8月10日

常に逃避から始まった。水上公園へと掛かる歩道橋がここから遠い世界への架け橋に見えた。お前邪魔、と後ろから突き飛ばされた僕はその翌週から陸上教室をサボり、上尾市市内を自転車で駆けていた。
姉が通っているから、という理由で陸上教室へ通うことになった。既にその時には、言われたらそうするのが当たり前だった。
陸上教室に友人はいなかった。正確にいえば幼馴染が2人いた。しかし話すことはほとんどなかった。冬になった。長袖、長ズボンのジャージへ替える時期。僕が着ていたジャージは姉のお下がりだった。姉は小学生にしては高く、一方で前から二、三番目の身長だった私が着るとなると、サイズに無理があった。新しいものが欲しい。そう言っても「金がない」と突き返されるだけだった。腕や腰の部分を何度も折り返し、どうにかして着て、教室へ向かった。

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