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素直に生きることがどれほど難しく怖いことか、多分僕らにしか分からない。自分に素直に生きている人は、楽しく生きている。生きていて、誰かを見捨てている。ちゃんと切り捨てている。無自覚かもしれない。それで自分の楽しさに熱中し、僕らのことは忘れているんだ。
残酷だ。この世の中は本当に残酷だ。その残酷さを僕らは知っている。それが残酷でないことも分かっている。普通だってことも分かっている。でもやっぱり、残酷だ。そう感じている、人達がいる。そう感じている人達の存在を僕らは知っている。誰も分かるはずもなく、誰も理解してくれないであろう感覚を僕らは知っている。
僕も楽しく生きている人たちの中に入りたい。だけど、自覚的でありたい。誰かを忘れていることに自覚的でありたい。だからと言って何かをすることはないけど、自覚的でいきたい。僕はほら、そこから見える景色を知っている。鬱である。それが鬱なんだと思う。
子供達はすごい。
近くの公園で花火をした帰り道、子供達の一人が古いアパートの一室を指差して
「あ、今日はひかりが灯ってる」
といった。
知り合いかと思い尋ねると
「うん、知ってる。あの部屋には5回自殺未遂をしたおっちゃんが住んでる。今日は電気ついてるから生きてるんだな」
と笑いながら、さも日常かのように、何事もなく歩いていた。
鬱の風が吹いた。僕は身体が硬直しかけたが彼らの後を歩いていたから、着いていくことだけを意識してどうにか家に着いた。
彼らは子供ながらに現実を知っている。僕よりも豊かに残酷に、身の回りの人と繋がっている。僕はまた彼らから学ぶ。

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