3月1日
朝、洗濯物を干した後、5日の映像学会の学生発表に使うiPadのアダプターを先生から借りるため大学へ。
ゼミ室に置いてあると言われていたので部屋に入ると後輩がいた。そういえば大学に来るときがあれば話がしたいと言われたのだった。相談事があるみたい。悩みが溜まって表情が暗い。これまで2度、授業の後の流れで話を聞く機会があり、そのときも暗い表情ではあったが、今回は更に何かが違っていた。
話を聞く。なかなか複雑。そして自分も経験してきた悩みだった。こういうときに必要なのはアドバイスではない、わけ分からんはじめての楽しさを知ること。
この日は天気が良くてどこかで写真を撮ろうとフィルムカメラを持参していた。僕は自然にカメラを構えていた。
撮影されるのが初めてだったのか最初は困惑した様子。どんな表情したら良いですかと聞いてくる。そんなの知らんよ、君はどうしたい?さあ行くぞと彼の動きを煽る。彼は考えた。そして腕を組み胸を張りカメラをみた。それは彼が好きなボートレーサーのポーズなのだそう。猫背で縮こまり硬い表情だった彼の身体に動きが現れた。そして更には外で撮りませんか、と提案が入る。
彼は最近テニスサークルを立ち上げた。一人でコートの整備を行い備品なども揃えた。そのテニスコートで写真を撮って欲しいのだそう。よしやろうとすぐさま僕らは外へ。テニスコートは来たもののラケットなどはない。彼は共学科から鍵借りて部室開けましょうか、と言った。ただ僕は今撮りたいかった。ここで良い流れを止めたくない。いや、そのままやろう。そのまま、今ここが試合会場。試合始まったぞ、おい玉きてるぞ!彼は僕の言葉に呼応しエアテニスをし始めた。
撮影しながらカメラのレンズを通して、僕はそこにテニスラケットを見た。正確に言うと、彼のテニスサークル立ち上げの熱意をみたというか、エアテニスだからラケットも何も持ってないのに、上下左右、試合さながらに動く動く。訳のわからぬ時間と空間が立ち上がった。
なんでか分からないんですどこんなにも楽しかったのは初めてです、と彼は言った。
僕はカメラを置き、彼とエアテニスの試合を行った。
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