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Notes of a certain nun.〈とある修道女の手記p.1〉

12-22-2022 (Rain)

クリスマスイヴを目前に控え、
掃除をしようと修道院へ向かった。

今日はひどい雷雨だったので祈る人は
殆ど居ないだろうと思ったが、
雨に濡れた男性が床に座りながら丸まっていた。

とてもじゃないけれど祈っているようには見えず
声を掛けたが石のように彼は動かなかった。

蝋燭に火を灯し、一先ず毛布を持ってきた時
彼は「神はこの世に居るか」と喉を殺すように、
そして悲しさと憎悪が入り混じるように囁いた

街で果物屋を営む男性が偶然修道院を訪れたので
青年を私の屋敷へ運んでもらった。

心做しか子供達は少し不安そうだったが
すぐに青年の元へ駆け寄り、
ひとりは青年の頭をタオルで
くしゃくしゃと乾かしてあげたり
もうひとりは暖炉に火をつけたり
もうひとりは暖かいココアを淹れてあげたり
もうひとりは大切なテディベアを寄り添わせてあげたり。

Milleは少し男性を怖がるところがあるので
Fruitがココアを淹れるのを手伝ってあげた後
遠くから青年を見つめて「怖い人?」と言った。

たとえこの青年が怖い人だったとしても、
修道院へ訪れたという事はきっと
助けが必要だったに違いない。

神が居るかと問いただされて以降
彼は一度も声を発さない。
まるで子供達にお世話をされる
大きな人形のように彼は動かない。

指の節々にできた赤い傷に薬を塗って、
大きな手に包帯を巻いて、
そのまま青年は暖炉の前で眠ってしまった。

彼に今必要なのは神の救いではなく
時間と温もりかもしれない。

果物屋の方から頂いた苺をジャムにして
明日の朝食に出そう。

God bless.

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