時に伝えきれなかったこと”の中から2つ “どうしても伝えておきたいこと”を書きたいと思います。


まずひとつめ。
皆さん、どうかこの先の人生を通して自身の人格を磨いていってください。これは理屈では無く、人間の本能に組み込まれているもので、もちろん皆さんの中にも存在するものです。これから一生をかけて素敵な人になっていってください。それを目指していく中で、皆さんが将来やる仕事、職業がきっと大きな助けになってくれるでしょう。
世の中に “素敵な仕事、職業”があるのではありません。職業に貴賤はありません。真実は逆です。 “素敵な人、魅力的な人間”がやるから、その人がやる仕事がカッコ良く見えるのです。皆さんはどうか、その “素敵な人”になってください。では、どうすればそうなれるのか。実はその答えはありません。僕も教えて欲しいくらいです。だからこの先、一緒に探していきましょう。皆さんの周りに居る人、起こる出来事、全てにヒントがあります。真似したり、感じたり、自分でも色々なことを試してみてください。それらは全て皆さんの自由です。そして将来、皆さんが思う素敵な人に近づいて来た時、あなたはきっとどんな職業からでも学べる、喜びを感じられる人になっていることでしょう。

そして二つめ。
この先、どんなに時間が経っても “今現在の皆さん自身”を覚えている人になって欲しいと思います。
皆さんはこれまでの人生において、大切な基本は、もうほぼ全て身に付けています。皆さんに足りていないのは、実際の経験と体験だけです。
これからの人生で、数多くの体験と経験をしていく中で、必ず失敗やうまくいかない事に出会います。これは必ずです。皆さんの周りに居る全ての大人全員、どこかで失敗しています。断言できます。特に何かに向かって挑戦するような人生を歩もうとすれば、よけいに失敗の数も増え、それと向き合う事になるでしょう。皆さんがこの先、失敗したりうまくいかない経験をした時 “今現在の皆さんが持っている基本”まで変えて、捨ててしまわないでください。苦しい経験をした時は、12,3歳の現在の自分を思い出してみてください。きっとそこに、その時のヒントや助けが隠されているでしょう。

さて、伝えたい事を書いていると、思いのほか長くなりました。ここまで皆さんに向かって書いてきた言葉、それは僕自身に向けた言葉でもあります。あの職業講話の時、一緒に時間を過ごしてくれた皆さんは “12,3歳の頃の僕そのもの”でした。どうかこの先も元気で、生き生きと人生を歩んでいってください。期待しています。

また是非会いましょう。ありがとう。

松村 賢一

#40歳から中学生へ #13歳の君への手紙 #伝えたいこと

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